学園見学4
「ねえ、あれ、もらってもいい?」
「やれるなら、かまわないぜ」
後ろから声をかけるが、期待しない声が返ってくる。冒険者達は振り返ることはない。臨戦態勢。距離はすぐそこ。すぐに戦闘が始まる。
「フウイ、いいよ」
かけ声と共にフウイが嘶く。ウォーウルフの頭がはじけ飛んで、真っ赤なあとになり、バランスを崩した体がもみくちゃになりながら転がる。速度が乗った体はなかなか止まらずに転がった。止まったのを確認して、近づく。
「よくやったね」
頭をよせてくるのでなでて褒める。人のいるところでは、狩りを禁止していたので手は出さないんだけどね。フウイは頭がいい。
「体大きいから、肉がいっぱい取れそうだ。先生、肉は持って帰っていいの?」
「ええ、構いません。その魔馬がやったのですか?」
「そうだよ。人がいると獲物の横取りになるから、いつもはさせないんだけどよさそうだったから。ダメだった?」
「いえ、助かりました。強い魔馬なのですね。乗り手はそれ以上とも聞きますが、どのくらいの実力を持っているのですか?」
どのくらい?
「わからないけど、S級冒険者ぐらい」
「アイザック先生、ランスは祝福後にS級冒険者に更新されます。ワイバーン単騎討伐、ファイアドラゴンに実力を認めさせています」
「もしかして、あのランスなのですか?」
あのってどの?水で血抜きをしつつ、手袋をしてお湯で皮むきをしていく。刃物に脂がつきにくくなるのと、ダニがいても熱でやられるからそうしている。噛まれると熱を出して唸って、ズワルトに治してもらうしかなかった。苦しい思いはしたくない。
解体用のナイフ達はいい仕事をしてくれて、うまく肉を切り分けることが出来た。皮はいらないといったら、学校で引き取るらしい。肉を冷水で冷やしてマジックバッグに入れておく。燻製か、乾燥か。保存方法を考えないと。
「本日の実習は中止です。学校にこのことを報告しなければなりません。戻りましょう」
今日は終わりらしい。何で中止になったのかな?大きいのが取れたから帰るんだろうと思って、来た道を帰っていく。
「何を考えているんだ?」
「肉の保存をどうしようかと思って、燻製か乾燥か、塩漬けが手っ取り早いけど。何がいいか」
「肉の保存方法?ははは、そうだね。大事だ。なんで出たのか考えていたのかと思ったよ」
「いるのはわかってたんだけど、お昼にちょこちょこ近づいていたよね。なんで出たのかとか、魔獣は発生するんだから考えてもしかたない」
「いるのっていつわかっていたの?」
首をかしげながらベイジーンを向く。
「今この辺から、あっちの方向に大きめの魔力があることはわかっていたよ」
斜め後ろを指さす。
「どうして教えてくれなかったんだ?」
「魔物を狩る実習って聞いていた。他のよりも大きい魔力だったけど、フウイが露払いする程度を教える必要なんてあるの?」
「みんなランスとフウイほど、強くないと覚えておいて」
「どのくらいを教えるのか、わからない」
馬車に乗っている生徒達は顔色悪く、疲れた様子だった。何か疲れるようなことがあったのかな?
「ここの森ではそんなに強い魔物は出ないように間引きされている。強いのが出ると困るんだ。戦いや仲間との連携を行うための実習だから、倒すのは弱い魔物がいいんだ」
「そうなんだ。どのくらいが強さがいいのかわからないよ?」
「見学だけのつもりだったから、学園に入って知ってもらえばいいと思っていたんだ」
「やっぱり、学園の入学は断ってフィーレに行った方がいい。学ぶことのない場所で、時間をムダに出来ない」
帰って行く馬車について、ベイジーンと荷台から話をしている。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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