シャローザとポーション作り

 いつになったら書類が出来上がるのだろうか?本来はもっとかかるらしいから仕方ないのかもしれないけど。今日は商業ギルドへ行こうかな。状況を聞いておきたい。

 シャローザが来てから状況を聞きたい旨の連絡をすると、いつでもいいって返事が来たので一緒に行くことになった。

「売り上げは良いように聞いていますけど、何か気になることでもあるのですか?」

「それを聞きに行くんだよ。直接聞きに行くのは、うまくいっていないことがないとは思うけど、僕しか作れない容器などが切れていないかとか、もっと作ったほうがいいかも聞きたかったからね」

「そういうことでしたか。売り切れ続出で広がり方が凄いらしいですけど」

「売れているらしいから、容器の在庫とか大丈夫かなって思うんだ」

 馬車は商業ギルドまで走り出していて、町並みが田舎ではない王都なんだと理解する。忙しくなくなったら、薬師ギルドでローポーションでも作ろうかな。

「ランス様は凄すぎて、私なんかで釣り合うのでしょうか?塔に閉じ込められていた呪われただけの人間なのに。呪われた人の末路は人生半ばで死ぬ運命すら変えていただいたというのに」

「釣り合うとかはわからないけど、お嫁さんになってくれる人に色々するのは悪いことじゃないなら、それでいいでしょ」

 もじもじとしている。

「ですけど、ですけど」

「一緒にいてくれればいい。それが僕の望み。誰が何というとしても、それが出来ないと嫌だからね」

「はい。必ず、一緒にいます」

 商業ギルドに着いて、中に入りギルド長室に通される。座って書類がある程度片付くのを待つ。

「待たせたね、現状確認でいいのかい?」

「うん、容器の在庫や作るのが間に合っているかとかだけど」

「売り上げは順調だよ。容器は貴族用のは補給出来るならしておきたいね。薬師ギルドのほうはなんとか間に合っているから、そっちは心配いらない。生産がどうしても追いつかなくてね、ある程度行き渡ったら落ち着くとは思っている。貴族用から優先して販売を行っているが、耳の早い地方の貴族からも注文が入っていてね、貴族用の容器を輸送するほうが大変だね。心配事は他の国に広まったときだね。この国の貴族用の容器を輸送するのも大変だから、細工ギルドに見せて容器の開発をさせているところさ」

「生産のほうが間に合ってないんだ」

 ギルド長はとても深いため息をついた。

「それどころじゃなくてね、今の納品すら間に合ってないのが問題だね。注文順に販売しているが、1人1セットで制限しているのに間に合わない。始まったばかりだから、これからだろうね」

「なるほどね。容器を作って、薬師ギルドの様子でも見てこよう」

 倉庫に連れて行かれて、容器を山ほど作っておいた。職員の人は丁寧に箱詰めしていたけどね。薬師ギルドに移動して、職員の人数が少なく感じる。ギルド員の受付へ向かう。

「ポーション作ろうと思うんだけど。材料と場所はある?」

「ランス君、あるわ。ただ、中は殺気立ってるかもしれないから出入りは注意してね」

「うん?」

 よくわからないけど、材料を注文して中の調合室に入っていく。倉庫のほうで何かを作っている人達が、ひたすらに何かしていた。こちらをぎろりと見る人達もいた。ひたすら作らされているのか。

 渡された調合室に入って、薬草が届くのを待つようにする。シャローザは物珍しそうに薬師の使う道具を眺めていた。

「シャローザ、熱くなるから覚悟していてね。熱かったら外に出て涼むんだよ?」

 入り口付近に氷の塊を作り出しておくか。

「これで涼めばいいのですね」

「部屋全体が熱くなるから、ちゃんと外に出たほうがいいよ」

 薬草が届くと早速作業に取りかかる。少し離れて作業の様子を眺めている。一緒にいるならイヤというほど見ることになるはずだけど、目を輝かせてみているのを邪魔する気はない。こちらも集中をして、作業を開始する。

 容器に水と薬草、それを火にかけて煮だしていく。様子を見ながらすすめていく。今回は量がないので時間が少なくてすむ、だけど部屋の中は熱くなっている。 氷の近くで涼んでいる様子だから、大丈夫かな?

 粗熱を取るついでに少し休憩を挟む。ゆっくりと温度を下げて、抽出を完了させる。濾し取ってから、混ぜて瓶に入れる。これで出来たかな。

 いつもより納品量は少ないけど、しかたないね。いつも通りに自分用のポーションを確保して、納品を済ませる。

「全部売らないのですか?」

「全部売ってもいいけど、自分で使いそうな分は持っておきたいんだ。ケガをしてもすぐに治せるほうがいいしね。狩りや冒険者だとポーションはいるよ。他の人に使うこともあるから」

「ランス様でしたら、もっと高位のポーションをお持ちになっても、いいのではないですか?」

「そこまでの戦いになるなら、ねえ。助けが来そうな気がするんだよね。それまでになる相手なら」

 倉庫には基材を作っている人達が見える。ひたすら同じ作業をしていた。頑張ってほしい。すでに生産が追いついていないように見える。本日は普通にポーションを作りに来ただけなので、手伝いはしない。

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読んでくれてありがとうございます。

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