シャローザ2
「消えちゃった」
「回復魔法はそれほど難しいのだ。スキルの補助なしに行えるほどたやすくはない」
「シャローザ」
シャローザの必要な、必要なことだと思うことを魔力で探っていく。呪いは消えていた。たぶんだけど、元にあったところにかえったんだと思う。これで呪いは消えたね。もう2度と苦しまなくていい。
あとは生き返らせるだけ。
「ランス君、何をしているんだ?」
「生き返らないかなって、シャローザのこと調べてた」
「調べる?」
商業ギルドのリクッターさんがいつの間にかそばに来ていた。
「魔法を使うのにその人に合わせて決めないと行けない場所があるから、それを調べていたの」
「それがどんなことなのか、想像も出来ないが君に渡しそびれていた物がある。遅くなってすまない、彼女からの手紙だ。渡して欲しいと」
封のされた手紙を渡されて、何かが入っているのを感触が伝えてくる。何が入っているんだろう?外側を汚く破り捨てると、手紙と指輪が入っていた。婚約指輪として送った、ムーンストーンの指輪だった。
返さなくても。
「確かに渡した」
リクッターさんはそう言って去って行った。
手紙を開く。ところどころキュッと縮んだ便せんと何かでにじんだ文字がある。
そこには僕が研修に行ってから家に来る回数が増えたこと、追い返すことが難しくなって苦労したことなどが書かれていた。
すぐにでもいってくれれば帰ってきたのに。
親の意向で王子と結婚させられそうになったのを、辺境伯が先に王都へ出発したので諦めたと思って油断したらしい。馬に乗ってなんとか逃げようとしたけど、追いつかれて気絶されたら王宮に連れてこられていた。ここまで強引になったのは、最後まで拒否をしてくれていたシャローザがいたから。
動かないシャローザに指輪をはめておく。最後まで頑張ってくれた彼女に、僕の婚約者でありたいと抵抗を続けてくれたシャローザに、この指輪はしていて欲しいと思ったんだ。
最後は謝罪の言葉とどうすることも出来ないことへの後悔が書かれていた。いろいろな思い出、楽しかったことや疲れたけど達成出来たこと、一緒に寝てはいろいろと思ったことなどが書かれている。最後に指輪を返す理由が書かれていた。
旅のお守りとして、婚約の日々を照らす月の光のように、私たちを祝福し導いてくれていた指輪です。ここで私はランス様との歩く人生の道を絶たれ、別の道へと行くことになりました。貴族の結婚はそういうものだと聞かされていましたが、本当に振り回されて、仲を引き裂かれてしまうとは思ってもいませんでした。この指輪はランス様と一緒に過ごすための指輪。そして、婚約の時間を照らしてくれるはずでした。今の私につけている資格はありません。無理矢理ランス様ではない者と結婚させられるのですから。
この指輪をお返しします。あなたの人生の旅を照らして、よりよい人生とよき伴侶に巡り会いますようにお願いを込めて。
手紙の端、最後の端末に迎えに来て欲しいと愛しているという言葉が小さく書かれていた。手紙を持ったまま、涙が出た。文字がさらににじむ。
「シャローザあぁぁ」
涙が止まらなくて、声を出して名前を呼ぶ。迎えに行けなかった。守れるのなら、望んでいてくれたのなら何をしてでも迎えに行ったのに。
シャローザ。笑ってる君、悲しんでいる君、怒っている君、そして苦しんでいる君。助けたかった。苦しませたくなくて、頑張ったはずなのに。最後に君を守れずに死なせてしまった。
また大切な人が死んでしまった。殺されてしまった。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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