販売制限の影響1

 本日はシャローザが筋肉痛のため来られないそうだ。昨日頑張ったからね。使いの人へ会いに行くと伝えて、メイドさんに何か持っていったほうがいいか聞いてみた。

「そうですね、お見舞いなどでしたらお花、いえ、贈り物でしたら何でも喜ばれると思います。簡単なお菓子でも、よいのではないでしょうか?」

「じゃあ、お菓子とお花を持っていく。どんなのがいいのかな?クッキーとお花は花屋に任せればいい?」

「お見舞い用とお申し付ければ、そのように用意してくださいます」

 メイドさんにお店を紹介してもらって、何から何までお任せでありがとうございます。お金を支払うだけで、お見舞いの品を持ってエルミニド辺境伯邸へ。

 先触れをしていたので、執事さんにシャローザの部屋に通された。

「おはようシャローザ」

「おはようございます、ランス様。足が痛いぐらいで、来られなくてもよろしかったのに」

「昨日は無理をさせてしまったから、筋肉痛ならすぐに帰るよ。一応医者には診てもらったの?」

「それは、ええと」

 いいにくそうだった。もしかしてだけど、診てもらえないのかな?呪い持ちは嫌がられるからな。

「少しだけわかるから、座ってみて」

 素直に寝床から体を起こして端のほうに座る。

「触るよ。ちょっと変な感じがすると思うけど、曲げたりするかもしれないから痛かったら教えてね」

 シャローザは光の魔力しか通せないから、治癒効果とか出ないよね?

 細く白い足に触るとヒャって声が聞こえたが、魔力を通しながら滞りがないか確認をしていく。少しの滞りは筋肉痛かな。大きな障害はないから、関節が痛んでいるってこともないか。

「足と足首までは大丈夫。膝上に手を置きたいから、少しあげてくれる?膝も調べたい」

「ひゃい」

 顔を真っ赤にして、ゆっくりとあげた。膝の上に手を置くと魔力を通して調べていく。多少滞り気味か、それほどではないけど、安静にさせておこう。

「それでは調べた結果を教えます。筋肉痛だけだよ」

「それはよかったです」

「膝が少し痛んでいるようだけど、安静にしておけば治る。なので、明日歩いて、違和感があったらもう1日安静か、出歩かないようにね。最近歩き回っているから、負担になっていたのかもね。無理はしないでよ。歩けなくなってしまっても、すぐには治せないからね」

「え?」

 シャローザがきょとん顔をしている。他の2人もきょとんとしている。

「どうしたの?」

「どうやって、え?歩けないのを治すのですか?高位のポーションでもなったときぐらいで、あとはエリクサーです。魔法で治すとしても、今代の聖人様でも傷を負ってすぐに腕をくっつけるぐらいで、古傷を治すようなことは出来ないはずです」

「そうなの?あの白と黒がついていて、そのような中途半端なことをすると思っているの?魔法は全属性が使えるといったよね。治癒も魔法だよ。神のどうたらとか、どうでもいいんだよ。必要なのは魔法の技術のみ」

「そうでした、いえ、どこまでも凄いのですね。私も負けないように頑張ります」

「ほどほどにね」

 なんか気合いの入っている彼女が可愛く思えて、なんともなくてよかった。昨日は無理をさせてしまったから反省だ。気をつけよう。

「今日は何をなさるのですか?」

「そうだね、ポーションでも作りに行くよ。することもないしね」

 そっと髪をなでて、目を合わせていってくると告げた。そのあとは薬師ギルドへと向かって行った。

 入り口付近で言い争うような声が聞こえた。中に入ると女性だと思うけど、甲冑を着ている。どこかの騎士かな?

「どうして売れないのだ?我らが庶民用のものを買うのがいけないというか!」

「そういうことではなく、今はお売り出来ないと申し上げております。商業ギルドより販売制限をかけられており、販売の順位を予約順にしておりますので、予約を飛ばしてすぐにとはいかないのです。どんな身分の方でありましても、平等に予約順にお売りしております。ですので、ご予約の後に順番が来ましたらお越しください」

「我らを愚弄するのか?貴族を優先して売れないとは一体どういうことだ?不敬罪に問うぞ!」

 激昂した女騎士の1人が剣を抜いて、悲鳴が上がる。さすがに薬師ギルドの人に迷惑がかかるのは困るかな。

「そこの騎士の人、どうしたの?人を斬るのはダメだよ、薬師ギルドとの問題になるのはわかるよね?」

「子どもは黙ってみていろ」

「所属はどこなの?貴族というなら名乗ってくれないと、わからないんだけど」

「我らは貴族街警備隊に所属するリビーとロッティだ。我らは警備隊に所属し、騎士爵を与えられている。わかったら黙っているんだ」

 赤髪のリビーがそういって、ロッティは茶色とも金髪の混じり合う不思議な髪色をしていた。

「エロイーズのところの人?」

「お前のような子どもがエロイーズ様を呼び捨てにするなど、ふざけるな」

 剣先は喉下に向けられている。

「今、エロイーズの家に泊めてもらってるんだ。身分的には平民だけど、貴族の当主扱いなんだって」

「それに該当する人物は国内に1人、ランスという冒険者だ。ドラゴンをも屈服させたという男とお前が一緒なはずがないだろう」

 ギルドカードを3枚提示する。ロッティが受け取り、確認すると手が震える。

「本物だ。本当のランスだ。ワイバーン討伐マークが冒険者ギルドカードに入っている。申し訳ございません。お顔を知らなかったもので、エロイーズ様とはご懇意にされていると、良く聞いております。白粉や日焼け止めを開発したと聞いたのですが」

「そうだよ」

 剣がしまわれると頭を下げられる。カードも返してもらった。

「どうして売ってもらえないのでしょうか?」

「ここだけの話なんだけど、僕の作ったクリスタルがあるんだけど、それを細工ギルドに販売禁止されたんだ。そのクリスタルなんだけど、実は白粉なんかの貴族用の容器でもあるんだ。貴族用が売れないようになっているから、販売制限をかけないといけないんだ。じゃあ、こっちの安くしている方も販売制限しないと、売ってる商業ギルドがどう思われる?貴族を蔑ろにしていると思われるよね?じゃあ、どっちも制限しないといけない。凄く売れてて売りたいんだけど、細工ギルドのせいで売れなくなっちゃったんだ。だから、ごめんね。本当は売ってあげたいんだけど、日焼け止めは制限がかかってたっけ?」

 不意に聞かれた薬師ギルドのお姉さんは首を振った。

「今は日焼け止めで、普段、外回りが多いなら日焼け止めを塗った方が焼けなくていいよ。エロイーズも肌が赤くならなくていいって、日焼け止めを塗ってたしね。白粉は時間がかかるだろうから、我慢してもらうしかないんだけど。どうかな?」

「う、うむ。そうですね。リビーはどう思いますか?エロイーズ様が普段そちらを使っているのなら、そちらにしようか」

「そうだな。ランス様に勧めてもらったのなら、買うしかないだろう」

「僕の問題で、迷惑をかけてごめんね。なるべく早く解決出来るようにするから」

 受付のお姉さんは日焼け止めと予約を受け付けて、無事になんとか帰って。

「ランス様、よかったら警備隊によられた際に、ご指導をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「スキルがないから、力押しとは無理だけど、それでいいなら」

「「お願いします」」

「う、うん。帰りによるから」

 やったーと嬉しそうに薬師ギルドから帰って行った。ため息をつくとギルド員用のお姉さんに調合室と薬草を注文して、ポーションを作り始める。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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