フィーレ王国へ1

 お弁当もシャローザが作ってくれたのか、見た目は少し悪かったけど味はよかった。満足感たっぷりで少し眠くなるけど、頑張って進んでいく。さっさと行きたかったから生活魔法で速く進んだ。

 夕方に着いてギルドに向かう。ギリギリ片付け中で、業務は終わっているみたいだった。

「フッセさん、デールさんいる?研修を受けようと思って。いるのかな?」

「ランス君、久しぶり。ちょっと待ってね、ギルド長」

 中に入っていくとすぐに呼んできてくれた。

「どうしたんだ?ランス、ポーションか?」

「研修を受けるよ。シャローザは一緒に行けないから」

「いつ出発出来るんだ?」

「いつでも行けるよ。今日は街に泊まるけど。王都に行けばいいの?」

 本部に連絡をしてくれて、どうするかを聞いてくれるそうだ。時間がかかるかもしれないから明日にまた来るようにとのことだった。宿屋に行って1泊してから薬師ギルドに向かう。中に入って待っていると呼ばれて、受付の裏ぐらい、調合している場所で話をする。

「研修の件なんだが、ここまでの飛竜の手配が間に合わないから王都まで来てくれれば、乗り継いでファーレ王国まで連れて行ってくれる。行くなら歩きなのか?」

「そうだね。馬はシャローザのだし。歩いて行くよ」

「時間はどれくらいかかる?時間によっては途中から馬を手配出来ると思うんだ。ここには馬屋がないからすぐに用意が出来ないからな」

「だいたい14日ぐらいかな。途中で野宿しながら行くからそのくらいになると思うよ」

「じゃあ、次の街でギルドによってくれ。馬を用意出来るかもしれない。馬を借りるまでギルドに顔を出すようにしてくれるといいか。ところで馬には乗れるか?」

 大事なことを最後に聞いてきた。

「馬に乗る練習はしたけど。うまく乗れるといいけど」

「なら大丈夫だろう」

 デールさんはギルド長室に引っ込んでいった。フッセさんに買い物したら出発すると伝言を残して、旅の食料をある程度買い込んで出発する。王都に行くのも何度目だろう。遠いんだよね。

 道もある程度わかっていて、道もそんなに変わってないと思う。馬車の轍に気をつけながら道なりに進んでいく。馬車の轍に引っかかってこけそうになったことがある。でも馬車の通りが少ないこの辺だけしか、道をどこでも通ることは出来ないけどね。数ヶ月ぶりの通り道を進んでいく。研修を受けたら早く帰りたいな。長居をすると心配するだろうし、魔力の補給はズワルトがしてくれることになっているけど、グリじいの教えを受けているのでそんなに教育を受けることはないかもね。


 隣の領主街に着く。言われたとおりに薬師ギルドへ向かって行く。

「こんにちは」

 挨拶をしながら扉を開いて入っていく。

「こんにちは。初めての子ね。誰かのお使い?」

「F級薬師のランスだよ。デールさんに、うちの領主街のギルド長でサルエン男爵領から来たんだ。薬師ギルドがあったら寄るようにって」

「そうなの。ちょっと待っててね。ギルド長に確認してくるわ」

 受付のお姉さんは奥へと消えていった。待合のイスには何人かおじいちゃんやおばあちゃんが座っている。薬待ちかな。うちのギルドよりは利用が多いようだ。

 専門の調合の人がいるようで、作っては渡し、作っては渡している。薬の棚も把握しているので、取って計量、調合までが速い。いい人がいるね。丁寧にやっていて、凄いなって見とれていた。

「ランス君」

 お姉さんが戻ってきた。

「ギルド長に確認したら、次の街になるって話だったわよ」

「そうなんだ。ありがとう」

 街をふらっと何か保存の利いていいものはないのかな?歩いていると宿屋があったから泊まるから部屋をお願いして、食事を食べてから街に繰り出した。街のパン屋でクルミを混ぜたパンを見つけたので、買っておいた。明日、明後日で食べればいいかな。もつよね。腐るのは困るから混ざり物は買ってこなかったけど。次の街までだからいいかな。

 腐るともったいないからいいかな。他にも美味しそうなものを見つけて、次の旅に持っていこうと思った。当分ないと思うけど。王都までだったらあるかな。


 さて出発だ。いつものように歩いて行く。頑張って次の街まで行かないとね。だんだんと人が多くなってきて、荷馬車が多くなる。馬車もそれなりに通っている。荷馬車と馬車が一緒に長い列を作っていることがある。何を運んでいるのかなって思うけど、ちゃんと荷物に被せ物をしていて、布かな?それとも何だろう?雨に強いのかな?

 そんなことを考えながら通り過ぎていく商隊を眺めている。道の端を他の人達とすれ違いながら進んでいく。今日中には次の街に着きそうにないから、いったんどこかで野宿をしよう。


 街について薬師ギルドを探す。それなりに大きい街でうちの領主街とはくべるまでもなく大きい。

 ギルドはだいたい大きな通り沿いにあるはずなんだけど。通りを歩いて探していく。途中で干した肉とかあった。補給をしながら進んでいく。

 見つけたので中に入る。受付で来た理由を話すと、中に入っていく。


 しばらく待ってから一緒に外に出ると馬が1頭いた。普通の乗馬用の馬だね。大きさは普通ぐらいなんだけど、いつも大きく感じる。どうやって乗ればいいのかな。

「わ」

 ビックリして声が出る。急に抱えられて馬に乗せられた。

「馬は乗れるのか?」

「乗ったことはあるよ」

「なら大丈夫だな。頭のいいやつだから、台か何かの近くで乗るといいぞ」

「わかった、ありがとう」

 なるほど。乗るために台を使えばいいのか。王都に行くまでは探しながら乗っていこう。手綱を持って進んでいこう。


 馬付きで進むと速くすすめるよね。途中、水辺で休んだりして。お世話のための道具がないから困ったけど、風を起こして涼しくしてあげたりして誤魔化した。大人しく風に当たっているので、気持ちいいのかな。

 桶と干し草を次の街で買ってから次の街へと進む。荷馬車なんかも多いので、詰まったりする。その時は人がいないかとか見てから追い抜いて、進んでいくようにしている。荷物があると進むのが遅くなっちゃうからね。

 先に進むことを考えていると商隊が止まっている。横を通り抜けよう。故障でもしたのかもしれないね。道が広くなってきているけど、荷馬車がすれ違うのでいっぱいいっぱいぐらい。

 前の方で武器を持った人達が戦っている。馬の耳がせわしなく動いている。だんだんと遅くなって止まる。

「怖くなっちゃったのかな?」

 首をなでる。これ以上は進んでくれそうにない。金属音が響いて、大人しくしてくれているけど、足踏みを繰り返している。

「ちゃんと待ってて。どけてくるから」

 馬を下りると戦っている奴らの方へと走っていく。

「坊主、近づくな。盗賊だぞ」

 声を無視して走って行くと全員をまとめて空にあげる。空中に投げ出された全員に衝撃を与えて意識を刈り取る。最後はふわっと地面に置いておく。立ち上がった人がいたので、足に石を当てて何か折れる音がした。これでいなくなったかな。

「何がどうなったんだ?」

「誰が仲間か敵かわからなかったから、全員やっつけた。気絶しているうちに、縛っておくか殺すかした方がいいよ」

「お、おう、そうだな」

 馬の方に戻るとちゃんと待ってくれていた。荷馬車の端っこから馬に乗ると今度は進んでくれた。馬車側にいた人達は起こされて、気絶している人達を縛り上げている。

「ちょっと待ってくれ、今のはどういう魔法なんだ?」

「リーダー、それを聞くのは御法度でしょう」

「興味というか、見たこともない魔法だから聞いてみたかっただけだ。答えたくなかったら構わない」

 馬車に乗っている人達も出てきて縛り上げている。

「生活魔法だよ」

「はあ?冗談はやめてくれ。そんなことが出来るとは聞いたことがない。何か他の道具を使ったんじゃ」

「他にここまで使える人を見たことがないから生活魔法は難しいんじゃないかな。それに僕は祝福前で生活魔法しか使えないからね」

「祝福前で、あんなことが出来るのか」

 魔法使いの人がリーダーの人を杖で殴る。

「いってー」

「助けてくれてありがとうランス君、私たちまで気絶させるのはどうかと思ったけど。危なかったし、ありがとう」

「区別がつかないときはどうしたらいいの?いちいち商隊の人に確認とって助ければいい?それなら皆殺しか、少し遠回りすればよかった」

「それならしょうがないね」

 魔法使いは顔が少し引きつる。

「何で名前を知ってるんだ?」

「ワイバーン討伐のF級冒険者が出たって話を聞いてないの?」

「誰かが作った噂に尾ひれをつけたものじゃないのか?」

「何言ってるのよ、冒険者ギルドが認めてる、本当のことよ。冒険者ギルドが出来るかどうかの確認もしている。そのくらいの情報は仕入れなさいよ。ファイアドラゴンと渡り合ったっていう噂もあるのよ」

 ウゲって感じの顔でリーダーは聞いていた。

「それじゃ、急いでいるから」

 馬を促して歩き出した。縛っている人達を避けて、商隊を抜いて道を進んでいく。



 馬に乗っている子どもを見送って、魔法使いはしゃべり出す。

「輝く太陽が何も出来ずに負けたのよ。皆殺しもやってのけるし、商隊ごと消すことも出来るはずよ」

「まてまて、何で輝く太陽が出てくるんだ?」

「冒険者ギルドが確認のために送ったのが輝く太陽よ。本当に何も出来ずに、遊ばれて終わった。実力を測れなかったそうよ。助けてくれたのは気まぐれかもしれないけど、殺さなかったのも気まぐれかも知れないの。それに助けてもらっているのは間違いない。私たちであの人数を凌げるとは思ってなかったし、今度あったらお礼でもするようにしないとね」

「助かったのはそうだな。そんなに強いのか信じられんが、礼はしないとな」

 馬車の中に残っていた雇い主が出てきた。

「さすがB級冒険者、あの野盗を撃退するとは。荷物も無事でしたし、褒賞の上乗せをしておきましょう」

「それなんですが、実は通りかかった冒険者に助けてもらったんです。上乗せはその冒険者にお願いします」

「そうなのですか?それならばその冒険者の名前は?」

「ランスです。祝福前のランスです」

「聞いたのですが、うちのギルドにも所属してるはずですね。お礼はギルドを通じてしておきましょう。しかしそんなに強いのですね」

 縛り上げている人達は十数人の野盗を1カ所に集めている。縄同士を繋いでいるところだった。次の街までは時間がかかるかもしれないと雇い主は考えていた。



 あの商隊をすぎてから馬も止まることなく順調に進んでいた。聞き慣れない音だったから進むのをためらったんだろうね。音がしなくなってからはすぐに動いてくれたから、大丈夫だと思いたい。

-------------------

読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る