魔法具ギルドで2
「喜びなさい、S級魔法具師の誕生よ。ギルドは閉めて、手伝って頂戴」
「は、はい」
昨日のとつぶやきながら、閉店作業をしている。入り口に鍵をかけて、本部長室に案内される。2階に上げられて、ソファーに座らされると総本部に通信している。その間にギルド長も呼ばれ、登録する機械やS級のギルドカードが準備される。
「総本部の確認が取れるまでは待ってて」
「お湯はございますでしょうか?」
「出すよシャロン」
ティーセットを取り出すので、お湯を宙に浮かべて待つ。ティーポットにお湯を入れると後は任せた。出てきた紅茶を飲みながら、明日からこの国の歴史を勉強するのかと、気が重たくなる。
「そうだ、ギルド長はグリゴリイ研究会で勉強していたね。ランス様は大賢者グリゴリイの知識を修めているそうだから、聞きたいことがあるなら今のうちよ」
「何ですと!ランス様、グリゴリイの素晴らしい理論をご存知ですか。古代語の訳がおぼつかないのですが、どうすればわかるようになるでしょうか?」
「古代語の訳は別の人物、ワシリイの古代語辞書か古代語解説の方がわかるでしょう。グリゴリイの魔法理論は、古代語を理解している前提で書かれているので、基本の部分を理解するところから。もしくは魔方陣を翻訳しながら、マネしてみるといいでしょう。魔方陣の見本を正しく転写すればいいだけなので。正しく書けていれば、そのまま使えます。新しく構築するなら、古代語の理解は必要ですね」
「マネしているのですが、うまくいないのです」
「どれがうまくいかないのです?」
焦るように小太りのギルド長は出て行くと、すぐに本を持って帰ってきた。机に広げるとこの魔方陣ですと指をさす。
「古代語の写本は間違いが多いのです。ですので、ワシリイの古代語辞書を見ながら合っている字を探すと、正しい魔方陣がわかることでしょう。こことここ、それとここです」
魔方陣を指さしながら間違った字を指摘する。紙とペンをもらって、正しい魔方陣を描いて渡す。写本も大変な作業である。普通に写すにしてもたまに間違えるし、魔方陣を理解している人がやっても、古代語を正しく理解していない人が写す。間違っていても気がつかない。写本する人にそれだけの知識があるのなら、他のことをして生活していると思う。
「これを正確に写せば古代魔法の一端が、再現出来るのですね」
「そうですね。一端にはなるでしょう。ええと水を出す魔方陣だったはずですが。今書いたのは手本として、とっておく方が良いですよ」
「そうですな。正確なお手本は大切にしなければ」
本部長が誰かと話している。終わるとこちらにやって来て、S級のカードをセットしはじめる。
「正式にS級魔法具師しての確認が取れましたので、ギルドカードをお作りいたします。それでははじめましょう」
受け取って黒っぽいカードが増える。増えたカードを空間倉庫に押し込む。提げているマジックバッグの中身もついでに移し替える。下に降りるとギルドの入会特典とか、優遇されることを懇切丁寧に教えてもらった。この受付さん、優秀だな。さっきからドアが叩かれてうるさかった。本部長は声がするのに、開けなかった。
「以上で説明を終わります。わからないことがあれば、都度都度お聞きください」
「液とかってギルドの独自配合?」
「いえ、配合は公開されています。使い分けごとに主に皮や繊維物、陶器類、金属類と3種類あります」
「昨日買ったのは皮用ってこと?」
「そうなります」
他の用途の液も購入して、これでいいかな。
「それじゃあこれからよろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします。もしも他の魔道具を作れるようでしたら、教えてください」
「これも使えるから。魔方陣も知ってるけど、今度気が向いたらね」
扉を開けて別れ際、指先を出して氷を作る。
「ええ!待って、待ってください」
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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