細工ギルドが

 ある日、商業ギルドに呼び出されて、容器が足りないのかなって思いながらギルド長室に通された。

「細工ギルドっていうのは、一体何を考えているのやら。自分の利権を守るのに必死で、新しい才能が認められもしないのかい。さすがに容認出来る内容じゃない。どうにかしな。各国本部を舐めすぎだよ。総本部はとりまとめ役であっても本部の認めたことを取り消すなんてことはしてはいけないんだ。なら、各国全てに総本部の人間が出向いていくのかい?特に今回は出向いてもらわないと納得出来ない内容だよ。これからは全ての取り引きが総本部の決済をもらわないと、取り引きも出来ないってことになるのはわかって言ってるんだろうね。それほどのことをしているんだ、これからはそうしてもらう。わかったら、取引書類に総本部の決済をもらってきな。総本部の決済印でね。わかったら、さっさと行きな!細工ギルドは、この国の商業ギルドでは総本部の決済でしか通さないよ!」

 声を荒らげ書類をこの前会った細工ギルドの人に渡して、追い出していた。ため息をついて、ギルド長は座り込んだ。疲れた顔をして僕を見つめる。

「すまないね、細工ギルドの総本部が認めないとさ。祝福前の子どもを総本部のあるファーレ王国まで、行かせるわけにはいかないよ。売れないってことじゃない。この国では売れるから、他国への販売が遅れそうってだけだ。うちの総本部にも話をしていて、なんとかしてくれるようにいっているところだ。本部が代理を認められないのなら、こっちも総本部の代理での取引決済を認めないって追い返したんだ。本部ってのは総本部から代理の権限を認められて、業務を行っているからね。うちは細工ギルドの最大の取引先だから、認めないと大事になるだろうけどね。知らないよ。こっちを蔑ろにしたのは向こうなんだからね。うちも総本部に決済を取らせるさ。それだけの時間はかけさせないとね」

「ダメだったんだ。ファーレ国まで行くのはちょっと無理かな」

「当たり前だよ。これはギルド同士の戦争なんだ。負けるわけにはいかないね。細工ギルドにはそれ相応の報いを受けてもらうから、大船に乗ったつもりでいな。こっちはランスの作ってくれた、化粧品の販売権を握っているんだからね。各国の販売を一時的に絞る。細工ギルドのせいで、販売が遅れているってことにしてね。ただじゃ済ませないよ」

 背中に赤黒い炎が見えた気がした。笑い方が邪悪な感じがするのは気のせいじゃないよね。

「この国も販売を絞るよ、薬師ギルドにも所属の子が無下に扱われているんだから協力要請。くくく、2つのギルドを敵に回して、どうするかな?楽しみだよ」

 細工ギルドって大丈夫なのかな。

「むこうはむこうの意見を通すんだ。こっちも主張してやらないとね」

「もしもの時はランス、行ってもらうことになるかもしれない。お嬢ちゃんも一緒に行けるように手配はする」

「一緒に行けるならいいか」

「ただ、貴族だからね。ご当主様の判断がいるかもしれないから、確認だけはしっかり取っておいたほうがいい。国家間問題になりかねないからねえ。本人がギルド員なら問題はないんだが。しかたない部分だよ」

 その時は許可を取るとシャローザは答えていた。それならいいんだけど。他の国まで行くのは大変なんだけどね。ファイアドラゴン国への移動も乗り継ぎ乗り継ぎで早く着いた。シャローザも行くとなると、時間がかかる方法になるかな。それでもいいか。

「生産を軌道に乗せるまでのいいわけを細工ギルドのせいに出来るからね。薬師も人の確保に動いているみたいだが、その時間稼ぎぐらいにはなるだろうさ」

「作るのに慣れる時間も必要だから、よかったのかな。作り方の体制が整うまではいいのかもしれないね。大変そうだったし」

 受付のお姉さんも殺気立っているって言ってたしね。作るのが大変なのかもしれない。そんなに難しくないと思っていたんだけどな。初めて作るのならきついかもしれないけど。

「ランスの白粉や美容液なんかは各国の商業ギルドで、薬師ギルドへの生産依頼という形にして広げているところだよ。貴族にも行き渡らない量の生産しかしない。いいものだとしても、細工ギルドのせいで生産を絞っているとわかってみたら、各国本部からも問い合わせの凄いことになるねえ。向こうが許可さえ出してくれれば、生産制限の解除はすると各商業ギルドへ通達しておくから安心して待っているといいさ。状況が変わったら知らせを送ろう」

「生産制限か、薬師ギルドはどうするのかな?協力してくれるといいけど」

「委託生産で生産量の調整も出来ないようなら、他に依頼するだけだよ。するしないじゃない、しないといけないんだ。それに重要な材料の仕入れはこっちが握っているんだよ。無理矢理薬師ギルドが作ろうものなら、権利侵害でギルド間交渉の大事だよ。よほどのバカでもしないね」

「それなら安心かな」

 変におかしいことになることはなさそうでよかった。緊急で書類を仕上げるというので、商業ギルドから引き上げることになった。作るまではよかったけど、作ってからのほうが大変だ。細工ギルドが認めないのが悪いから、さっさと認めてくれればいいのにな。

「凄く大変なことになっていますね。よろしいのですか?」

「収入はあるだけいいけど、販売できないのは一番困るからどうにかしたいかな。こっちが悪いわけじゃないから、みんなどうにかしようとしてくれているんだと思うんだ。誰かが作った物を僕が僕の名前で販売しているのなら、こうはならなかったよ。だけど、ギザギザクリスタルは正真正銘、僕の作った物なんだから、認められないのはおかしい」

「目の前で作っていただいたときは、どうしてこんなことができるのかとびっくりしたものです。同時に凄い人なんだなということは、すぐにわかりました」

「すごいのかな?こんな風に使う人がいなかっただけじゃない?それに生活魔法のレベルを上げる人がいないから、出来ることも限られてくる。生活が便利になればいい程度の扱いだしね」

「それでもそこまであげられたのは、ランス様の努力があってこそだと思います。私もそれで助けられていますからランス様は凄いのですよ」

 そうなのかなと思いつつ、やれることをするだけってことは変わらない。もっと努力をして、もっとスキルを上げたいな。今は生活魔法しか使えないからこれしか出来ない。生産系は鍛冶とかどうしても教えてくれる人がいなかったから学ぶ時間がなかった。薬師の総本部のファーレ国には生産系の総本部が多くあるので、祝福を受けたら結婚して一緒に行こう。修行して、そのあとはシャローザと考えよう。

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