剣とか練習する

 腕を取られると服屋に移動。

「飾り気は最小限で。服は余裕を持って作ってください。成長されても少々の間使えるように。あとはそうですわね」

 服の生地から仕立て方、僕にはわからないがシャローザの好みになるようにしっかりと注文を入れていった。採寸だけで後はお任せの自分。細かいことはこだわりないし、お任せでいいや。最終確認を店主としているとお会計では僕が呼ばれて、届け先に薬師ギルドを指名しておいた。F級薬師のランスに渡してもらうように頼んでもらう。本部かサルエン男爵領のどちらかに送ってくれるか、とりあえず預かってもらえればいい。時間もかかるらしいから、こっちにはいないだろう。来ることがあるときに受け取りやすいところにあるといいかなって。

 必要なものは手に入れたかなと思って、いるものが出てきたら街によった時、注文すればいい。すぐに買えるならそのまま買えばいいんだけど。距離が問題になるかも。なんとかなるかな。

「いい買い物でした。本当に。ランス様の服を注文するのは私の役目ですね。これは誰にも譲れません。もっと違うものも頼んでもよかったかも知れませんが、次は変えていきましょう」

「服のことはわからないからシャローザに任せるよ。細かいことまではわからない。採寸して、服屋に任せてもいいと思っているしね」

「それなら、お任せください。普段の服も増やされてもよいのですが、明日はランス様の普段の服を選びましょう」

「そ、そうだね」

 キラキラした目でこっちを見ないで。イヤって言えないじゃないか。そう思いながら馬車に揺られていた。

 シャローザと別れて練習場に直行する。誰もいない練習場でさっきと同じく、剣を振りながら生活魔法を浮かべて素振りを行う。体がなまっている気がする。打ち込みや型のようなことをしていく。魔法の加速などは使わずに振り続ける。スキルが使えるようになったら、ダンジョンで練習するつもりだけど、今は使えないときの動きを練習するんだ。


「珍しい。ここに来てほとんど練習をしていなかったのに。その四属性魔法はどういう意味があるんだ?」

 仕事が終わったのか、軽装のエロイーズがやって来た。

「ランス様夕食の時間です」

 起こされて今日のことを思い出す。疲れて寝ていたようだ。そのまま夕食を食べてから腹ごしらえがてら、みんなが練習しているのに混じって素振りを行う。

 僕よりも小さい子も混じっているようだ。そんなのは関係ないから、とりあえず端っこの方で木刀を触れればいい。人が多いので魔法の練習はやめておこう。

「お兄ちゃん誰?」

「この家でお世話になってる、ランスっていう冒険者だよ」

「冒険者なの?どんなところに冒険に行ったの?凄く強いの?どんな技が使えるの?」

「まだ祝福前だからスキルは使えないんだ」

 明らかにがっかりして去って行った。そんなにがっかりしなくてもいいのに。

 黙々と素振りをやっていると、エロイーズがやって来たらしく騒がしくなる。

「エロイーズ様だ」

 そんな声につられて行く人。塊が出来てエロイーズが訓練を始めたようだ。寝て元気なので、素振りをひたすらやっている。集中をして、振り方、剣の持ち方、体の使いかた、そういったものをひたすら確認しながら素振りを行う。何か視線を感じてそっちを見ると、さっきの子どもがじっと見ていた。

「どうした?練習しないの?」

「なんか、キレイだなって見てた。ランス、どうやったらそんなにキレイに振れるの?」

「練習あるのみ。どうやったら素早く最短で振れるのか、それだけを考えているかな。切先がぶれてないとか、確認するようにね」

「へー。エロイーズ様とどっちが強いの?」

 嬉しそうに聞いてくる。

「力で負けるんだよね。エロイーズはいいスキルを持ってるよ」

「負けるんだ。冒険者ってたいしたことないね」

「祝福前ならそんなものだよ。君が勝てばいい」

「無理だよ、祝福前は戦闘系の祝福を持っている人に勝てないのは当たり前だよ」

 力なく笑って返す。勝てないならどうするべきかを考えないと、練習するならそれでも構わないと思うけど。練習場が一瞬ざわつく。

「マクガヴァン先生だ。ご指導いただけるかもしれない」

「先生、お疲れ様です」

 そちらに群がるように練習場の人達は集まっていた。エロイーズと何か話している。おじいちゃんと目が合った。

「1本どうだ、ランス」

「普通のでいいなら」

 練習場の中央に立ち会うための広場が出来る。人の壁が出来ている中で、木刀を向かい合わせた。

「合図はいらんな」

「うん」

 振り上げるときに少し左に切先が向く。ほんのわずかな癖は直っていないようだ。真っ直ぐに振ると剣で受ける。あとから出して、受けにまわられるのはいけないな。

「フンッ」

 しばらく打ち合って、癖の出るとこをつつく。といってもおじいちゃんもスキル持ちなので、力で負けて剣がはたかれる。

「終わり」

「それでどうじゃった」

「癖が直ってないよ。初撃、受けにまわっていたでしょ?僕の最短と癖で剣がぶれるから受けにまわる。剣の振りがスキルでなんとかなっているからそうなる。でもそれでいいんじゃない?指導者なんでしょう?なら、レベルが上がらないほうがいい」

「そうか、僅かな違いで受けに回っていたのか。上を見ればキリがないのう」

 木刀を拾うとエロイーズが手を肩にかける。振り向くとニコリと笑いかけられた。

「私ともやるよな?」

 肩に置かれた手が食い込んで痛い。

「わかったから、手をどけて。痛い」

 手をどけるとお互いが剣を構えて向き合う。お互いが静止した瞬間、エロイーズは突進してくる。それをいなしながら、体で押してなんとか負傷しないようにする。スキルありだと勘違いしているのだろうか?反転して片手で木刀を軽々振り回して、やる気になっている。

 数合打ち合いながらどうにかしたい気持ちがあるけど、つばぜり合いはしたくない。技術だけではバカ力に対抗できないんだよね。流せる力の限界を超えている。しばらく打ち合うが、剣を弾き飛ばされて終了。

 なぜか全員が押し黙っている。飛んだ剣を拾い上げると、素振りに戻っていく。しっかりと剣を振っていく。最短で振り抜くようにしている。非力なら、先に剣を届かせる必要がある。


 人がいなくなって、最後になる。メイドさんが帰ろうとしないので、しかたなく引き上げる。疲れてベットの上に寝転がった。

-------------------

読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る