シャローザのお姉さん1
「ランス様、お時間はありますでしょうか?お店の予約をしておりまして、お姉様だけをお呼びしております。お食事だけでもどうにか、お願いします」
「お姉様にいじめられてるの?ずっと誘ってくるけど」
「ランス様との外聞がよろしくないのです。エルミニド辺境伯は降嫁させるのに、一切の交流なし。そういわれております。ですが、ランス様が家のことを嫌っているのは承知しております。お姉様にはとても仲良くしていただいて、こちらに来てからすぐは王都をずっと案内して貰って。仲の良いお姉様とランス様が仲良くなっていただきたいのです」
「仲は良かったんだ。どうしようかな。前に盗聴とかされていたから、いいとは思わない。シャローザはそれで何かいいことあるの?」
少し考え込む。
「家族か仲がいいことが、いいことではないでしょうか?私は何かあったらフィリーダお姉様に相談しますし、教育のされていないことも教えていただいています。教育係とは別で、たくさんのことを学ばせていただいています。ですから、お姉様とは仲良くしていただきたいです」
「シャローザと仲がいいのなら、盗聴の件は本人からの謝罪で許して、食事をしようか。シャローザが嫌われても困る」
ふうと胸をなで下ろすシャローザ。そんなに行って欲しかったの?乗り気ではないけど、シャローザによくしてもらっている家族がいるのなら、先々で頼ることもあるだろうからシャローザのためにね。シャローザが仲がいいから、やったことを許して、許せないけど、シャローザのためにゆ、ゆる、許したことにする。
「どうしたんですか?睨みつけるようにして。お姉様も今の状況をなんとかしたくて、ランス様のことを知ろうとしているのです。私のために少し譲ってくれてもいいんじゃないですか?」
「だ、だから、食事をしようと言ってるよね?食事はどこでも出来るから行かなくてもいいんだよ。嬉しくて行くようなことでは、決してないんだしさ」
行かない選択肢もあるけど、シャローザの希望を聞いて受け入れているのに。気に入らないならいいけど。
「行くとおっしゃいましたので、ちゃんといってもらいます。でないとお姉様が悲しい顔をされますもの。必ずいってもらいます。すぐに準備をしますのでお待ちください。いつも断られているから、今日も断られると思っていましたのに」
じとっとした半目で見られている。ちょっとかわいい。いろんな表情があるよね。
「行ってもらえるのなら、嬉しいです。仲良くなるきっかけになればいいのですが」
「どうなるのかな?」
会話もほどほどに手配をしていた。動くのはハンナさんだけど。メイドさんも協力して連絡やらをしているっぽい。見ているだけではわからないけどね。
色々と終わって馬車に戻ってくるメイドさん達。馬車は進んで行くと何かのお店について止まる。ここって食事の出来るお店なんだよね?ガラス窓から服が見えるんだけど?
「ランス様、服装を見られる店しかご用意出来なかったので、ここで合う服を見繕いましょう。ここなら着られれば、お店に入れます。帰るとかは言いませんよね?」
「どうして服屋なのかって思っていただけだよ。説明してくれれば、帰らないよ」
「では早速中へどうぞ」
前に行った店はいろんな服が置いていて派手だったけど、ここは地味な感じの服に見える。それでも普通の服よりは金の刺繍が入っていたりして、飾りはついているんだよね。その中を駆け抜けながら、ずらりと並んだ服を見ていると少しすれたような、そんな感じのところも見える。
「ようこそいらっしゃいませ、本日はどのようなものをお探しでしょうか?」
「これから食事に行くのだけど、この方に合う服を見繕ってください」
「ドレスコードのあるお店に行かれるということでよろしいでしょうか?」
「ええ、急遽決まって、服は注文したばかりで届かない。それなりの着られるなら選ばせてほしいの」
「委細承知いたしました。では、サイズを測らせていただきます」
素早く測り終えると、こちらへと案内される。
「こちらに掛かっている服のここからここまでが合うでしょう。多少のずれはありますので、試着されながらお選びください」
また着せ替えさせられるのかな。疲れるし大変だから嫌いなのに。シャローザは厳しい目を向けながら、数着選んですぐに試着となった。
少し広い場所に移動してから、服を着たり脱いだり。今回は5着ぐらいで多くない。よかった。
着替えが済むとシャローザは1つ選んでそれをまた着る。精算を済ませるとそのまま馬車に乗って、別のところへ運ばれていく。
お店に入ると品のいい感じで、そんなに装飾品を前面に押し出していない。落ち着いているというのかな?カーペットの上を歩きながら、部屋に通されて着席する。
「お姉様はまだ到着されていないようですね。何かご用の最中でしたか?本日は何も予定はないと伺っていたのですが。準備のお時間がかかっているのでしょうか?」
「ご準備にお時間がかかっているご様子です。申し訳ございません」
「それなら仕方ありません。急なことでお姉様を慌てさせてしまったのでしょう」
大人しく席に着いている。高級なフカフカのイスの座り心地を確かめているので、モジモジしているように見えるかもしれない。ちょっとずつ移動して確かめてみたけど、どこも一緒かな。真ん中が1番フカフカかもぐらいだね。
「どうされたのですか?」
「イスのいいところを探してた」
「フフ。そうなんですか。座り心地が悪いのでしたら変えてもらいますよ?」
「いいところを探していただけだから変えなくていいよ」
部屋の中を見渡したりしていたらフィリーダがやって来た。恐る恐る、護衛の騎士と共に入ってくる。
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読んでくれてありがとうございます。
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