付与ギルドで1

「ええ!待って、待ってください」

「ギルドの登録は終わったのだろう。次はこちらだ。ささ、ランス様こちらでございます」


 付与師ギルドの人は追いすがろうとする本部長を制して、外に連れて行かれる。馬車に乗せられると、すぐに付与師ギルドへ出発した。


「まだ、魔道具師と付与師の違いについて理解していないのですが、どう違うのですか?」

「そうですね、まずは魔道具というのは魔石などから魔力をとることが多く、魔法付与したモノは人の魔力、生き物の魔力を扱うことが多いです。当然、魔石もですが。付与する物は剣などの武器、鎧や盾などの防具です。もっともわかりやすい違いは、表面に魔方陣が出ているか、道具に埋め込むように書くかの違いです。剣の表面ではなく、内部に書き込むのです。表面に書きますと、戦いの際に削れてしまいますから、それを防ぐ意味もあります。ですから武器防具への付与が主な仕事になります」

「魔方陣は根本的には共通ということですか?同じ魔方陣だと表面に書くか、内部に転写するかの違いと理解してよろしいですか?」

「いえ、付与専用の魔方陣が存在します。これは武器や防具に戦闘を助けるための魔方陣になっています」


 聞きたいことがずれている?


「同じ魔方陣を使えば同じ効果になりますよね?」

「そんなことはありません、魔道具は貴族の道楽として、付与師は戦士の命を預かる武器防具を更に高めるための仕事をしているのです。我らはしっかりとそのことを心に刻んで、魂を込めて仕事をしているのです」


 同じではないと?同じ物を表面に書くか、内部に転写しているだけなんだが。ペンダントを作ったときは、どっちがいいかなぐらいでしか作っていない。


「どんな付与があるんですか?」

「あるのは、身体強化、筋力強化、魔力強化などの攻撃力を上げることが出来る付与と属性の追加や耐性などが多いです」

「それは便利そうです」

「そうなのです。ですから武器や防具に付与を行う騎士様や冒険者が、多く利用されているのです」


 自分のために覚えよう。自分で鍛えてもいいけど、補助も欲しいところ。あと少しで負けるようなことがあってはいけない。


「ランス様こちらでございます。準備は整っております」


 案内されるままに、階段を上って一室に案内される。もう1人、男の人がいて、目を輝かせてこちらを見ている。


「こちらへおかけくださいランス様。S級のギルドカードを」

「なんでS級なんですか?」

「S級になったのは魔石に直接魔法転写を行っていたからです。この技術は古代の遺物には多用されていましたが、現在出来るのはランス様ただお1人。総本部に問い合わせても、初めてだという回答が来ました。総本部長権限におきまして、ランス様をS級として登録することにいたしました。この技術を持って広くギルド員にも出来るよう、公開をしていただけますと」

「やり方?魔法転写は出来るんですよね?」


 ギルド員は全員出来るそうだ。それなら別に説明しなくてもわかるんじゃないのかな?


「魔石に魔力の層があるんだけど、わかる人います?」

「いえ、そのようなことは聞いたことがありません」

「魔力の層があります。その間に魔力のマトリックス部分があります。それで魔力層に転写せず、マトリックス部分に転写するのです。それだけです。魔法転写が出来れば出来ることです。公開してもらっていいですよ」

「層?マトリックス?」

「魔法転写は出来るんですから、あとはその層がわかるようになればいい話。マトリックス部分に転写も、転写の深度を変えられれば問題なく出来るはずです」


 その間にもギルドカードが用意されて、そのまま登録を行っている。


「この魔石には層があるのですか?これなどは」


 机に置かれた魔石を見るのに、層にはなっていなかった。


「ないですね。魔力が高くない魔物の魔石では、層になっていることが珍しいのです。最低C級以上はないと。ただ、C級は当たり外れがあります。B級以上なら確実に層になっているので、自分で使うのならB級以上です。このペンダントもB級の魔物の魔石です」

「B級以上」


 そういいながら興味津々といった様子だった。


「魔力の層というのはどうやって見いだしたのですか?」

「魔力を操るのがうまくなれば自然とわかります。自分でうまくならないと、層の見分けがついても深度がわかりません」

「申し訳ないのですが、深度というのはどういうことでしょうか?」

「魔法転写をする深さですよ。転写で書き込む深さを変えるでしょう?厚みがあるんだから、当たり前ですよ」


 なんか反応がおかしい。普通のことだと思うんだけど。

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読んでくれてありがとうございます。

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