シャローザのお姉さん2
「お久しぶりです、ランス様。まずは妹と共に監視をしていたことに関して、お詫びいたします。申し訳ございません」
頭を下げるフィリーダを見て、ちゃんと謝れるならいいかな。
「うん、許す。だけど次はないからね。個人としては許すけど、家としては恥を知ってほしいと切にお願いしておくね」
後ろの騎士が剣に手をかける。
「騎士の人、抜いた瞬間に全部なくして、当主の謝罪を行わせるよ?前回は話し合いで解決しようと行っていたけど、そういう態度なら力でねじ伏せるようにしよう。謝罪の前に死んでいるかも死ねないけどね」
「すみません。家の者の教育が行き届いておりませんこと、重ねてお詫び申し上げます。お許しください」
フィリーダは頭を下げたままで決してあげようとはしなかった。
「何をしているのですか、貴方も頭を下げなさい」
騎士は渋々頭を下げた。
「ランス様」
「許すから、もう頭を上げてよ。せっかく食事をしようっていう話なのに、はい、これでおしまい。後ろの騎士、実力を見たいのならあとで相手してあげるよ。祝福前だけど、遠慮はいらない。サンデイヴみたいに不意打ちなんかしないよね?」
騎士は顔を引きつらせて頷いた。フィリーダは席に。料理が運ばれてくる。
「フィリーダお姉様、あの、申し訳ありません」
「謝る必要はありません。謝罪の機会を得られただけでもよかったです。感謝しています。サンデイヴとシルヴリンにも本当に困ったものです。負けず嫌いなところが悪いとはいいませんが、恩人に対しての行動が貴族として人として恩知らずなのです。当家の品格を疑われても決しておかしくありません。お食事をしてもらえるだけでも大変嬉しく思います」
「お姉様」
きっぱりと毅然とした態度でそう宣言する。この人って、最初からきちんと人と向き合っていると思う。無碍に扱ったりはしなかった。かといってやったことに対して、許したかという違うけど。
「お姉様は卒業したら嫁がれるのですよね?」
「ええ、侯爵家に行くことになりますね。それよりも、降嫁とはいえシャローザが婚約出来ることのほうが、私はとても嬉しいです。領地で一生を終えるのだろうと悲しく思っておりましたから。遠目にしか見えない妹は、死んだような雰囲気を纏わせていました。それがこんなに元気に明るくなって、とても喜んでいたのです」
「わ、私は家では厄介者でしたから。ランス様に救ってもらわなければ、こうして外に出ることもかなわなかったでしょう。この方しか生涯を共に出来る人はいません。色々されるので毎日が目新しいことでいっぱいです」
「仲良くしていていくのよ。それでずっと田舎暮らしの予定なの?あそこは不便だと思うんだけど。せめて、領主街ぐらいには引っ越さないの?」
こちらに目が向く。2人の話を聞いているだけでよかったのに。
「祝福まではあそこで暮らして、そのあとにファーレ国へ行くことになるかな。薬師としての修行と他の生産系の修行が出来ればと思ってるからね。魔道具とかも理論や作り方は教えてもらってるからね。スキルがないとどうしても難しいかな。大きくなるっていうか。そんな感じ」
「学校には行かせないのですか?」
「シャローザが望むなら、その国の学園に入れるようにするけど、教えるとかって無理だよ。人を雇って勉強してもらって、入るしかないかな」
「ファーレ王国の学園は生産系の勉強が強いはずですが、戦闘系ならこの国で学ぶことは出来ますか?」
この国で学ぶ?教師と国の人達とどっちが強いんだろう。
「教師と国の軍隊の人ってどっちが強い?僕が教えるってなるとまずいかもね。武術は師匠のように、教えることが向かなくなってるし、魔法もグリゴリイの著書を教えるぐらいしか出来ないしね」
「武術を教えるとはどういうことなのですか?」
「知らない?シルヴリンのソードスラッシュを打ち消したの。そこまで出来てもスキルが発生しないと思う?そこ騎士に聞いてみてよ、スキルなしで消せるか」
首だけで騎士の方へ向く。
「出来るの?」
「いえ、自分は出来ません。そういうことが出来ると噂では聞いたことがあります」
思案顔で見てくる。
「そうですね、それが出来るなら何らかのスキルが発生してもおかしくありませんね。魔法のグリゴリイとは大賢者グリゴリイでよろしかったですか?」
「そうそう」
「著書はどれも高度で、宮廷魔法師御用達のような内容のはずですが。それを修めているとおっしゃるのですか?」
「フィリーダは誓約してないよね?じゃあ、修めているといって間違いないよ」
目が開かれて息を吐き出す。
「魔法の適性があるのですが、どうしてもランス様の魔法には敵いそうにないのですが、それはグリゴリイの知識を持っているからなのですね」
「うーん、魔法を使うだけなら知識はいらないかな。知っていた方が色々便利だけど、使うだけなら自分の感覚と魔力の使い方でどうにでもなるはずだよ。うまく使えないなら魔力をうまく使えてないってことだから。例えるなら詠唱は川なんだよね、川に水が流れて川になる。詠唱っていう魔力を変換することで魔力がうまく流れて魔法になる。魔法がうまくいかないのは、魔力がうまく流れていなくて、涸れた川になってるって想像してもらうといいかな」
「どうしてうまく流れないのでしょうか?」
「それはわからないよ。人によって原因は違うだろうし、それを言ってわかるかっていうところもある。あとでその騎士と一緒に見てあげる」
隣を振り向くとなぜか俯いているシャローザがいる。
「シャローザ、どうしたの?」
「2人で楽しそうにされていると思いまして。仲がいいのはいいのですけど」
「じゃあ、白粉の話とかをシャローザが説明してあげてよ。食事が食べたいからさ」
パアッと目を輝かせながら、フィリーダに開発中のことを話している。楽しそうでよかった。話に入っていけなかったのが寂しかったのかな?たまにわからないことを質問したり、前の白粉が体に悪いことで僕に説得されたことなど一所懸命話していた。
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