白粉の代わりを作る1
「ランス様、おケガをされたのですか?」
「夜目での戦いが久しぶりで距離感を間違えた。帰ってポーションでもかけておけば十分治る。帰るけど、メイドさんは大丈夫なの?」
「途中で無理だと判断して森の外にいましたので、恐ろしい声が響いていましたが襲われなかったのですか?」
「たぶん、それ倒した」
おかしい。今まではちゃんと出来ていたのに。封印が解けかけてる?でも、グリじいと一緒にみんなで魔方陣は考えたし、ちゃんと出来ているのは確認した。この程度で不安定になるような作りじゃない。原因がわからない。
でもスッキリしたのでいいかと思って王都に戻っていく。
傷はポーションを振りかけて治し、汚かったので水やクリーンを使ってキレイにした。ベットの中に入って寝て起きるとシャローザが座っていた。あれ?気のせいか、おやすみなさい。
「ランス様?」
「おやすみ」
「起きられたのなら」
「寝たりないから、もう少し寝るね」
まだ疲れが取れていなかった。覚めきってない眠気を呼び覚ますように、布団の中に潜り込んだ。シャローザは布団を持ち上げて、そっと手を握り込んだ。布団から顔を出すと涙を浮かべながら不安そうな目と視線が合う。
「すみませんでした。マナー違反程度だと思っていたのに、してはいけないことをしてしまいました。許していただけるかはわかりませんが、反省しております。このようなことは2度としませんので、許して欲しいです。知らない、知らずに、知らないのが悪いのです」
あふれそうな涙がこぼれ落ちた。
「ランス様を裏切ることをしてしまいました。助けていただいて、外にも出られるようにもなったのに。許されるのなら罰してください」
泣いているシャローザを見ると、どうしても心が揺らぐ。
「今回は許す、次はないからね」
許してしまってよかったかな?もうしないというのを信じて許そう。涙のシャローザを見ると、なんとかしてあげなくちゃと思っちゃった。でも、次は許さないよ。
目が覚めたのでシャローザの頭をなでる。自分でもどうしてこんなことをしたのか。母さんになでてもらったのが、安心したからかな。シャローザは耳を赤くしてなでられている。いやがらないな。そのままなで続ける。
「へへへ、へへへ」
なんか壊れたように笑っている。嬉しそうなんだけど、不気味な感じもする。笑っているだけなら、悪いことじゃないからそのままにしておこう。部屋のイスに座って、出されたお茶を飲んでゆっくりする。あの時、はりきりすぎたかな。疲れが抜けない。メイドさんに朝食を頼む。
「シャローザは食べてきたの?」
「お嬢様、ランス様がお呼びになっておりますよ。お嬢様」
2人に声をかけられて、やっと何か言われているのに気がついてこちらを向いた。
「何かおっしゃいました?」
「朝は食べたのかなって。聞いただけだよ。反応していないから、どうしたの?」
「えっと、なでてもらったのがうれしくて、浮かれてしまいました。朝食は食べてきました。はい」
「朝食を食べたら、用事について聞いてみようと思って」
用事?と首をかしげていたけど、朝食を食べ終わるとメイドさんにエロイーズの居場所を聞くと仕事に行ったとのこと。
「エロイーズから白い粉について何か聞いていない?」
「白い粉?ですか?伺っております。専任の者に確認をして来ます。ご用事の際は誰かメイドに声をかけてください」
白い粉という言葉で眉間にしわを寄せるが、エロイーズへの確認に行ってくれた。
「白い粉とは、何なのでしょうか?最高級の麦粉のことですか?」
「違うよ。毒の入った白粉のかわりになるものを作るための材料。顔に塗るものだから、毒の入っていないのがいいと思ってね。作るにしても材料を探してきて、組み合わせたりしないといけないから時間はかかるよ。白い粉って、どんな種類があるのかな?何があるのかわからないけど、ある粉は全部調べてみないとね」
「白粉のかわりを作られるのですか?ずっと使えないままだとどうしようかと思いましたが、それでしたら安心です。なるべく使いやすいものがよいです」
「初めてだから、うまくいくかどうかわからないよ。あんまり期待せずに待っててね。作り方もわからないんだから。まずは粉の選定、時間がたったらどうなるのかも合わせて実験していかないと。手間も時間もかかる。忙しくなりそうだよ」
そんなキラキラした目で見つめないで欲しい。早く作ろうと思うけど、ちゃんと使える品じゃないと、人になにかあると大変だ。あと、どこで作るかも大切なことだ。
「白い粉はいつ頼まれたんですか?」
「白粉のことを調べているときだね。毒が入っていて、そのせいで肌も荒れていた。使わないといけないみたいだから、替わりの物を作れれば死ぬことはなくなるからね。体の調子が悪いのも治っていくはず」
「きちんと説明をされましたが、どうしても信じられませんでした。ですが、使っていい物があれば、フフフ」
「だから作らないといけないんだ。死より美しさを取るって言う人までは止めないけど、シャローザは死んで欲しくないから何度でも止めるけどね」
どうやったら使いやすいのか。そういうのを考えないといけない。わからないから、やってみてかな。
「ランス様」
「うまく出来るといいけど。出来ないときは薬師ギルドに協力をしてもらおう。どんなのがあるんだろう」
じっと見ているシャローザの頭をなでる。
「ずるい、です」
そういわれたけど、大人しくなでられている。何がずるいのかわからないまま、なでなでしていた。お茶を飲み干してからシャローザを見る。
「キレイになったね」
軽い感じで言葉にする。できものとか吹き出物、荒れていた肌がキレイになりつつある。もう少しかかるものもあるけど、最初に比べたら治ってキレイになっている。髪もつやっとしていい感じ、ボサボサ荒れ放題じゃない。
「そういっていただけるなら、嬉しいです。ランス様から褒められるなら頑張れます」
何を頑張っているのか知らないけど、こっちもまだやらないといけないことがあるから聞く余裕がない。次はちゃんとして、盗聴とかないお店に行きたいとお願いされたが断った。だけど、シャローザが食い下がる。
「シャローザ、何をしているんだ」
「いいと言ってくれるまでどきません」
「わかった、わかったからどいてくれ」
「ランス様、ちゃんと聞きましたからね」
膝の上に乗ってきて下から顔を近づけてくる。息がかかるくらいに近づいてきて、びっくりするんだけど。離れていく顔に胸がドキドキする。驚かさないで欲しい。落ち着くまで深呼吸をしていく。
「こういうことは平気だと思っていましたけど、そうでもないのですね」
「そうみたい。治療の時とかは別になんとも思わなかったのにな」
微笑んでいるシャローザは、ちょっといたずらっぽく笑い直した。悪いことを考えていないといいけどね。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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