マクガヴァンと練習と学園のちょっとした説明
「はっはっはっ、父上が耄碌したのかと思ったが違ったようだ」
軍団長は豪快に笑い出した。
「見ていてもわからんかったわい。もっと近くで見るには、1人借りるしかないのう。誰か貸してくれ」
「私が行こう、ブレア頼んだ」
エロイーズのお父さんはため息をつきながら、隊列の編成を指示し始めた。
「これは面白い技術だ。途中、剣すら振らずに消していた。あれは何だ?」
「単純に生活魔法だよ?」
「父上本当ですか?」
「ランスは上位属性も使えるぞ。氷を使っているのを見た。確かに生活魔法じゃった。詠唱しておらん」
軍団長はおでこに手を当てると、天を仰いだ。
「ブレアは知っておる」
「グレンフェル家に滞在していたのは知っていますが、その時に知ったのですか」
「そうじゃ。ワシはランスと良好な関係を保ちたいと、国王には進言しておった。決して敵にならぬようにと」
「何かあれば国にこの力が向くということですね?」
「そうじゃ。宰相殿と、ことあるごとにチクチクといっておったんじゃが、とんだ愚王じゃ。それで相談役からも降りたしのう」
なんか難しい話をしているので、木刀を振って体を慣らす。
「父上!?」
「S級冒険者を敵に回す行為じゃ、国が滅んでもおかしくない」
剣が振れるっていいよね。楽しくなってきた。素早く剣を振り下ろしては上げる。
「それはもう後の祭りじゃ。今は個人の繋がりを大切にせねばな。レンダン、技を撃ってどうやるか学ばなければのう」
レンダンさんは対するように少し離れて立つ。そこからソードスラッシュを撃って、何度も消していく。意識して出来たことじゃないから、説明が難しい。魔力じゃない気もする。
「何度見てもわからんのう」
「自分で見たら何かわかるかもしれないけどね。出来る人がいない」
「気合いというヤツなんじゃろうか?」
「そうかもしれないね。あとは受けながら、ポーションたくさん用意してやるしかない」
練習あるのみ。おじいちゃんとなんだかんだいったけど、今日中にはどうにもならなかった。残念ながら夕暮れになって、終わりになった。何か掴んでくれるといいけど。
「残念じゃ」
「まあ、しかたないよね。やれる人が他にいないんだから」
「これを指導出来れば、だいぶ役に立つと思たのに」
「試してみるしかないね」
3人で思いつくことを試していったけど、どれもうまくいかなかった。
公爵家に着くとベイジーンが待っていた。
「ランス、どうだった」
「ダメだった。おじいちゃんは出来るようにならなかった。何が悪いんだろう?」
「何だろうね?それよりもう少しいるんだよね?」
「用事は終わったんだよね」
居心地は悪くないけど、いつまでもいる気はない。
「実はコールス団長がぜひ魔法師団にも来て欲しいと。今日の訓練を見ていたんだって」
「剣の練習に行って、何で魔法?威力の加減しなくていいならいいよ」
「それって、うちに来たときのよりもすごいの?」
「ビルヴィス公爵の領都で見せたのは、大きくするようにしてやっただけ。あれが最大じゃないけど、魔力を絞るのも日頃の鍛錬のおかげだね」
魔法師団に行く理由もない。
「それに今回はおじいちゃん個人に、練習のために行ったんだよ。用意された練習場所へ。おじいちゃんと練習ぐらいはと思っただけなのに?その魔法師団の誰かと練習したことないよ」
「個人的な、そういうことか。それで軍と戦ったんだ」
「戦う?ソードスラッシュの中を進むのは、お手本を見せるためだよ。そうしないと剣術を極めた人と練習出来ないよって。戦ってすらいない。兵士に反撃とかしてないし、思ったよりも剣振りが間に合わなくて魔法で相殺はしただけ」
「そんな器用なことするの?」
目の前に大きな水の塊を出し、何十個にわける。
「生活魔法だから自由自在に操れないと」
「そこまで行くと攻撃魔法と変わりないね」
「便利だよ、氷の塊出せるから、お金稼ぎ出来るかも。それよりも早く祝福に来ないかな」
「今年中に神父が祝福に来てくれるはずだよ。時期が重なるなら学園の試験が終わってから王都で受けられるよ?」
「村に来る神父が祝福をしてくれるのを待つよ。試験前になるかも」
「それなら、試験が終わったら何の職をもらったか教えてよ」
「えっと、いいけど」
最初に公開する職業は決まっている。魔法使いとか剣士とか戦士系とか候補が挙がっていた。それを全部なくして農家にすることになった。1番に教会の目を欺くことを重視した。職はあとから発生させることができ、祝福で与えられた職とは違うので、たゆまぬ努力と才能が必要とされる。あとから職を増やせるなら、最初は教会を欺くことの出来る職業。数が多く、最も広く多くいる農家という職業に。薬師は少なめ。農家とその次が料理人と続く。地方の村だと食に関する者がとにかく多い。都会はわからないけどね。
魔法の話をしていたら、公爵様が帰ってきた。学園から禁書庫への通いを認める方向で進めてもらえるらしい。よかった。
「ただし、教養の歴史と貴族の基礎素養には出るように」
「歴史と基礎素養。僕って何科になるんですか?魔法科が希望なんです」
「騎士科、魔法科、商業科、貴族科が我が国の学園の通うコースだ。祝福前に受けていれば、祝福後にコースを選べる。どれにも当てはまらない場合は、自由に選んでもらって構わない。貴族の嫡子は強制的に貴族科に入って、空いた授業時間に他の興味のある分野を獲ったり、当然その逆も可能だ」
仕組みを聞くと祝福に合わせて、コースが変えられるなら便利だよね。授業自体も自由に選べるみたいだ。それならやりやすいかな。
「科によって必須の授業があるから、そこまで選べる授業はないはずだよ」
そうなんだ。あんまり選べないんだ。
「学年が上がると選べるのも多くなるよ」
「そうなんだ。生産の授業はないんだよね?」
「うちには少ないね。でも学友が出来るから、長く付き合うことになるよ」
「同じぐらいの実力の学友がいたらね」
そのあとも学園についての話をしながら、寮のことなどを説明してもらった。興味を引く物がなかったので、次の日には王都の公爵家から村に帰った。ちゃんとベイジーンには言ってからね。
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読んでくれてありがとうございます。
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