白粉の代わりを作る2

 白い粉になりそうな鉱物を中心に集めてくれていたようだ。小麦粉などの食品類も混じっている。材料になりそうな粉を全部、部屋の中に持ってきてもらう。床や机に並べられている。昼間だったけど、カーテンを閉めて誰も入らないようにする。部屋の中に入れるのは誓約をしている人のみ。なぜなら、これから鑑定を使うからだ。

 1つ1つが何なのかを調べ上げていく。まず必要なのは白い粉。それから材料を書き木片を各瓶の取りまとめ、大まかに鉱物、植物、食物に分けて瓶の蓋を開けておく。

「どうして蓋を開けたままにしておくのですか?」

「シャローザは使うときに蓋を開けるよね?何かを塗るってことはその間、ずっと蓋を開けているはず。もしかしたら、蓋を閉め忘れるかも知れない。すぐにダメになるのは困らない?」

「そういわれると、使い捨てのような白粉はありません。蓋が閉まっていなくても白いままです。すぐにダメになっては使いづらいですね。それで開けたのですか」

「そう。数日はこのままで変化しないものから選ぶべきだと思う。ずっと、蓋を開けっぱなしでダメになってもいいけど、少しぐらい忘れても平気なぐらいは保って欲しい」

 数日このまま。邪魔だな。どうしよう。

「時間をかけて調べるしかないね。他に何か粉がないか、探しに出てみよう」

「お出かけにご一緒してもよろしいですか?」

「いいけど、歩くから大変だよ。馬車だと探せないからさ」

「頑張ります」

 気合いを入れているシャローザを置いていくわけにも行かないので、せめて歩きやすい靴を履くように、格好も動きやすいものがいいと注文する。着替えてきますねと部屋から出て行ってしまったので待つことになった。リュックとバックを身につけて、いつでも行ける準備をする。白い粉が邪魔だけど、変色したものからどけていくしかない。部屋を出て準備をするシャローザを待つ。屋敷に戻っていったので、すぐには帰ってこない。戻ってくるまで待っているか。


「乗馬練習用の服しかなかったので、これにしました」

「動きやすいのなら構わないよ。よく似合ってるね。それじゃあ出発しよう。足が痛くなったりしたら言うんだよ?たくさん歩くからね」

「はい、では行きましょう」

 嬉しそうに隣を歩くシャローザを気にしながら貴族街を抜けていく。楽しそうにしているのを見ていると、こちらも嬉しくなる。

「どこへむかわれるのですか?」

「なるべくなら、安定している石とか、そういうのがあればいいかな。粉にしたときに白かったらいい。何でも集めてみようと思ってね。粉になっているものならよりいいんだけど。石は詳しくないから、商業ギルドで聞いてみるよ」

「粉自体は商業ギルドで集めてもらったのではないのですか?」

「そうなんだけど、他にも試せるものがあったらなと思ってね。真っ白じゃなくてもいいから、選別に漏れたものから教えてもらおうと思ってね」

 そうなんですかと不思議な顔で見ている。種類がいっぱいあったほうが、

いい物があると思うんだよね。だから、種類を集めて使う使わないを決めていこうと考えている。

 商業ギルドに話をつけて、選別に漏れたものをもらっていく。それからさらに候補へ入りそうだったものを教えてもらい、それらも用意してもらうことに。

「こんなものかな。あとは待ちを歩き回って探すしかない。頑張ろう。シャローザも見つけたら教えてね」

「白いものを探せばいいのですか?」

「白っぽいものだね。材料でだよ。出来たものが白くても元が白いとは限らないから、普通の店では並んでいないものになるのかな」

 たくさんの店の並ぶ大通り。何かしらの店になっているので、何の店なのかわからないときもある。怪しげな雰囲気の、なんというか、湿気の多い洞窟のどんよりとした、止まっている空気感の店構え。凄く気になる。

「この店は何だろう?気になる」

「入らないほうがいいですよ。あまりよいところではありません」

「ここは魔道具屋ですよ。外観に金をかけるなら魔道具作りに使うと言って、絶対にキレイにしないのです。なので、知っている人はある程度店に詳しい人に教えてもらった者でしょう。客人担当になってから教えてもらった店ですね」

 メイドさんが説明をしてくれている。入っても良さそうなので中に恐る恐る入っていく。

「こんにちは」

 静かな店の中に僕の声だけが消えていった。魔道具は作り方や作ったこともあるけど、中に入れ込む魔方陣が面白かったのでそっちばかりで、基本的な作り方しか知らない。これは火をおこす魔道具かな?料理の時に便利なヤツだ。

 商品や棚に埃はかぶっていないので、魔道具はとても大切に取り扱いされていることがわかる。風を起こす魔道具や照明の魔道具もある。照明の魔道具は種類がいくつかあって、ランプ形が数種類、壁につけるもの、置いてある程度の高さで使うようなものがある。

「ランプは欲しいな」

「何に使うんですか?」

「ポーションを作るときと、寝るとライトが消えてしまうからそのかわりに」

「ポーションを作っている時って、寝ずに行うのですか?そんなに過酷なのですね」

「いつも薬師ギルドの人に怒られながら作ってる。早く作りたいからどうしても、その合間合間で仮眠を取って作るんだ。スキルがないから、抽出や調整につきっきりで、品質を下げれば寝られるけど、それももったいない気がするしね」

 透明度の高いガラスが使ってある。高そうだ。透明なガラスは高い。ないわけじゃない。ジッと見つめていると同じようにシャローザも見ていた。

「保存が出来る魔道具ってないのかな?」

「保存と言いますと、どのような?」

「マジックバックの時間停止とか冷たくして腐るのを抑える収納箱とか」

「は?」

 メイドさんが目を点にして、気を取り直してしゃべりだした。

「現在魔道具はマジックバックの時間経過型が極希に作られると聞いたことがあります。時間停止型はダンジョンでしか手に入らず、非常に高価だと聞いたことがあります。もう1つの冷たくとは氷室のことでしょうか?氷の使い手は少ないので、常時冷やすとなると大貴族、国の施設になります」

「そうだったんだ。マジックバックは上位の魔法使いが気まぐれで作るって聞いたことがあるから。氷の魔道具って開発されてないのか。初めて知った」

 グリじいと開発は出来ているので、出来ているとは言わなかった。こういうのはスキルがある人しか作れないから、絶対にばらすなって言われている。

「それはよかったです」

 メイドさんの目つきが鋭い。ちょっとビクッてしてしまった。

「これとかキレイですね」

「うん、いいね。魔石は下のところに入れるのか。なるほど、この魔方陣から魔力を上の魔方陣に。それで光るのか。光がキレイに出てていいね」

「それは金貨20枚だよ」

 いつの間にかおばちゃんが立っていて、いきなり値段を言ってきた。

「冷やかしなら帰ってくれ。壊したら借金奴隷だよ」

「ギルドカードは使える?」

「なんだい、ギルドカードにお小遣いでも入れてもらっているのか。案外、いいところの坊ちゃんなんだね」

「僕は平民だけど、あとこの大きめのランプもいくら?」

 合わせて金貨50枚と言われたので、冒険者ギルドのカードを出して精算する。精算が通ったので、商品を受け取る。シャローザのはちゃんと梱包をしてもらう。

「ランプは本当にそのままでいいのかい?」

「はい。持っておくのは大変そうですから」

 預かったランプをバックに入れる。

「マジックバックとは平民の割にはずいぶん金持ちだね。親の金で贈り物とはいい身分だよ」

「両親は死んでるよ。これは自分で勝ち取ったお金。全部自分で稼いだお金だよ。そうだ、ランプに明るさの調整があるものはないの?」

「は、そんなものがついているものはないよ。出来たら売りに出しているさ。金持ちなのはわかったから、帰った帰った」

 これ以上は面倒だといわんばかりに追い出された。気分が悪い。

「次の店を探そう」

「わ、私がいますから。ランス様には私がいますから」

 急に手を取って声を上げるシャローザ。

「うん。シャローザ」

 自然に見つめ合う。シャローザは顔を真っ赤にして、手を離した。残念。もうちょっとつないでいたかったな。

「次の店を探そうか?でも、シャローザとの買い物は楽しいね。一緒に選ぶのもいいし、自分の好きなのを選ぶのも楽しそう。次はどこに行く?」

「白い粉を探しにきたのではないのですか?ご一緒にお買い物が出来るのはうれしいですが、探さなくてもいいのでしょうか?」

「商業ギルドが持ってきてくれるのと、それ以外はあんまりないんじゃないのかなと思ってて、見つけられたらいいかなぐらいで。気楽に見ていこう」

 シャローザと一緒にいられていないから、ちょっとはいられるようにね。婚約者だし、お互いのことを知る時間は作らないといけないのかな。嬉しそうに横に並ぶと店を見てまわる。

 置物や小物、雑貨などシャローザが可愛いと手に取っていた。これどうでしょうと見せるので、そうだねって相づちをうっていた。メイドさん達も可愛いですねと言っていたので間違いないと思う。

「どうしたんですか?難しい顔をされて。これなども可愛いですね」

 小物を眺めるシャローザの手に持っているものをじっと見る。

「可愛いね。でも、そういうシャローザも可愛いよ」

「ンーーーーー」

 変な声を上げるので見上げると、顔を真っ赤にして小刻みに震えている。手から落ちそうな小物が、あ、手を滑らして空中に投げ出された。反応しておもわず受け止める。タッタッとハンナさんの後ろに隠れた。

「う、うぅ」

 え、う、ほっ。うまくとった小物は元に戻す。完全に隠れてしまう、なんで隠れたのかな?選ばないのとすすめてみるけど、ハンナさんの後ろから出てくることがなかった。選ばないのなら店を出て、材料を探して店をまわる。隠れたままだったけど、出てこないなら材料を探していこうかな。白っぽい、素材になりそうなのは商業ギルドがだいたい抑えていた。探してみたけど、見つけるたびにあったなと思い出して集めることがない。

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読んでくれてありがとうございます。

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