シャローザとの生活3

「ようランス。少しいいか?」

「どうしたの、デールさん。ここまで来るなんて」

「じつはな、F級薬師は珍しいのは話したことがあったか?それでだ。将来有望な薬師に勉強出来る機会を設けようっていうので、総本部での研修に来ないかという話が来ているんだ。基本から最先端の薬学知識まで薬師として活躍するための知識が得られるはずだ。どうだ、いかないか?」

「行くのはいいけど、シャローザは連れて行ってもいいの?」

 少し考え込むとランスだけになると答えた。

「なら返事は待ってよ。話をしておかないと。どのくらいの期間になりそう?」

「そうだな、行くのに馬車で2、3ヶ月ぐらいで向こうの研修期間は3ヶ月から半年を予定している。薬師ギルドとしての体裁はな。本音としては細工ギルドの総本部が商業ギルドとの取り引きでかなりの遅延を出していて、各国の本部からの突き上げをくらって、薬師ギルド総本部と商業ギルド総本部がどうにか和解出来るようにして欲しいとのことなんだ。だから、ファーレ王国にうちの研修という形で行って欲しい。研修自体はちゃんとやるけどな。往復に関してはここの王都からファーレ王国まで、飛竜が用意されることになっているからそんなに時間はかからない」

「じゃあ、細工ギルドのために行くことになるの?いやだよ。本さえ貸してもらえれば、自分でやっておくから大丈夫だよ」

 少し困ったようにしている。

「細工ギルドの人事交代があってな、突っぱねていた総本部長は首になって、新しい人になったんだ。新しい総本部長もそんなことになって、商業ギルドと交渉したが原因になったランスの細工のことを確認しようとしても、この国の本部長はやめてしまっていて確認できない。新しい本部長もいない状態で確かめようがなくなって、総本部に呼ぶことになった。ただ、祝福前の子どもを他国に呼ぶことはよくない。それでこちらにも話が回ってきてそれならF級の研修を行おうということになったんだ。往復から研修まで薬師ギルドが責任を持って行う。商業ギルドもついでならといってくれている。あとはランス次第。それに今滞っている販売が全部解禁になる。シャローザ嬢と結婚するならお金はあった方がいいんじゃないか?薬師としても稼げないわけじゃないが、多いにこしたことはないと思うぞ」

「それはそうだけど。急ぐ理由もないんだけど」

「ランスになくても細工ギルドにはなるべく早くとお願いされているんだ。出来れば早めに頼みたい」

「薬師ギルドのことなら早めに行くけど、細工ギルドのために早く行くつもりはないからね。シャローザともきちんと話をしないとダメだから決まったら領主街に行くね」

 ならしょうがないかとデールさんは帰っていった。

 行くことにして、シャローザの呪いがあるから3ヶ月も向こうに行くと絶対にまずいことになる。今のところ、魔力を補給出来る人がいないから長期間離れられない。困ったな。


「シャローザ。あのさ、3ヶ月ぐらい研修に来ないかって薬師ギルドに誘われたんだけど、どうしよう。シャローザの呪いが1週間ぐらいしかもたないから、一緒に行けないかな?費用は出せると思うんだけど」

「一緒に行きたいです。お父様に許可が出るか手紙を書いて聞いてみます。ランス様と、ところでどこへ行かれるのですか?」

「ファーレ王国。総本部がたくさんあるところ。生産系のギルドの多くがここに総本部を置いているはずだよ。一緒に行くのが決まったら相談してみよう」

「国外ですか。ずいぶん遠くに行くのですね。そんなに遠いところにも行くのは初めてで楽しみです」

 嬉しそうにしているシャローザは、気合いを入れて準備はどうしましょうとどこかを見ていた。あんまり遠くに行くのはスキルのない祝福前にはきつい。戦闘系の職を持っていなくてもスキルを身につけていることもあるので、一概に戦闘が出来ないわけじゃない。スキルを持っていないなら、護衛なり、雇って旅に向かうだろうしね。それに逃げ延びることも出来にくい。知識でなんとかするってこともあるけど、スキルがあることによって逃げ延びることもあったりする。

 そういう全部がない状態、祝福がないってことだから国外なんてもってのほか。あとは自国の優秀な祝福を得られる人が、国外へ行ってしまうことを防ぐっていうのが1番なんだけど。特に優秀な血族って人々はね。僕が優秀なのかといわれると、わかっていないんだけど。祝福を受ければ確実によいとは思っている。

 思っているんだけど、ティワズもグリじいも努力は忘れずに精進しろって。越えるべきはダンジョンだとか古代人の知識だとか言ってて、聞かされる限り太刀打ち出来る気がしない。確実に負ける。もっと努力しないとね。


 シャローザは楽しそうに、持っていく物を選んでいた。貴族のように大量の荷物を運ぶつもりだろうか?飛竜に乗っていくのにそんなにたくさんの荷物は持っていかないよ。

「必要最低限でお願い。飛竜で行くんだから、陸路で運んだらつく前に帰ってしまう場合があるよ?」

「陸路ではないのですか?」

「飛竜で行くよ。大量の荷物は持っていかないからね。なるべく早く着くようにしたいんだ。実は細工ギルドの総本部長が替わって、和解をしたいらしいよ。薬師ギルドが頼まれて、研修もそれに合わせて早くしたみたい」

「ランス様が和解を受け入れられるのならよかったです。売れない物が売れるのならいいですね」

「ついでだけどね。シャローザの返事次第で断るかもしれないけどね」

 行くべきですと毅然と話すシャローザが真剣な面持ちになる。

「だけど、呪いのことがあるから離れられないだろう?」

「それはそうですけど、ですけど。ランス様のために行くべきです。ランス様も将来、ファーレ王国に行かれるのでしたら移住のための費用も貯めておかねばなりません。それに私もそちらで学園に通うことになるのでしたら、その分を工面しなければなりません。あのクリスタルを売れるのなら、お金の心配はいらないのではないですか?」

「だけど、シャローザが」

「もしもの時は、我が魔力を運んでやろう。我のを与えることはしないが、ランスの魔力を運んで渡そう。一緒に行けるのがもっともよいがな」

 真っ黒な狼が現れる。

「そんなことしてくれるの?」

「うむ。ランスを思うのなら、その気持ちを汲んでやろう。ランスも心配事が減るのならそれで構わぬであろう。行けぬ場合の話だ」

 それだけいうと消える。ズワルトってシャローザのこと気に入ってるのかな。世話を焼いているように思う。仲がいいのならいいかな。

「それより手紙は書いたの?」

「はい、次の輸送の時に一緒に持ち帰って渡してもらえるよう手配しました。あと個人的なお願いになりますが、副団長がお手すきの際にお相手をしていただきたいと。ランス様の気が向いたらとは言っておきました。何やら楽しみにしている様子でした」

「そうなんだ」

 そのうち相手にしておかないとかな。それよりは僕も行くための準備を整えておかないとね。いつも使っている布団を収納するだけでいいんだけど。

「ランス様はいつも荷物が少ない気がするのですが」

「元々モノをもっていなかったからね。徐々に増えてはいるけど」

「そうですか。もっと揃えてもよろしいかと思いますよ」

「必要になったら買うよ」

 持っていく物の選定に戻っていく。旅の準備に夢中な彼女はそのままでいいかな。外に出るとまだまだ日が高かった。久しぶりに川を越えて森に入った。

 森の中は涼しい。直接日差しが当たらないからかな。少し入ると大きな木が並んでいるので暗くはなる。薬草の生えている場所までは、どうしても距離がある。木の高い場所を抜けないと行けない。それか低い場所をたどっていくか。探索はしたことがあるから、そっちの場所へ向かう。

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読んでくれてありがとうございます。

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