一緒に暮らす準備3
「剣を振ってても一定の力を保って扱えるように浮かべているんだよ。魔法を流れで放つより、魔力を一定で浮かべているほうが難しいんだ。流れで放つときは魔力の乱れがわかりづらくなってしまうから、魔力の乱れなく保つことで、常に一定の魔力を把握するのと魔法が乱れないようにするための練習だね。乱れすぎると魔法にならないから。詠唱は直してくれるからそんなに気にしなくてもいい」
「それでどういう風の吹き回しだ?魔法の練習しかしてこなかったのにな」
「ここは弓の練習が出来ないから、剣でもいいかなって」
剣がそんなに速いわけはないし、動きを確認するように動いているだけだ。
「弓まで得意なのか?」
「弓まで得意というか、弓が得意だと狩りがしやすい。近距離で動きや速度、力でこられたら負けるかもしれないからなるべく遠距離で仕留めたいからね。魔力に敏感な個体もいるらしいから何も使わない方が気づかれにくい。鈍感なのは強い魔獣だよ」
「狩りは部下に任せるからわからない。それより、日焼け止めも白粉の方も使い始めてから肌の調子がいい。肌が赤くなることもなくて、楽に過ごせる。いいものだ。注文でいっぱいじゃないのか?入手困難と貴族のご婦人方が漏らしていたぞ」
「そういわれても、商業ギルドと薬師ギルドの共同で品質の管理もあるから作る配合や仕方を作成して、大量に作るんじゃないのかな。材料の確保もしないといけない。一気に作れるようになるのはもうちょっと先になると思うけどね。貴族用の入れ物は今のところ僕しか作れない。作れるのは作れるけど、村に戻ったら簡単には来られないのにね」
生産が追いついていないようだといっておこうと満足したように戻っていった。うまくいっているようで、いきなり人気になってしまったので作るのが間に合っていない。この辺はギルドにお任せしておこう。薬師ギルドでの作成もまだまだだろうし、人手も足りていないはずだ。手伝ったらお金もらえるかな?
シャローザとのお買い物が終わっていないから、出来ないんだけどね。どこかに出て弓の練習をしたいかな。練習したい。
約束どおりに服屋に来て、何着か選んでもらう。
「なるべく汚れても良くて、丈夫な服がいい。森の中を探索して、狩りをすると血で汚したりするからね。あと派手な色じゃなくて、落ち着いた色にしてくれないと森の中では使いづらい。家にいるときならいいかも知れないけど、調合とかをしているかもしれないね。いつでも汚していい服がいいかな」
「わかりました、それがランス様の要望なのですね」
「うん」
「それでしたら、淡い色の服がいいかもしれません。こちらの庶民の服になってしまうのでしょうか。生地も厚め、丈夫そうです。色もやや白みがかった素材の色に近いです。多少染めていても貴族の服ほど色がハッキリしていませんので、森へ行く際によろしいのではないでしょうか」
これならというのが並んでいる。ほとんど同じだけどね。多少色の違いがあるぐらいで、ほぼ一緒である。問題なく着られるので十分だった。
「大きさは、ほとんどが大人用ですから大きくなってしまいますね。そうですね、こっちに小さめのがありますよ」
連れて行かれるとあてがわれていく。服の大きさを確かめながら、数着選ばれた。
「こちらでよろしいです。次の店に行きましょう」
支払いを終わらせるとすぐに、次のお店に連れて行かれた。なんだろう、目に痛い輝かしい衣装が飾ってある。黄金にまばゆく、襟、袖。思わず顔をしかめてしまう。
「いらっしゃいませ。どのような服をお求めでございましょうか?」
「なるべく地味な、しっかりとした服はありますか。この方に着せる服です」
「失礼、確認なのですが、男性用女性用どちらでしょうか?」
「男性です」
かしこまりましたと店の中へと入っていく。いろいろな色の服が置いてあって、様々な意匠や装飾を凝らしていた。何がいいのかはわからないけど。
少し開けた場所に案内される。イスに座らされそこで待つように言われて、シャローザと店員は服の並びに行ってしまった。店の中や見える範囲の服は、表に比べると大人しい。目には優しくなっている。
出されたお茶を飲んでくつろいでいる。いつ終わるかなと2杯目のお茶が注がれてゆっくり口をつける。
「シャローザって買い物が長いのかな?」
「シャローザ様だけではございません、エロイーズ様も奥様も服選びに1、2時間は使います。気に入らなければ次の店で同じように使われますので、それだけで丸1日かかることもございます」
「そんなに何にこだわっているのかな?使えればいいと思っているからかも」
「そうでございますね、ランス様のためを思って使っていただける、よりよいものを探されているのでしょう。奥様になられるのであれば、待つのも勤めというものでございます」
一緒にいるのも大変なことなんだな。初めてそう感じた。こんなに時間のかかるのなら、商業ギルドでギザギザクリスタルや白粉や美容液の瓶を作るのが最良だと思ってしまう。服なんて、着られてぼろくなったら買い換えればいいかなって思っているからね。
「何杯目だっけ?」
「6杯目です」
長いね。
やっと店員が両手にいっぱい服を持って、帰ってきた。そんなに、いや、派手なのも混じってるぞ???そんなのはいらないんだけど。
「ランス様お待たせしたました」
満面の笑みで帰ってきたので、待ったかいはあったのかな。
「この中から選びたいと思いますので、試着をお願いします」
試着?こんなにたくさんの服を?店員も3人ほど両手で服を持っていて、机の上に置き始めた。こんなに?
「お気に召しませんでしたか?これだけあればどれか気に入ると思います」
「えっと、シャローザのおすすめの服から着たいんだけど、どれかな?」
シャローザが選んでくれたのなら、それを気に入ったといえば終わりになると思うんだ。下着1枚になって、選んでもらった服を着せられる。何枚か重ねるんだ。
「少々、想像していたお姿と違いますね。何が違うのでしょうか?」
「前、辺境伯で着たときは髪型も変えられていたけど、そういうの?普段はしないからさ」
「そういうのを含めると、選択肢が増えますわ。普段、休日のとき着ていただきたいので、髪型はそのままでお願いします」
違うのか。想像が違うんじゃないのかな?
「こちらと交換していただいて」
着ていた服を剥がされると別の服と合わせられる。店員は慣れた様子で着替えを実行していく。なので、大人しくなすがままに着替えさせられていた方がいい。自分で着替えるよりも早い気がする。
「さっきよりよくなりました。色合いの問題でしょうか、ランス様は全体的に白いですし、さし色を濃いめにしたら似合うかも知れませんね。いつも淡い色なので、気にしておりませんでした」
次の服を着せられる。着せられていると頷いているシャローザ。決まったかな?服の襟元や袖を整える途中に顔が曇った。
「何か違いますね。なんでしょう」
「わかる人はいないの?服のことはわからないから、シャローザに任せたいんだけど」
「お任せください、わかっています。似合うものを確実に選んで見せます」
何かイヤな予感がしてしまった。
そこから何度も着替えを行い。着替えて着替えて、くたくたになったときに3候補まで絞れた。ここから絞り込もうとしたので、店員さんにこの3つをくださいと宣言してお会計をした。
「服選びって大変なんだね、凄いよシャローザ」
「当然です、ランス様の服を選ぶのに妥協などいたしません」
ある程度で切り上げてくれると嬉しかったな。ヘトヘトになったので、馬車に乗り込み言葉も出てこない。うなだれて揺られていく。本当に疲れた。
修練とは違う疲れに慣れなくて、ベットの上に突っ伏して動けない。力なくベットに転がっておく。枕に顔を埋めて目を閉じる。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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