賠償会議3
「それではランス殿への賠償を決め、賠償請求をギルドが代理として行います。まず、勇者連合国への賠償ですが、先んじて冒険者ギルドから勇者関連のクエストを受けなくてもよい。なお、勇者をランスが殺害した場合は魔王討伐をすること。各国及び冒険者ギルドからの緊急クエストの強制不可。ランス持ち込み売却素材の取り分のアップ。以上となります。ギルドからの賠償は素材の買い取り分のアップになります。こちらでよろしいでしょうか?」
「待っておくれ、冒険者ギルド本部長。クエストの税金減税に買い取り金額の税分カットぐらいは乗せてもらわないと賠償にならないよ。それをしないなら、勇者の殺害のくだりは削除だ。買い取り分のアップ分もランクが上がれば自然とそうなっているのは知っているんだよ。その分を冒険者ギルドが出すのかい?違うだろう。なんならお金の賠償に変えてもらってもいいんだよ。冒険者ギルドが勇者連合国としていくらの賠償をはじき出したのかはわからないけどね」
「総本部長もこれで納得している。急な変更は出来ない」
「ふうん。じゃあうちは、冒険者ギルドに買い取り価格引き下げを賠償として要求する。その益からランスへの賠償金を払っておくよ。それでいいね?冒険者ギルドがランス殿のために日和見せず、対応していればこんなことにもなっていなかった。違うかい?」
それはと口を開いて閉じる冒険者ギルド。商業ギルドとしては冒険者ギルドが危険性をきちんと説明して、勇者連合国が危険にさらされる可能性を考慮していないのが落ち度なのだが、口には出さない。
「冒険者ギルドの全権代理はどうするのかい?」
「冒険者ギルドの請求は最後にいたします」
「かまわないよ。それでは商業ギルドとしましてはランス殿の関連商品の関税なし、売り上げに対する税金なしを請求します」
会場のざわめきが大きくなる。
「それは横暴だ。いくら何でも認められん」
「ランス殿の関連商品のみです。国庫に響くほどの税は納めておりません。それに引き換えて、命が助かるのです。我々も命がけで説得しております。支払ってもらう形でも良いと考えましたが、免税の形で優遇していただければと考えての提案です」
「税金を払うのではなく、こちらが払うのだと?馬鹿にするのもいい加減にしろ」
「馬鹿にしているのは勇者王子であり、それを支持している勇者連合国です。それならば今すぐに結婚式を中止し、シャローザ・エルミニド様をランス殿に帰すべきです。それならば、この話し合いも必要ありません。冒険者ギルドは勇者連合国がお金での賠償を見積もっているはずです。教えてもらえますか?総本部長と話しているでしょう?」
商業ギルドから冒険者ギルドへ鋭い視線が飛ぶ。各国からも見積もっているなら金にしろと声が上がる。
「お金に換算した場合でよろしいのですか?」
「そうだ。回りくどいことはせず、金で解決すれば早いのだ」
「総本部長と話に出たのは、白金貨1万枚が視野に入ると。各国が消滅すると仮定して十分にすぐ払えるだろう金額、払えないならそのときは上乗せして交渉になるでしょう」
会場が一気に静かになった。かつてない金額に驚きを隠せずにいる。
「ランス殿との友好を結んだファイアドラゴンは群れを率いる長。協力をするとしたらファイアドラゴン単体ではなく、群れで来られることを想定しています。前の会議でお話ししました冒険者の人数は、今ここいるランス殿と天馬との戦闘を想定しています」
「魔王ではないか」
「魔王は話など通じません。人ならばこその今の交渉なのです」
ファイアドラゴンの群れというインパクトは会場を納得させるだけの力を持っていた。ドラゴンに復讐をしようとする国はない。天災なのだ。受け入れるしかない。復讐をして、また襲われたら復興すら危うい。滅亡だ。
「それでは商業ギルドとして、免税でよろしいでしょうか?」
「それでは他の商家に示しがつかん。せめて2割」
「ここは引くわけには、もう少し欲しいですね。払ってもらうことも考えていたのです。逆に払ってしまえば、商家も納得するのでは?」
「1割5分」
「では5分でどうでしょうか?」
「1割4分」
「6分」
「1割3分」
「7分」
「1割2分」
「8分」
「1割1分」
「9分」
「ええい1割、それ以上は下げられん」
「わかりました。売り上げの税金は1割。それで決まりです」
商業ギルドは満足のいく結果に落ち着いてホッとしている。
「商業ギルドは決定しましたので、薬師ギルドからの賠償ですが、まず売り上げの税金の軽減。これも商業ギルドとおなじ1割でお願いします」
「しかたなかろう」
「薬師ギルドは希少材料の優遇を行います。そして、希少材料の採集の許可をいただきたい。調べたところによりますと危険地域での採集のために希少になっているところの自由採集。本当に量の取れない希少材料採集の交渉を薬師ギルドが代行したいと考えております」
「採集をか?条件は様々あると思うがどうするだ?」
「そう思いまして、量の取れないところでは量の交渉をと考えております。危険地域では通達後、自己責任にて入場許可を速やかに出していただけるようにお願いします」
薬師ギルドとしては、危険地域は通達で入場出来るように。量の取れないところで必要ならば交渉を、とるための規則も教えるように考えている。全てが自由にはならないだろうが、上級薬師になるのであればランスは希少材料を取りに行くことも考えるだろう。
「採集は産業になっているところもある。許可を出せないところもあるだろう」
「それならば優先購入権を。管理の行き届いている採集場は産業として人々が維持しているのですから、購入をいたします。ただし、最優先で買えるようにお願いします」
「うむ、それならば問題はないだろう。どうであろうか?」
反対するようなことはなかった。買うといっている。全てを採集させろと飲めない要求を突きつけているわけでもない。それでも嫌がるそぶりを見せる国もあった。が、大勢に決められる。
「それでは薬師ギルドからは以上になります」
薬師ギルドは商業ギルドの交渉に助けられて、なんとか売り上げの税金の軽減も同様にもらえ、ホッと胸をなで下ろす。
「最後になりますが、冒険者ギルドです。勇者関連のクエストを受けなくてもよい。なお、勇者をランスが殺害した場合は魔王討伐をすること。各国及び冒険者ギルドからの緊急クエストの強制不可。ランス持ち込み売却素材の取り分のアップ。ランスの売上税を1割に」
「先日のファイアドラゴンの爪はどうなるのだ?」
「それは今まで通りで、交渉の終わった本日より適用させていただきたく思います」
「それならばうちはいいだろう」
商業ギルドの勝ち取った1割の税率は3ギルドのランスの売り上げに対して適用される運びとなった。
「それでは勇者連合国への賠償をこれで終了いたします。急遽の開催にお集まりいただき感謝いたします。続きまして、ラント王国とエルミニド辺境伯様への賠償請求でございます」
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