村への帰り道3

 時間はかかったけど、そのまま寝てしまったので、ベットに寝かせ直して、隣のベットに入ってそのまま寝た。いいたいことや溜まっていたモノがあったんだろうな。誰にも言えない状態だったし、誰かが来る様子もなかった。孤独に耐えるにはつらかったんだよね。


 次の日、目を真っ赤に腫らしたシャローザを見て、みんなの目が冷たく突き刺さった。なんで?

「昨日は恥ずかしい姿を見せてしまいました。私はあの時寝てしまったのですか?」

「泣き疲れて寝てしまったから、ベットに寝かせたよ。よく寝ていたしね」

「お話をしてるのに、思わず気持ちが高ぶってしまって、あんな姿をお見せしてしまうなんて、恥ずかしいです」

「シャローザも大変だったんだと思って聞いてたよ。よかったね。いろんなところに行ってみよう、僕も色々行ってみたいんだ。ファイアドラゴンにも会いに行こうね」

「ふぁ、ファイアドラゴン。会いに行っても食べられたりしないのでしょうか?」

 ご飯に困ったら食べられちゃうかもねと冗談で言うのをビックリしていた。

「僕がいるなら通してくれるよ。食べられたりはしない。友になってきたから、安全だと思う。次にいって攻撃してきたら撃退するから、安心してついてきて」

「それなら、い、行ってみます」

「本当に危ないと思うところには連れて行けないから。戦闘職になったらついてきてもいいよ。修練は厳しくなるから、呪われていた方がましって思うかもね。でも危ないと思ったら絶対に行かせない。それだけはさせないから」

 少しおしゃべりをして、シャローザは馬に乗って、僕は御者の人に頼み込んで馬車の扱い方を教えてもらう。馬車の動かし方は、馬の動かし方もそうだけど、馬車がある分を考えて動かさないと路肩に落ちたり、はまったりするから気をつけないといけない。慣れると自然に出来るようになるといっていたけど、初めてだから難しく感じた。


 休憩になって、馬の輓具を外すのを手伝ったけど、届かなくて無理だった。こればっかりはしょうがないのかな。休憩とわかった馬たちは僕に鼻をふんふんと近づけて、や、やめろ、汚い。顔をベトベトにされた。

「大人気ですね、ランス様」

 楽しそうに笑うシャローザを見て、馬たちもしょうがないなと思えた。水桶を出して、水を入れてやると夢中になって飲んでいるので出したかいはあったかな。

 騎士達の馬が騒がしくなったので、そっちにも行って水をあげると大人しくなる。水でそんなに騒がなくてもいいのに。普通の水と変わらないはずだよ。


「ハンナ、お尻が痛いんだけど何かいい方法はない?」

「慣れるしかないでしょう。今は馬車に戻られて、馬は騎士達が乗りながら引くことも出来るので、任せてもいいのですよ」

「馬車に戻ってもランス様がいないので、せめて近くにいたい」

「御者席にシャローザ様をお乗せすることは出来ません。ランス様に馬車の中に来ていただけるよう、お願いされてはどうでしょうか」

 戻ってくるなり馬たちに背中を押されて、水桶のところでぶるんと鼻を鳴らした。

「水のおかわりがいるってことか?」

 足と首を上下させながら桶のところにいるので、そうじゃないかと思う。

「御者さん、水をやってもいいのかな?」

「必要な分を飲めばやめるはずなので、やってください」

 いいのならと桶に水を出してやる。水やりの人じゃないんだけどな。馬にはそう思われていそう。

「ランス様。馬に乗るにはその、痛くなってしまって。馬車に乗りませんか?」

「痛いのは大丈夫なの?ポーション使う?」

「いえ、ポーションを使うほどではないです。座席にクッションを敷けばよいぐらいですので。一緒に乗るのはいやですか?」

「でも、馬はどうしたら?」

「護衛に任せれば引いていってくれるので、問題ありません」

 シャローザも馬もいいのなら、馬車に乗るか。帰るまでに馬車に乗れるといいな。2人で馬車に乗ると隣にシャローザが座る。お尻が痛いのか、少し顔をゆがめている。

「そんなに痛いなら横になる?」

「そうですね、ランス様がよければお願いします」

 イスの上に横になると顔を僕の方に向けて、膝の上に乗る。寝るにはちょっと狭いのかな。一緒に乗っているハンナさんは、上から布をかけて様子を見てるようだった。昨日のようにトントンと背中を叩いているといつの間にかシャローザは眠っていた。疲れていたんだろう。お尻が痛くなるぐらいだから、長時間乗るのに慣れていないのかも。あとはイスから落ちないように、たまにこちら側に体をよせておくだけ。

 

 休憩に止まってもシャローザが寝ているので、起こさないようにそのまま寝ているのを見ていた。お茶の用意をしてくれるそうなので、顔を埋めているシャローザと2人きりになった。少し足がしびれてきたかな。本当に来てもらってもいいのかな。そんな気持ちを聞いてみたいけど、聞くのが怖くてやめた。

 そばにいてくれるだけで、うれしい。僕のことをきちんと見てくれて、失敗もあったけど、王都では一所懸命になれない案内もしてくれてて、楽しかった。慣れてくれるように頑張って、不便なところはなんとかしてみて。店とか買い物がすぐに出来る環境じゃないから、そこが1番困るけどなんとかしていけるといいかな。僕も馬がいるといいかもしれないね。一緒に領主街に買い物に行ける。

 モゾモゾと動いて起き上がったシャローザが、眠そうな目で周りを見ている。

「ランス様」

 どうしたんだろうか、寝ぼけているようだから大丈夫なのかな?寝ているような、目は開いているから起きているんだろうけど。ふらふらしている。イスが狭いから危ない気がして、体を向けてそっと手を伸ばすと抱きしめる。

「ふらふらしていたら危ないよ?」

 胸の中に抱きしめられたシャローザ。

「あぁああ」

 少し時間がたって変な声を出したので、抱きしめたのを離した。

-------------------

読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る