学園見学5
「同じ年代の人達と何かするのはいいことだよ?」
「じいちゃん達と議論していた方がためになる。いろんなことがわかる」
「でも、頑張って追いついてくるかもしれないよ?」
「追いついてくれるのかな?どれだけ強いのかわからないけど、この国の1番上は越えて欲しいね」
周囲の空気が変わる。ベンは睨らんでくる。
「ランス、さっきから黙って聞いていれば、祝福前のくせに言いたい放題じゃねえか」
「言いたい放題?頑張って追いついてこられるなら、そのくらいは必要なの。それをベイジーンに言っているだけだよ」
「おまえ、ベイジーンがどこの嫡男か知って、その口の利き方をしているんだろうな?」
「知ってるよ。ビルヴィス公爵当主様と宰相様に学園に通うよう望まれてここにいるんだけど?本当は通わずにフィーレ王国で学びたいんだ」
「黙るんだ、ベン」
ベイジーンがベンを制すると、歯を食いしばりながら下がる。
「戦える相手が欲しいよ。得意な分野でいいからさ」
「魔法なら、宮廷魔道士がいるし、研究もしているはずだから。その辺りは父上や宰相様が手配してくれるんじゃないのかな?」
「グリゴリイの魔法理論は完全理解の上で、先を研究しているってことでいいんだよね?」
「グリゴリイの魔法理論を完全に理解している人がいないから、ランスを学園に迎えたいんだ」
先生が前に出てきて並ぶ。
「ベイジーン君、今の話は聞き流せないのだが。本当なのか?ランス君」
「グリゴリイの魔法理論はまだ未完成だけど。理解しているから、それを利用した物を作るためにも、フィーレ王国で学ぶんだよ」
「魔法は詠唱を持って神の力で事象化すると言うが、グリゴリイの魔法理論では、詠唱は魔力の通り道と変換を作っていると言うが本当なのか?」
興奮したようにアイザック先生はしゃべる。
「そう。だから生活魔法と呼ばれる、誰でも使える魔法で使える人と使えない人が出る。そして、使える人は無意識にやっている。魔法の詠唱を本能的に。詠唱なしで。魔法理論を理解していれば、詠唱では出来ないことも出来る」
氷の塊を手のひらの上に出す。
「詠唱ではしばらくすると消えるように作られている。なら、消えないように作ることも出来る」
周囲に氷の塊を出したままにしておく。
「それは生活魔法なのか?」
「これがグリゴリイの魔法理論の実践。理解の先にある1つ。無詠唱。自在に形を変えられる」
追加で氷の形を変えて出す。剣だったりフウイっぽい形だったり、いろいろある。
「詠唱ではできないことだよ。正しく詠唱を理解しているのであれば、詠唱なしで魔法を起こす魔物がなぜ魔法を使うことに説明もつく。詠唱よりも速く、魔法を使うのならそれを本能的に行っている」
「魔物が魔法を使うのは神から言葉を奪われて、言葉を知らないから詠唱出来ないと信じられているんだが、そこはどうなんだ?」
「魔獣は自分たちの言葉を持っているはずだよ。それに高位の魔獣は人の言葉がわかるし、話すことも出来る。人の言葉を話す方が難しいみたい」
「自分たちの言葉か、魔獣が独自の言葉を持っているとは」
「自分のしゃべりやすいように言葉を持っている。ファイアドラゴンもギャアギャア自分たちでしゃべっているみたい。族長とかの強いのは人の言葉をしゃべれるからね」
理論というか神の力でどうにか説明しようとしていて、教会とかが触れ回っていそう。それでいいのかな?スキルは神が与えるモノだけど、魔法は生まれるモノに等しく与えられる。使えないはずはないんだけど。
「それで、生活魔法を魔獣達は使っているのだろうか?」
「そうだよ、誰でも使える。当然、高位の属性もね」
「それが氷ということか。消えるまで時間を長くしているようだ」
「そうでしょ。だから、使いやすい。使えるなら」
質問攻めに遭いながら学園に戻っていった。毛皮を証拠に持って帰ったので、森に軍が出向いて山狩りを行うそうだ。
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読んでくれてありがとうございます。
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