マジックバッグの登録1

「それでメイドのバッグはどうするんだい?」

「所有はランス様で使用を私に出来ますでしょうか?」

「ランスも使えるけど、それは了承の上だね?」

「当然です。ランス様のものですので」


 わかったと登録のために手を出せと言われるので、登録を済ませる。次にシャロンが手をのせて使用者の登録をした。別にシャロンのものでも良かったんだけど。


「それでだ。どのくらい入るんだい?」

「わからない。こっちのリュック型なら貸していいから、俺の生産品を運ぶので実験してみたら?」

「それなら、借りるのもありだね。飛竜で運べるなら便利がいい。それじゃあ、契約書を作ろう。それから借りている間は、輸送の経費関係はバッグで運んだ量で変わるようにしておくよ」

「わかんないけど、お任せする」


 リクッターさんが契約書の作成に机に戻っていく。リュック型を渡して管理責任者としてシーラさんが登録される。大店の商会では稀に使うところもあるそうなので。会頭が所有者で、店長が管理責任者、運ぶ人が使用者になり、管理責任者が使用者を決められるようにしているそうだ。


「どれだけの容量があるのか楽しみにしておくよ」

「そうだね。大きさがわかったら教えて」

「わかった。しかし、大陸でも数人しかいない時空間魔法まで使えるとはね。本当に驚かされることばかりだよ。クリスタル以来の衝撃を受けて、心臓が止まるかと思ったよ」


 契約書を素早く作り上げたリクッターさんが、机の上に契約書を置いて目を通す。荷役に使うのと最優先で自分の作った生産物。余裕があるときは、他のものを運ぶこともあるらしい。そのとき輸送費は別途支給。戦争地域への輸送はなし。商業ギルドが借り受けると。もしかしたら、管理責任者の変更を行うかもしれない。返却は双方合意か、所有者の申し出により、速やかに返却する。内容はどちらかというとこっちに有利だったのでサインをして返す。


「そんなに驚くこと?作り方や作っているところも見ているから、実際に作る方法を真似したりしたから出来ると思ったけど」

「そういうことじゃないんだよ。いいかい、ランス。まず、時空間魔法の使い手が少ない。このことから国が引き入れにかかるだろうね。幸いなことに、このラント王国ではないはずだから安心しな。ただし、他の国からの接触はあるかも知れない。そのことは頭に入れておくんだよ。強引な手を使ってくるなら、撃退しておやり。祝福前のようにギルドから依頼を回してもらうように。これからもそれを徹底するんだ。貴族からの依頼は特にね」

「個人的なのは受けていいのかな?」

「親しい仲でもなるべくギルドへ回すように。裏では国家クラスの依頼かもしれないってことを常に考えておくんだよ。それほどのことが出来るという自覚を持っておきな。メイドの娘、アンタがしっかり進言するんだよ。ランスの感覚はおかしいからね。ランスなら国を滅ぼすことも出来るんだから、問題にならないようにおかしいって言うんだよ」


 脅しをかけられているシャロンは何度も頷いている。血の気が引いているように見える。


「はあ、入学試験前なんだ。大人しく勉強をしておきな。今日は帰れないと思いな」

「昼からは勉強しないと。帰ってなかったらベイジーンが怒るんじゃ?」

「それなら、今の状況を知らせておくから明日から勉強を頑張りな」

「じゃあそうする」


 揃って案内された2人の男女。どっちも神経質そうな顔をして入ってきた。対面のソファーに並んで座って、シーラさんは机の前にある1人がけのソファーに座る。リクッターさんはシーラさんの後ろに立っている。


「シーラ殿、うちのギルド員が見つかったと伺ったのだが」

「私のところにもギルド員が見つかったと」


 互いが顔を見合わせる。いがみ合うとすぐに顔を背け合う。仲が悪そうだ。


「まず、そのマジックバッグとペンダントをそこの少年、ランスが昨日作ったそうだ。職が出ているかどうかはわからないが、所属させるに値する商品になっている。確認してもらえないかい?」

「ではペンダントを」

「まさか、このバッグ」


 男性がペンダント。女性がバッグを手に取って確認をしている。ペンダントの方はルーペを取り出して、じっくりと中を確認。バッグの方は外を舐めるように見てから、中は登録を済ませているので黒い空間を確認して手が弾かれていた。


「申し訳ないのですが、中に入れている物を見せてもらえないでしょうか?」


 渡されたバッグから、何を思ったのかシャロンは自身のカバンを取り出した。そしてまた入れた。


「これでよろしいでしょうか?」

「ええ。マジックバッグであることは確認出来ました。では、内部の大きさを測りたいと思いますので、1度全ての荷物を出していただき、ものを入れていきましょう」

「これはメイドのためのバッグ。測る必要はありません」

「しかし、それでは値段のつけようが。売るのでしょう?」

「働きやすいように作ったまでです。他の方に売る気はないのです」


 絶望したような、この世の終わりみたいな顔を向けられても。シーラさんが間に入ってくる。

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読んでくれてありがとうございます。

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