祝福を受ける

 村と王都、領主街を行き来しながらポーションの受注分を必死になって終わらせた。薬師ギルドに材料を集めてもらって、ひたすらに作っていった。


「神父さんが今日来たから、明日は祝福を受けられる。どんな職になるのか楽しみね、ランス」

「僕は農家じゃないかな」

「ランス、僕じゃなくて俺っていわないと、見た目が可愛いんだから舐められるのよ」

「俺は農家かな」


 エイシェトが家に遊びに来て、明日祝福があると教えてくれる。あともっと男の子っぽいしゃべり方にしろって。


「私も魔法とか使ってみたい」

「生活魔法もあるよ」

「そういうんじゃなくて、詠唱の魔法に憧れるのよ」

「そうなんだ。冒険者は大変だと思うけど。明日の祝福次第だね」


 祝福の職についてこれになったらこうとか、そういうたわいない話をして帰って行った。明日はとうとう祝福を受ける。


 日が傾いて夕暮れ時。ズワルトが姿を現わす。


「ランス、封印を解くぞ。ついて来るのじゃ」

「わかった」


 ズワルト一緒に家を出て、山の方向へ進む。途中でフウイがやって来たので、裸馬のまま乗って進んでいく。骨が当たると痛いけど、乗れるかな。山を越えて、そのまま下っていくと草原が広がっていた。木とか生えてないね。


「フウイ、少し下がっておれ」


 フウイから降りると窪地の中心まで案内される。


「それでは封印を解除する。心を強く持つのじゃ」

「封印解くのに心構えなんていらないよ」

「それならそれで良い、はじめるぞ」


 体の中から解き放たれるように、高く高く魔方陣が押し上がるように積み上がる。最初の封印の記憶よりも多い気がすると、魔方陣を見上げながら思った。


「封印解除」


 ズワルトが言葉を発すると最上段から魔方陣が割れていき、ある瞬間にグリじいの最後の姿を思い出す。あ、え?シャ、ローザ。なんで、こんなこと。涙が自然と溢れていた。


 壊れていく魔方陣を作る魔力が残滓としてキラキラと振ってくる。割れていくにつれて悲しみの感情、魔力の波はスキルで押さえ込まれていく。涙はすぐに止まって、自分の中で消化は出来ていないけど、受け入れることが出来ている。ゆっくりと息を吸い込んで、涙を拭いて戻る。


「平気か?」

「スキルがあるから。納得は出来てないけど、普通に過ごす分には問題ない。魔力暴走や感情の爆発が起こることはない」

「そうか。だが、気持ちを解放するのもまた、必要なこと。ため込む必要はないぞ」

「そう、だね」


 帰ってもいつも通りにしよう。


 次の日、祝福を受けるために村に行く。今日祝福を受けるのは4人。祝福の言葉を神父さんからもらって、水晶に触って職が出れば終わり。


「我らの創造したる神々よ、今日この子らが神々の御名において祝福を賜りたく申し上げます。この子らが健やかに育ち、神々に成人となる祝福を頂くことここになりました。この子らの将来が健やかでありますよう、神々の祝福を授けていただきますよう、お願い申し上げます」


 不思議な光が天から降ってきて、俺の光どうなるのかなと思っていると、ちょっと遅れて光が当たった。危ない、危ない。妖精たちがいい仕事をしてくれた。


 1人1人水晶に触って、エイシェトは料理人。しゃべる方の男は農家。


「隠蔽」


 聞こえないように言葉にして、水晶に触れると農家と表示される。


「この子は農家である」


 そう宣言されて胸をなで下ろす。もう1人のしゃべってやらない男が水晶へ。


「この子は剣士である」


 村守として村に残るのか、冒険者としてやっていくのかはわからない。その辺りは本人次第。


「やったぜー!」


 本人は喜んでいるので、よかったんじゃないかな。このあとは村で祝福を受けて子達を祝う。


「ランス、どこに行くの?」

「祝福をもらったから、助けてくれた人のところへ行ってくる」

「お祝いなんだから、終わってから行ってもいいでしょうに」

「ごめん、早く行きたいんだ」


 フウイの名を呼ぶと入り口まで飛んできて、飛び乗ると空へと駆け上がる。妖精に案内をお願いして、聖なる森へと空を駆けていく。高く高く大空を雲の中を突き進む。



 数日が経って、聖なる森の上空に着いた。下から懐かしい気配がした。


「クーシー久しぶり」

「ワォーン」


 森の中にいるのはわかるんだけど、緑色が保護色になって目では追いづらい。高度を下げていると色とりどりの天馬の集団がやってくるのが見えた。久しぶりに会う面々である。

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読んでくれてありがとうございます。

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