シャローザ1
登った先には広場があって更に奥に続いていた。とにかく進んでいく、幅広い道。広い道の先には大きな神殿がある。教会が力を持っていることを象徴するような大きな神殿だ。大きいなと思っていると教会の前には火をともしていて、鎧を着た人が立っていた。なんだか近づくと面倒くさそうだから、気配遮断をしてから道の端っこによる。神殿前には馬車の道も見える。歩くのとは別の道になっている。段差とかないから馬車用だと思う。
夜中に馬車が止まると中から人が出てきて、神殿に入って行く。何をしているんだろう?もう1台荷台の馬車が来た。中からドレスを着た人が運び出されてきて荷台に積まれる。暗くて誰だかわからない。
「今日って、シャローザの結婚式があった」
まさかという気持ちがざわざわと心の中で膨らんでいく。神殿から出た2台の馬車を追いかけていた。段差はないけど、ずっと下りでなんとかついていける。
降りると馬車が2手に分かれて、荷台、ドレスの人が積まれた馬車を追いかけた。ドンドンと引き離されていく。魔法。風で速度を上げて、急いでいる馬車に離されないようについて行く。見失ったらわからなくなる。
ついた先には馬車がやっと通れるほどの門があった。どうして城壁の近くに出入り口を作るんだろう?
門の向こうからガラガラと金属の音がしてから止まる。何が起きているのかわからず、待っているとまた門が開いて同じ馬車が出てきた。開いた門の奥に城壁向こうへ通じる鉄っぽい門が降りているのが見えた。城壁の向こう側へ何をしに行ったんだろう?荷馬車はさっきまで急いでいたのがどこへ消えたのか、ゆっくりと進んでいる。ついていくと兵士の詰め所に入って行った。荷台を確かめたいけど、詰め所の入り口は兵士が守っている。壁を登れるようにして中を覗く。荷台には何も積まれていなかった。壁を元に戻してから考える、ドレスの人はどこに行ってしまったんだろう?
急いでいたのはあの門まで、城外に持っていったのかもしれない。外に出たいけど、夜の間は外に出られない。どうにか、でも今はギルドに入場を保証してもらっている状態。明日まで待つしかない。
心のざわめきは収まらず、暗い中で大きくなっていく。夜の暗さを吸収するように。
朝日が昇って開門の時間、薬師ギルドでフウイに乗って城の外に出て行く。城門沿いに進んでいくと昨日みた鉄の上下門があった。その横には積まれた、誰とも知らない動かない人達が山積みにされていた。腐ったにおいが鼻をついてきつい。クリーンで誤魔化しながら、フウイを降りて近づいていく。
夜に見たドレスの人は目立つのですぐに見つかった。ヴェールがついたままだったので近づいて、純白の豪華なドレスには赤黒い広がりがついていた。ドレスは切られていて、切られていたところから色が変わっている。
違うって言ってよ。
いつも見ていた人にそっくりな体型。
うっすらと見える輪郭。
ヴェールをめくる。
「あ、え、生きているんじゃ」
冷たいシャローザを抱き上げて、顔を確かめる。熱を持った指先が触れる。
「シャローザ」
返事はない。体温がない。冷たい。心からも熱が抜けていく。
「死なないよね?」
シャローザを殺さないために、死なせないように。
「生きるんだよね?」
そのために、そのために。取り返すのは諦めたのに。触れた手は冷たくなっていく。
「死んで」
死んでない。口から出ようとした言葉を押さえ込んで、シャローザを運んで行く。捨てられていた場所から離れて、シャローザを置く台を作って寝かせる。
「やめよランス、生き返らぬ」
「やってみないとわからないじゃないか」
「封印を解いてはならぬぞ」
「でも、それじゃあ、シャローザが」
わかってる。母さんも冷たくなって、動かなくなって。でも、そのためにいろいろ勉強したんだ。
「自分で作り出す」
「何を言っておる、自分が何を言っているのか理解しておるのか?」
「無理でも何でもやるの、そのために、守るためにやってたの」
「やめるんじゃ」
ウィットの言葉を無視して第1層の構築に入る。
「出来たとて失敗する、やめるんじゃ」
「聞いておらんか」
「失敗すれば余波で、封印が解ける恐れがある」
「それではあの者を呼ぶことにしましょう」
「うむ、頼む」
ズワルトが消える。考えることはまずは、シャローザを生き返らせるための魔法を生活魔法で使うこと。回復魔法を生活魔法で再現すればいいだけ。まずは基本の魔法陣を構築、久しぶりなので確かめる。魔力で作った陣形。そこに古代語の言葉を追加していく。基本となる最下層が完成。そこの上にもう1層重ねて次の魔方陣を乗せる。書きながらシャローザに合わせて変えないといけないところがあるのに気づく。シャローザを調べようと魔力を振り向けた瞬間、2層あった魔方陣が消える。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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