初めてのA級ギルドカード

「今回は総本部からA級にしてもいいって言われているからね。これだけギルドに貢献してもらったんだ。十分な対応だと思う。A級になると大量の物資を緊急で用意してもらえる。緊急料金はもらうけどね。無理に人手を使うんだから。大口割り引きとか、普通に割り引きも勝手についているはずだよ。A級になると普通の商店で買うよりは安いね。だいたいのものは言ってくれれば手に入るよ、一品ものでその店にしかない物は無理だけどね」

「旅の保存の利く食料とかも扱ってる?」

「干し肉とかだね。乾燥した食べ物中心になるかね。冒険者ならギルドでそういうのを作っているのは知っているんだ。結構いいみたいだけどねえ。そういう手軽に食べられるものの専門は料理ギルドだね。冒険者ギルドと味がよくて何日か持つ食べ物は共同で開発しているはずだよ。干し肉はかなり保つからね、弁当がなくなったら食べればいい」

「冒険者ギルドの弁当のほうがいいのか」

「手に入り易くて、安いのは干し肉だよ。長期任務だとどうしても干し肉を持っていくようになるよ。弁当は数日ぐらいしか持たないからね」

 数日かかりそうならギルド弁当、それ以上なら干し肉っていうことかな?渡された朝食を食べてから商業ギルドについた。パンに肉が挟んであるヤツだった。

「ギルドカードの更新をしようと思ってね。A級のはあったはずだよ持ってきておくれ」

 そのままギルド長室に通された。中に入って座っていると職員の人達が装置と黄金色のカードを持ってきた。机に置いたらそのまま出て行った。

「こっちのギルドカード発行機は特別製でね。総本部の許可がないとカードの発行が出来ないんだよ。準備している間にランスのカードを発行することを伝えているからすぐにでも発行出来るよ」

 受付で出されるものよりだいぶ大きい。

「手順はそんなに変わらないよ。ちょっとお待ちな。それとB級以上は夜間対応が出来る。緊急に必要なものを融通出来るよ。出来れば昼に来て欲しいがね」

 カードを載せる場所に載せて、何やらやっている。スイッチを切り替えていっている。全部の切り替えが終わって、装置が静かめに音を立ててうっすらと光る。おおすごい。

「もう少し待ちな、こうしてすぐ使えるものでもない」

「そうなの?」

「総本部と本部を繋ぐ通信を経由して総本部とのやりとりをさせるんだよ。手を乗せるところがあるだろう?今は赤だが、青になったら手を乗せていいよ。ギルドカードが出来るまで手は置いたままだよ」

 そのまま手が置く場所を眺めていると魔力の流れを感じながら、通信用の水晶から魔力の流れがこれに繋がっている。この魔力で向こうとの登録作業をしているんだろうな。しばらくジーッと見ている。魔力の変動を感じていると手を置く場所が青に変わる。

「もういいの?」

「もう少し待ちな、こっちにも登録情報が表示されないと別人になることがあるんだよ。いつもこっちが先に表示されるんだがね。しばらく待つんだよ」

 しばらく待ちながら魔力流れと魔力の強弱をなんとなく感じ取っていた。ずっと続いている。終わることはなく、魔力の流れを感じる。これで離れたところにいても登録作業ができるんだね。

 魔力の流れは続いているけど、魔力の強弱がなくなっている。

「手を置いていいよ。いいと言うまで、そのままだよ」

 青くなっているなっている、手を置く場所に手を置く。魔力がふれ合う感じがして、手元が赤くなる。いつもギルドカードを作る感覚に似てる。ちょっとだけ魔力がふれ合う時間が長いかな?

「カードが出来るまで置いておきな。希にあるんだよ、魔力が計測出来ませんでしたっていうことが。次に別人が触ったらそいつが登録されちまうからね。そうならないためにも出来るまではそのままだよ。時間はそんなにかからないさ」

 そう言われて待っているとまた青くなってすぐに赤くなる。

「ほらね、2回測るなら最初からいって欲しいよ。全く」

 手を奥側からはカードの様子はわからないけど、金色のカードを持って確認をしていた。

「ちゃんと出来ているね。もう手は離していいよ」

 手を離すと金色のカードをもらう。名前とランクしか書いてない。

「それと前のカードは返しておくれ」

 ゴソゴソしてからD級カードを出して渡す。

「ちゃんともらったよ。これでランスもA級だ。個人名でA級は久しぶりじゃないかねえ。途中で商店の名前に変えたりするのが普通なんだ。店もないのに商店名や屋号にかえるのもおかしいしね。いないわけでもないから、それと商業ギルドのA級はだいたい護衛をつけていることが多い。狙われることがあるかも知れないから気をつけるんだよ。冒険者ギルドに依頼して救助を待つことにしか出来ないからね。ランスなら大丈夫だろうけど、気をつけるんだよ」

 カードをしまい込むと手続きが終わったから、倉庫に移動して容器とクリスタルを作り出していく。薬師ギルドで作っていたように、魔力量の把握を確認して、徐々に作り出す速度を上げていく。品質を保ったまま作らないと意味はない。集中して作っていこう。



 目を開けると薄暗い部屋の中にいた。どこだろう?

 振り返ると魔力切れで倒れたようだった。魔力自体はある程度回復しているかな?部屋の中を見回したけど、ベットがあるぐらいだった。建物からはわずかに音がしている。部屋から出ると廊下に出て聞こえる音が大きくなった。

 周りは暗くてライトを使って歩いて行く。音のする方はこっちかな?前から誰かがやってくる。緊張したような声がした。

「誰だ?」

「ランスだけど、ここってどこ?」

「ランス君か、ここは商業ギルドだよ。魔力切れで倒れたんだ」

「そうなんだ」

「我々は夜番だからゆっくり寝ているといいよ」

 そういって別の方向へ消えていった。どっかで見たことあるかなと思っていたら、商業ギルドの人か。

 夜の商業ギルドは音がずっとしていた。そちらを見に行くと倉庫で荷詰めをしていた。白粉やクリスタルを装飾のキレイな箱に詰めて、それを更に別の箱に詰める作業をしていた。誰もいない受付に戻って、閉まっている扉を見ているとギルドカードをかざすようなところがあった。かざすと空いて外に出る。

 夜の商業ギルドは昼と違って静かで音が少ない。街の中も静かで街灯が柔らかい光を放っているだけで誰もいない。1人で道を独占しながら歩道を歩いて行く。さすがに大通りには人がいたけど、誰もが足早にどこかへと歩いていた。夜の王都探検。ライトは消しておく。

 知り合いに見つかったら怒られちゃうかも。冒険者ギルドの前、ギルドは静かで酒場からは賑やかな声が聞こえていた。薬師ギルドは少しだけ音のする、白粉を作ってもらうためかな?次は焼き串を買ういつもの広場は、店がなくなっていつもよりも広く感じる。次はシャーローザと行った王都の展望台。夜は閉められて、誰もいなかった。上を見上げると天に昇れるほどに高く感じる。あとは閉まったお店の前を通って満足。

 シャローザは今頃王宮かな?結婚式ってどこでしたのかな?確か教会だったはず。昼は近寄らないけど、夜ならみんな寝ているはずだから見に行くぐらいは出来るよね?いつもなら近づかない方へと歩いて行く。人とすれ違うこともない。街灯と月明かりで十分に見えている。

 教会へと登るための階段。登るとなると大変だ。見上げる先にまだ教会は見えない。行ってみよう。階段を上って、途中で休憩しながら先へ進んでいく。

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