シャローザとの生活2

「では明日はランス様の授業はなしになります。明後日はお嬢様と一緒に授業を受けてください」

「明後日だね。わかった」

 国が変わると歴史とかは変わるから、そんなに覚えるつもりもない。ざっくりとした、概要だけ覚えていればいいかな。

 帰ってから家の周りは様変わりした。騎士の常駐する場所が出来たり、シャローザの住む家を簡単に構成したり。この辺は自由にしてもいい場所なはずだから、いいんだけど。そのせいで村から離れているのもある。

 当分使っていなかった狩りの装備を点検していく。弦の張り具合とか引いてみたり、傷とか確認したり。矢も確認しておいて、矢筒に入れておく。うまく動物に会えるといいんだけど。

「明日はどこかに行かれるのですか?」

「狩りに行こうかなって思ってるよ。帰ってから行ってないしね。森に入って変わっていることがあるかなとか、魔物がいると困るから調べるだけだよ。森に近い分、1番危なくなるのはこの家だからね。シャローザは連れて行けないよ。授業があるからね」

「一緒に行けないのが寂しいです」

「木材とりに行くときに一緒に行ったばかりだろう?今回はお留守番ね」

 もじもじとしながら肩をぶつけてくる。バックはどちらかだけでいいかもね。馬車の時のように体をよせてくる。今度は邪魔になるんだけど。

 準備をしながら矢の数も十分あるからいいかな。ナイフは最近使っていなかったから、悪そうな場所はない。魔力を込めれば自動で修復されるから、気になったらすればいいかな。

 準備は終わったのでバックにまとめる。

「準備が終わったよ」

 スッとシャローザの手が出てきて、手を包まれると揉まれる。嬉しそうにしているのでそのままにしておく。いい獲物がいるといいなと思いながら、体をよせている彼女の髪をなでる。

「ひゃ」

 ビックリしたように声を出した。

「驚かせた?やめておくね」

「い、いきなりだったので驚いただけです。続けてくれていいんですよ」

 頭を差し出してくるのでよしよしとなでる。嬉しそうになでられるよね。そう思いながらなで続けた。


 久しぶりの狩りで感覚が鈍っていたのか、取り逃がしてしまった。次は逃がさないようにしよう。出会ったのは鹿やウサギだね。イノシシには出会わなかった。鳥もいたけど近づく前に飛び立った。取れないっていうこともある。もっと慎重にすればよかったかな。荒かったかなとも思う。

 騎士の見張りに手を振って、家に帰っていくと外ではシャローザが待っていた。

「ただいま」

「お帰りなさい、ランス様」

「今日はうまくいかなかったよ。取れなかった」

「帰ってきてくれればいいのです。お金があるのでしたら、危険なことはせずとも定期的に購入をすればいいのではないですか?」

「なるほど、でもこっちに持ってきてもらえるのは保存の利く肉しかないと思うよ。取ってきて食べた方が美味しいと思うよ」

 ふうと息を吐く。

「ランス様、狩りが危険な行為ということはご存じのはずです。食料を取るというのは、よいことかも知れませんが危険なことなのです。それなら稼いだお金で食料を購入するのも手だと思います。危険なことが減るのですから。この村では麦類を購入するぐらいしかないですが、他の品も定期的に購入するなら買えるはずです。なるべく危険のないようにお願いしますね」

 それだけいうと家の中に入っていった。怒っているように見えた。あんまり行かない方がいいのかな。身綺麗にしてから中に入る。

「ランス様」

 シュンとして声も元気がない。

「あんまり狩りに行かない方がいいのかな?」

「そ、それは。私のわがままです。行って欲しくはないのです。ケガをするかもしれないと考えると、心配になってしまって。店の品揃えが悪いのでしかたないですが、出来れば一緒にいていただけると嬉しいです」

「そうなんだ。死ぬことは絶対にないけど、なるべくいるようにするね。でも、食べ物をどうしようかな?パンとスープとかばかりだとお肉を食べたくなるんだよね」

 シャローザは再びシュンとしてしまう。

「それでしたら、騎士団の入れ替わりで食料が一緒に来るはずです。こちらの分も多めに持ってきてもらえるようにいっておきます」

「それならランス様が狩りに行かなくてもいいですね」

 持ってきてもらうなら、文句はないけど。多少はお金も稼げるようになったからいいけど。どうしたんだろうね。そんなに心配しなくても、死ぬことはないんだから。

「持ってきてもらえるなら、行かなくてもいいかな。領主街とかには定期的に行きたいけどね。ギルドにも顔を出しておきたい。薬草採集には出ると思うから、狩りよりも出るのは少なくていいかな」

「心配なのはわかっていただけますか?帰ってこないとか、そういうことがあるとも限りませんから」

「そうなの?森に出るのが当たり前になってたから、どこかには行くと思うよ。どちらかというとシャローザの方が心配だよ。一緒に連れて行っても危ないし、こっちにいても、もしもってことはあるからね」

「私が心配?安全なところにいるのにですか?え?え?」

 ワイバーンが飛んでこないとも限らないしね。

「何があるかわからないよ。強そうなのが来たりすると、どうにもならないからね。大丈夫だとは思うんだけど、心配はするよ」

「それは、う、うれ、しいです」

「近くにいられないときもあるだろうけど、祝福を受けた後ならなんとでもなりそうだけど。その前だと困るかな。シャローザも気をつけてね」

「はい」

 笑顔になってよかった。気落ちしているのを見ているのは、好きじゃないからね。

「早く祝福を受けておきたいよ」

「あせっても時間は早くすぎませんから、しばらくはこのままで頑張りましょう」

「頑張るには頑張るけどね」

 とにかく自分がやるしかないので、頑張るしかない。一緒にいられるために頑張ろう。出来ることをやるだけ。

 不安を抱えながら日々は過ぎていく。身を寄せ合って勉学を共にしてお互いの存在を確かめ合う。


 数日過ぎると騎士団の入れ替わりがあった。あの副団長がいた。いいのかな?

 それと工兵もいっしょにきていて、扉に蝶番がついて窓にもつけていたので、全開に出来る。うちの窓にも蝶番をつけてもらえた。窓も取り付けを変える。板で作っておく。それと別に外をのぞける穴を横引きで出来るようにした。窓を閉めている状態で使えるようにしている。

 専門の先生が来て、僕の方も補習を入れるようになり、シャローザと毎日勉強をしている状態。狩りにも薬草摘みにも行けない。

 教えてもらうことは午前中で終わるけど、昼から近場を散策しているとだいたい騎士団かシャローザに見つかって戻ることになる。騎士団に見つかると鍛錬に付き合わされ、シャローザに見つかると何もないけど、散策に切り替わる。川沿いに歩いたり、草原を歩いたりしている。運動をあまりしないシャローザに少しは動いてもらうためだ。疲れたら普通に休むけどね。

 高貴な身分のお使いが来るが、普通に追い払う。面倒なのは騎士を連れていることだけど、1度剣を抜いたので剣と鎧を全部切り刻んでやる。素っ裸で帰って行った。辺境伯の人達は青ざめていたけどね。

「貴様は我らをなんと心得るのだ?」

「迷惑な人だけど。婚約者を渡せとかどういうつもり?」

「我らをばかにするとは、その身をもって償うがいい」

「構わないけど、前みたいに穏便には済ませられないよ。次、剣を抜くのなら殺される覚悟があるってことだよね。依頼主にも同様の行為をする。領都の領主の屋敷が同じことになると思うといい」

 騎士達は剣に手をかける。後ろに魔法使いが立っている。

「魔法使いは詠唱を開始した時点で、剣を抜いたのと同等と見なす。こっちも冒険者だから穏便には済ませたいけど、不当な理由でやられるなら反撃するから」

「祝福前がふざけた口を」

「僕のことをちゃんと調べてから来ている?いろんなギルドが敵になるかもしれないけど、構わないよね?あんまりしつこいと次はギルドを通じて抗議するから」

「やめよ、我らは代理。ギルドが絡むのならそちらとも交渉をしてこよう」

 所属しているギルドを話すと代理といった人は顔面蒼白で馬車に乗り帰って行った。

 それからパタリとこなくなった。



 数ヶ月が過ぎて、生活にも慣れてきていて。学園に入るための授業もある程度はこなしているようで、貴族のこととか歴史とかは細かいところを補完していくような面倒くさい感じになっている。流れは把握してきたかな。


 シャローザはたまにベットに潜り込んでくるので、驚いて起きたりする。最初は驚いたけど、次からは気がついても起きないようにしている。驚いて起きるとハンナさんが起きてきて、夜中にもかかわらず2人で説教を朝までされた。途中でシャローザは眠りこけてしまうのに、僕だけがずっと怒られ続けて、もう次は怒られたくないので知らないふりをする。布団の中に潜り込んでくるシャローザ。大きくていいベットで寝ているのに、わざわざこちらに来なくても。毎日顔を合わせてすごしているのにね。潜り込んだ本人は手を握ってすぐに眠りつく。

 寝ぼけながらシャローザがハンナさんに起こされている。朝の食事を作るのに早めに起きてくる。布団の中、まどろみの中でシャローザが出されると、階段の方へ連れて行かれてしまった。遠くから説教をされている様子が伝わってくるので、もうちょっと寝ていよう。ダメだって言ってるのに。その前に一緒に寝てもいいかを尋ねてもいいというはずないのにね。祝福後にはいくらでも、一緒に寝られるのにね。一緒に寝るのはなんというか、安心する。

 2人で朝食を作って出来たら起こされた。起きると邪魔になるので、起こされるまで待っている。パンにスープとソーセージ。スープは具だくさんで、この村でなく辺境伯産だ。野菜はあんまり日持ちがしないけど、物資を運搬してくれている辺境伯兵が持っているマジックバックに入るだけの氷を持たせると、次に来るときに少し鮮度がよくなって持ってきてもらえる。氷で鮮度を保てるのだと思う。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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