学園見学3

「ベン、こちらからお願いして入ってもらうんだ。口の利き方というなら、王であろうとこのしゃべり方で許されるよ。ランスは」

「何言ってるんだ、ベイジーン。そんな非礼が通ったら国が揺らぐぞ?」

「通る冒険者がいるよね?ランスだよ?天馬を従え、ファイアドラゴンと友になった彼が、国を滅ぼせる力を持っているのに王にへりくだる必要はないだろう」

「ベイジーンはそうかもしれないが、国を治める者への礼を忘れてはならない。誰かに聞かれたら指導されるぞ」

「今だ略奪の代償も払ってないのにか?礼を尽くすなら王族だろう。借りがあるなら王族の方だ。勇者王子の結婚はうまくいかなかったけど」


 何か問題になることを言っているみたい。知らんぷりをして美味しいお弁当を食べていく。


「ランスって、白粉開発者のランスなの?」

「そうだよ。最近は入れ物しか作ってないけど」

「そうなんだ。来年の入学には争奪戦が始まるのね。もう1年遅かったらな」


 ロジーに首をかしげならお弁当を食べていく。


「改めてみるとかわいい〜。ベイジーン、第3王女のブリジット様も参戦されるの?」

「ブリジット様は判断を下さない。王家次第かな?代償として他国に行くのか、降嫁させるかもね」

「ランスに輿入れすれば、お金には困らないよね?」

「そうだね。商売がうまくいっている貴族ぐらいは、すでに稼いでいるしね。先も安泰だ」


 水が飲みたくなって、目の前に水を出すと口に吸い込む。


「ランスは生活魔法がうまいんだよ。どうやったらそんなにうまく出来るようになるのか」

「前も手紙で書いた通り、魔力を感じることが1番の近道だよ。どんな風に魔力を使うのか、変換にはどうしたらいいのか。詠唱の魔法からわかるようになれば、もっとうまくなるよ」

「それが未だにわからない。いろんな魔法使いに聞いてみたけど、詠唱をきちんとすればとか。心を静めてとか。具体的なことは教えてもらえなかった」

「わからないのかもね。もっとこうレベルの高い魔法使いに聞いてみたら?」

「教えてよランス」


 教えるのは構わないんだけど、時間がかかるかもしれないし。


「じゃあ、魔力の塊を当ててみるね」


 簡単なことだけ。純粋な魔力をベイジーンにむかって飛ばす。ワクワクした顔で見られても本人が感じないと意味がない。


「魔力を飛ばしているけど、何か感じる?」

「わからない」

「もうちょっと強くするから手を出して」


 出された手を両手でサンドイッチする。触れてない状態。魔力を徐々に強くしていって、感じるところを探していく。


「何かで押されている?包まれているような」

「それが魔力。体の中に巡っているはずだよ。自分で見つけてみて?」

「ええ?もう少しわかるように。何か感じただけじゃわからない」

「わかったよ」


 手の先を持って魔力を流し込む。


「なに、これ?え?うわ」


 思わず手を引いたベイジーン。


「それが僕の魔力、自分の中に入ってくる異物はわかった?自分の魔力も一緒に感じたはずだよ」

「確かに、自分の中の、こう、魔力と対抗する、何かを感じた」

「対抗した方がベイジーンの魔力だよ」


 ベイジーンが目を閉じて静かに息をする。魔力を感じられたのなら、次は制御だね。強くしたり弱くしたり。まずは魔力を把握出来ることが大切かな?


「これか?」


 独り言のようにつぶやいては魔力に集中している。


 急速に近づいてくる大きめの魔力。ここの人たちで対処出来るのかな?様子見でいいかな。


「何か来るぞ!」


 冒険者は感知持ちらしい。集中していたベイジーンも立ち上がって、冒険者が見つめる先に視線を集中させる。足音がだんだん大きく、重たく感じる音に変わっていく。


「ウォーウルフだ。ガキ共は逃げろ!」

「応援を呼んできてくれ!」


 大人達は一瞬で判断を下して、ウルフと生徒の間に立って進路を邪魔する。フウイよりも大きなウルフがやってくる。


「どのくらい持つか」


 武器を構えながら、少し後ずさりする。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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