エイシェトとパンを作る1

 王都から帰ると雑貨屋によって報告をする。


「帰ってきたよ。調子はどう?」

「薬を飲み始めてからはたまに痛むぐらいさ。寝込むほどにならなくなって、調子がいい」

「ならよかった。効いているなら、同じのをまた作ってくるよ」

「そうだね、もうすぐ切れそうだから早く頼むよ。そうだ。忘れるところだった、手紙だよ」


 手紙を受け取り、明日にでも作ってくると家に帰る。フウイから下りて、荷物を置くとフウイを洗いにかかる。お湯を出してブラシでこする。乾かすのは自分でやるので、本当に洗うだけ。洗ったら裏にある馬房に行く。


 馬房はずっと前に、時間がないのでささっと生活魔法の土で作り、ちゃんとした木で作るのは後回しにしていた。寝わらを替えて、馬房の材料調達。木で作るので乾燥させたり、形を整えたり。屋根はないけど、ある程度の形にはなった。骨格は出来た。


 日が傾いてきたので家へ。マジックバックから薬草を取り出して腰に効く薬を作る。魔草がなくても十分に効いているから、大丈夫。薬の袋に詰め合わせて完成。明日持って行こう。


 用事を済ませると手紙を開ける。ベイジーン・ビルヴィスからの手紙だった。魔法のことが聞きたいと。手紙ではこの魔法はどう思う?みたいなことが書かれていて、紙とペンとインクもない。領主街に行ったときにでも、返事を書くことにする。



 起きて1番に屋根を作るための板を作る。木から板を切り出して、それを屋根の上にのっける。屋根から水が入らないように板を重ねる部分を作って、クギを打っていく。フウイなら自分の魔法で、雨とかどうにかなる気もするけど。あとは補強を入れて完成。


 新しい馬房に寝わらを敷いていると、フウイがやって来て寝転がる。僕とフウイぐらいしかいないので、全部を柵で囲ったりしていない。自由に歩き回って、たまに動物(肉食動物)を持って帰ってくれる。襲われているのかな?返り討ちにしているからいいか。ケガしていたら、本気で山狩りするけど。


 作った薬を雑貨屋に届けて、とりあえず暇になる。


 暇なときは薬草の整理やポーションを作ったりしている。稼ぎもあるので、買えばいいかなって思うけど。注文されているポーションもあるから、領主街の薬師に行こうかな?王都から帰ったばかりだから、もう少しゆっくりしてからにしよう。


 最近はギルドの弁当を買って食べるのが普通になっている。何日かもつし、携帯性もいい。冒険者のための弁当だね。


 食べ終わるとライトで光を作って、生活魔法の本を開く。どうも使われたことのある生活魔法を集めた本だった。ライトの反対、ブラインドという目を見えなくする闇属性もあるようだ。目の前を暗くされたら見えない。


 なんとなく、こう使えば便利だよねって魔法が多い。生活魔法だからみんなは、そう思っている。普通の魔法を再現出来るとは思わない。


 ページをめくりながら面白そうな魔法がないか探していく。自分が使える便利そうに思っている、温水とか温風みたいなのも載っていた。夜の時間がすぎていく。


 朝霧の中、木窓を開けても森が見通せない。視界が効かないのは危険。朝の食事を作り始める。スープに干し肉を加えて、大麦を入れる。あまり作りすぎてもいけないので、食べ始める。


 窓から覗く外はだんだんと霧が晴れてきている。薬草を集めに行こうか。外に出ると霧は晴れていて、森のほうへと進んでいく。何が取れるか楽しみだ。


「ランス!」


 森に分け入るぐらいで呼ばれて振り向くとエイシェトが呼んでいる。


「どうしたの?」

「パンを作るって約束したでしょう?」

「そういえば、いってたね」

「今からどう?私も時間があるから」


 薬草集めは中断してパンを作ろう。うまく作れるようになればいいしね。美味しいパンが作れれば食べるのも楽しいかも。

 窯に火入れをしておいて、あとは机の上に別の板を置いて準備する。


「まずは小麦粉と水とパンの種を用意する。パンの種はうちのをもってきているからそれを使うわ。他の材料も用意して、牛乳はうちの絞りたて」

「牛乳だ」


 牛乳は考えてなかった。売ってるところはなかったからね。小麦粉は地下に行くふりをしてバックから出す。水は生活魔法で出してもいいから、鍋に入れて机に置いておく。塩や蜂蜜などを用意する。


「まずは小麦粉と水7、8割の量用意して、パンの種は全部入れます。それから生地がまとまる程度に練っていく」


 エイシェトの指示にしたがって、同じように練っていく。自分のやり方とは違うね。まとまるように手をベトベトさせながら、途中で手のベトベトになった生地を落としたり。まとまるぐらいにしていく。


「ここからは生地が膨らむからそれを待つ」

「どのくらいになったらいいの?」

「2倍と少しかな。暖かい日だと早く膨らむし、寒いと時間がかかる」

「時間はあんまりきにしなくていいってこと?」

「時間を置きすぎると、逆にダメになっちゃうから見ていたほうがいいわ。暖炉に火を入れているから、早く膨らむはずよ。乾燥しないように湿った布をかけてと」


 同じように湿った布を生地にかける。うまく大きくなれ。


「いっぺんに入れちゃダメなの?」

「入れてもいいけど、こっちの方がふわふわになるのよね。お母さんに教えてもらったときに、作り比べてみたけど。こっちの方が少し手間だけどよかった」

「そうなんだ」


 生地の膨らみ待ち。


「ランスはどこに行ってたの?」

「どこって?王都に行ったり、領主街に行ったりだよ」

「そうなんだ。帰る前はどこにいたの?連絡もなかったし、いきなり帰ってくるからみんな驚いていたよ?」

「死にかけのところを助けてもらって、その人が魔法使いで弟子になっていろいろ教えてもらってた。いろんなことを知っていたから、いろんなことを勉強出来た。だから食べられるだけのお金を稼ぐことが出来てるんだ」


 釜の様子を見に行って、薪を追加しておく。


「死んでいると思ったのに、生きているなら連絡ぐらいして頂戴よ」

「家族がいればそうしていたと思う。村に連絡しておく必要はないでしょう?」

「だけど、生きているなら教えてくれても」

「教えてもらうのに必死だったから、そんな余裕もなかった。もしも、母さんが生きていたなら、すぐに帰っていたけど。動けなくても連絡はしたいと思うだろうしね」


 安否を本当に気にしていたのかは怪しい。それなら戻ったときに会いに来てもおかしくない。僕は村にはいい思い出がないから、近づかないけど。


「それで何を教えてもらったの?」

「魔法のことや薬草、薬。食べられる植物とか。知ってると便利なこととか、そういうこと」

「動物を狩ったりとかはその人に教わったの?」

「違う人だよ。冒険者をしている知り合いがいて、その人が教えてくれた。弓の使い方とか、獲物の探し方。いろいろ」


 興味があるのかわからないけど、薄い茶色の髪にそばかすの入った顔がこちらをじっと見る。


「狩りが出来るならお肉とかあるの?」

「肉は悪くなるから、なるべく早く使うようにしているよ」

「そうなんだ。今度はいつ頃狩りに行く予定?」

「わからない。次は領主街で仕事をするつもり。エイシェトが来なかったら、薬草取りに行こうかと思っていたしね」


 そうなんだと吊り下げている、干された肉に目がいっている。肉が欲しいのかな?


「パンの作り方を教えてくれるから、あの肉持って帰る?」

「いいの?」

「いいよ」


 嬉しそうにしながら窯の様子を確かめたり、パン生地の様子を確かめていた。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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