一緒に暮らす準備1

 ランス様と一緒にすごせる日々が増えて、呪いの痛みも一緒にいれば感じることもない。出かけることも1人で歩き回ることも出来る。

「シャローザ様お手紙が届いております」

 手紙をくれるなら家族か、ランス様?でも、ランス様なら伝言か直接来るような気がします。手紙の封筒がやけに高級そう。手に取って裏の封蝋を確認すると王家の家紋が。

「これはどこから?本当に私宛なの?」

「はい、使いの者に呼び出され、シャローザ様にお渡しするよう仰せつかりました」

「これは本物なの?」

「本物です。執事長にも確認を行いました。使いの者にも王家の印の入った指輪を見せてもらい、確認しております」

 王族の誰からの手紙であることは間違いない。手紙を送ってくる理由に心当たりが全くない。一体なんでしょうか?

 ペーパーナイフを走らせると中の手紙を取り出す。書かれていた内容を確認するとめまいがした。まさか、まさか私が目をつけられるなんて。呪いのことを知っているの?知っているなら珍しさからからかっているだけだと思うけど、知らないなら本当にどうしようもない人だ。

「ブレイブ王子・・・・・・」

「勇者王子からですか?一体」

「確認して、執事長も呼んできて。私には判断出来ない」

 ハンナが手紙の内容を確認し、執事長を呼び出した。

「どうされましたでしょうか、シャローザお嬢様」

「相談なのだけど、この手紙を断るにはどうしたらいいかしら?」

「拝見いたします」

 手紙を受け取る前に口元が少しゆがんだ。手に取って読むうちにふるふると震えていた。

「これはどうしましょう。婚姻が決まっているので、お受け出来ないというのがもっともらしい答えかと。お断りの文面はお誘いの感謝とそれを断らなければならない理由と心苦しい感じを出していただければ、よろしいのではないでしょうか。以降、お誘いがありましたら、その都度文面を考えましょう。辺境伯様にご相談は確実にされたほうがよろしいかと思います。連絡と受け取った手紙の内容は私が先にお送りしておきます」

「そう。わかったわ。お願いね」

 便せんを用意して手紙をしたためる。ハンナと一緒に考えて執事長にも確認してもらった。悩んだことを演出するために、数日おいて手紙を出す。執事長が悩んでいる。お父様へ手紙の内容は伝わっているのですから、何らかの返事はあると思うのです。




 改良中にシャローザに不信な手紙が届いた。差出人はさる高貴なお方ということで、食事のお誘いを受けたらしい。さる高貴な方ならシャローザのことを知らないはずがない。しかし、からかわれているとはいえ、きちんと返事はしないといけない。決まったお相手がいるのでお断りしたそうだ。そんなことを聞かされて、王都のお店を巡っていた。

「寝具に服にええと、家具」

「ランス様、よろしいのでしょうか?高額になると思うのです」

「いるんだから買わないと。魔石を使ったコンロなんかもいるかな?」

「収入があるとは言え、そんなに使ってよろしいのですか?」

「生活に必要なものなんだからいるでしょう。買えるんだから買えばいいんだよ。宝石とか髪飾りとかの高級品だったら無理っていうけど、暮らすために必要なものを揃えるのに、なかったら困るよ?うちの村じゃ買えないから、何ヶ月かは我慢することになるよ。いるものを買うのはおかしいこと?」

 来たばかりのお金のない頃だったらそうかもしれないけど、今はある程度の収入を得られることになっている。なので、最初の大きな買い物さえ出来れば十分にやっていけると思っている。白粉とかクリスタル。ローポーションも作れば収入としてある。大貴族のような暮らしは無理でも、食べて行くに困らない程度の稼ぎはある。

「何かあったときに困りませんか?」

「何かって?ケガ病気は心配しなくていいし、穀物ぐらい、大麦小麦ぐらいは村に売ってる。食べ物は心配したほうがいいね。肉は僕が取ってくるから、塩とかかな。領主街に出ることも度々あるから、その時に買っておくよ。他に何か心配?」

「獣に襲われたりとかは」

「あーあるかも。魔獣が村まで来ることはほとんどないけど。家もそれなりに丈夫だから、隠れればいいかな」

「心配はつきません。ランス様がいないときはどうすれば、領主街までは時間がかかるのでしょう」

 ずっと一緒にいられるはずだけど、仕事で離れることもあるか。

「何か連絡手段があればいいのかな?逃げる手段?」

「連絡しても逃げられないのでは、意味がありません。逃げられるのがよいです。領主街まで行ければ、連絡も守ってもらうことも出来るはずです」

 逃げられるといえば馬になるのかな?生活魔法で何か出来そうじゃない。

「逃げるなら何がいいの?」

「最速は飛竜ですが、登録には国の許可がいります。現実的には馬になります。魔物種の馬もいますが気性が荒くて、強靱な騎士団兵でも扱えるのは一握りです。扱える気が全くしません」

「そうなんだ。そんなにしょげなくてもいい。馬が扱えるだけでも十分だと思うよ。次は馬を見に行こうか」


 その前に買いそろえないといけない物があるので、今日行く時間は取れなかった。帰りに詳しそうな商業ギルドでどこの馬屋がいいか聞くと、入り口に1番近いホイットマン馬屋がいいと紹介状までくれた。受付のお姉さんは今までよりもさらに丁寧に対応してくれる。ありがたいけど、なんでなんだろう?

 エロイーズに会うと日焼け止めの話になった。

「日焼け止めで日焼けが痛くなくなって、肌も赤くならずにすむからいいな。ただ落ちにくいのが、落ちにくいからいいのもわかってはいるんだ。どうにかならないのかと思って」

「専用の洗浄液が出ているはずだけど」

「そうなんだが、実は高くてあんまりたくさんは買えないんだ。芸術性の高い容器に入っていて、相応の金額だとは思うのだが、もう少しどうにかなると他の女性騎士にも勧めやすい」

「容器が気にならないなら、薬師ギルドが庶民向けの容器で販売しているから行ってみたら?容器が高いのは知っているし、今のところ僕しか作れないからよけい高くしているって。肌にいい成分が選べないのが難点かもしれないけど、白粉や日焼け止めも売ってるしね。よく使うならそっちでもいいと思うよ。薬師ギルドでの取り扱いはどこでも手に入れやすくするためだから。商業ギルドは貴族向けだから高いのはしょうがないよ。遠征とかで薬師ギルドがあれば買えると思えばいいでしょ」

 深く頷いている。

「なるほど、実用性を求めるなら薬師ギルドで購入するべきか。商業ギルドにしか扱いがないのかと思っていた」

「薬師ギルドの人や商業ギルドの人も薬師ギルドでの購入みたいだよ。貴族の人達みたいに、お金持ちってわけじゃないから。手頃でもないけど、白粉だけでも買うって人もいるしね」

「そうだったのか。それなら薬師ギルドで買うのもいいかもしれない。誰かいるか?」

 薬師ギルドへのお使いを頼んでいた。まだ開いているのかな?

「そうだ、シャローザが何かあったときに馬に乗りたいっていうから、どこかいい馬屋はある?」

「馬屋か。魔馬ならパーシング馬屋なんだが、シャローザ嬢となると普通の馬屋か。普通のでというならホイットマン馬屋になるか。魔馬の大人しいのなら乗れなくもないか?ホイットマン馬屋がいいだろうな。合うのを見繕ってくれるはずだ」

「ホイットマン馬屋ね、行ってみるよ」

 帰ったら馬を飼う場所を作らないといけないかな。むむ、家具を置けるように家も作らないといけないのに。家を作るのって大変なんだけど。それでも一緒にいてくれるのなら、頑張るしかないね。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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