魔法なんとかの人達と1
王都に戻ると普通に入っていく。疲れたかも。いつもの串焼きを食べてからマジックバックの素材を薬師ギルドに売ったら喜んでくれた。薬師ギルドから出ようとしたところ、見覚えのある人がきれいな姿勢でお辞儀をしてきた。
「お帰りなさいませ、ランス様」
エロイーズの家のメイドさん。どうしてここにいるのかな?まだ帰ったと連絡もしていないんだけど。あと冒険者ギルドでレスタに帰ったと言ってから貴族街の警備隊のところへ行こうと思っていたのに。
「何か所用はございますでしょうか?」
「冒険者ギルドに帰った報告をするつもりだった。あと遅くなったからシャローザが心配」
「それではお供いたします。シャローザ様へご連絡をしておきます。所用が終わりましたらエロイーズ様へご帰還の挨拶をお願いいたします」
「冒険者ギルドが終わったら、シャローザに会うために警備隊へ行こうと思っていたよ」
いつも通り僕の後ろをついてくるようだ。冒険者ギルドに入っていくといつも通りな感じで、レスタのところに行って早かったなと言われて、報告し馬車に乗り込む。
警備隊の建物に入っていくと隊長の使う家の前で止まった。逃げるつもりはないんだけど。馬車から入り口まで兵士が並んでいる。降りてからエロイーズの部屋に通された。書類を確認したり、何やらサインをしたりしている。何かしているね。イスに座って、終わるのを待つ。顔が真剣なので邪魔しちゃまずいかな?いつの間にか出されたお茶を飲んで、ひと心地つく。魔力切れはとにかく、しんどいってこと。あと魔力変換効率が悪いってことだね。もっとうまく出来るように練習をしていかないと。
「お?ランス、戻っていたのか。魔法師団員の件だが、団員が貴族の息子で悪くないといっていてな。魔法師団長にもその旨伝えているのだが、半信半疑でうまくいっていない。どうにかしたいとお父様とマクガヴァン先生も動いてくれているのだが、魔法は専門外なので帰ってきたときに引き合わせようということになったのだが、どうだろうか?」
「それって、力比べをしていいってこと?」
「力比べ?魔法の比べ合いをするのか?」
「違うよ、単純に魔法をぶつけ合って倒した方の勝ちっていうだけ」
エロイーズの顔が引きつる。簡単なことを言っているつもりなんだけどな。
「わからないなら、わかるようにすればいいんでしょう?その魔法なんとかのがわかっていないから、次は使えばいいってことだよ。簡単なことだね。まだ、僕も魔力の変換が間に合わなかったから、実戦で練習したいなって思っていたんだよ。強いなら受けて立ってくれるんでしょう?」
「話し合いは出来んのか?」
「ええ?いってわからない人は力でっていうのが冒険者ギルドの方針だから、それが普通なんじゃないの?」
「ええい、こうなったら冒険者ギルドの本部長も呼べ。ランスが王都を破壊する前に話し合いに加われとな」
手伝いの1人が出て行くと、大きく深いため息を吐いた。
「まずは話し合いでどうにかしようと思わないのか?」
「出来ないから、力で示すんでしょう?わかってくれるなら、そんなことをいわないけど。今回も話し合いでどうにも出来ないから、こうなってる」
「国とことを構えるつもりか?」
「可能性としてはあるよね。その想定はしているし、こういうことでするつもりはない。だめなら無視しておけばいい。ただ、何かあったときに依頼を拒否するだけだよ。信じていない者のために力は振るわないから」
エロイーズは頭を抱える。S級が拒否するとかやばい、ヤバすぎると絶叫している。お茶を飲みながらその様子を眺めていた。
エロイーズの執務が終わるのを待って、一緒に帰ることになった。シャローザはきちんと待っていてくれただろうか?メイドさんにシャローザといつ会えるか聞いてみた。手配していますとのことなので、魔法を浮かべて消して、浮かべて消す。一連の動作をどれだけ早く出来るのかを練習していく。
「頼むから大事にしないでくれ」
「無視しておくのが1番だと思うよ。何かしてきたときは反撃するしね」
「それが大事になると思わないのか?」
何が大事になるのかわからないけど。
「それが貴族の息子や当主だったら大変なことになるんだぞ?」
「一応僕も当主扱いにはなるはずなんだけど。それなら冒険者ギルドに相談してくれる?」
馬車が進むたびにどうしたらいい、どうしようとエロイーズは独り言として大きな声で唱えていた。そのまま、家に着くとエロイーズはすぐに自分の部屋に向かった。辺境伯の紋章がついた馬車に近づいていく。窓までもやがあふれている。ドアを叩いて、中に入っていく。ぐったりとしたシャローザがかろうじて見える。痛みを我慢しながら、いつも通りにしていく。
「ありがとうございます、ランス様。お休みになれておりますのでこれで失礼いたします」
馬車から降りると走って行くのを見送る。屋敷の泊まっていた部屋に通された。
そういえば耐火の服って穴が開いているね。脱いで確かめると結構な穴だった。マジックバックから前に使っていた服を出すとメイドさんが取り上げる。
「返してよ。僕の服だよ」
「本日はお召し物をご用意しておりますので、そちらに着替えさせていただきます」
手を叩くとメイドさん達が入ってきて、前の時のように囲まれてもみくちゃにされる。うう。こんなのイヤだ。
「ランス様お時間です」
時間ギリギリになるまでもみくちゃにされて、着せ替えをさせられていた。今日着る服だけじゃダメだったの?
いつもより動きにくい服に、きちんとした身なり。ちゃんとしないといけないの?いつもよりも丁寧な動きを心がける。案内された食堂でいつもの末席ではなく、本部長の隣、さらに当主側に座らされた。対面の席は空いたままで、人が来るのを待っている。そこの隣にはエロイーズの師匠が座っている。
「グレンフェル様、少しランス君と業務のお話をさせてもらってもよろしいでしょうか?なかなか、冒険者ギルドに来てくれないものですので」
「お相手の方が来るまでの間なら、構いません」
「ありがとうございます」
隣を振り向くと汗を拭きながら、こっちへ向く。
「ランス君はこういうちゃんとしたのを着ると別人に見えるね。よく似合っているよ」
「そうなのかな?動きやすい服の方が好きだけどな」
「先日の依頼の件は一応成功でも失敗でもないってことで正式に決まったよ。街までファイアドラゴンに運んでもらって、かつ爪をもらったということで友好的な関係を得た考えられたのと、ドラゴン自身が勝った手土産みたいなのになるのかわからないけど、素材を目の前で置いていったので勝利したと認められた。それでドラゴンは強かったかい?」
「強かったよ。まだまだ修行が足りない。魔力変換が追いつかなかったから、それに集中するためにちょっと無理して、黒い方のお世話になっちゃった。力試しだったから、死んでないかの確認もしてもらってた。あとは族長が友って呼んでいたね。いつでも来ていいって」
それでかと一言漏らした本部長は1枚、装飾のついた豪華な羊皮紙を取り出して僕の目の前に広げた。
「ファイアドラゴン国、国王様より正式な面会依頼がギルドに来た。ランス君、だいぶ早く帰ったようだがドラゴンと戦ってからどのくらいでこっちに戻ってきたんだい?」
「1日泊まって飛竜で戻ったよ。戻ってきた報告はちゃんとしたし、ドラゴンの爪は買い取りに出したし、時間がかかるって言われていたから戻ってきた」
「そういうことか。次の日には王国として動かれていたそうなんだが、忽然と姿を消したということで街をひっくり返しての大探索になったそうだよ」
「報告して、素材渡して、換金に時間がかかるからカードに入れとくって。冒険者としてやることはやったから帰るよ。他に用事があるのなら残るけど、何もなかった。それに連絡はきてない」
本部長は困ったように羊皮紙を見つめる。
「とにかく、指名依頼が来たのでギルドとしてもランス君には受けてもらいたい。当然、飛竜での送り迎えから、宿泊の手配などは別途費用として支給される。観光のつもりで行ってはどうだろうか?」
「婚約者がいるから1週間以上離れられない」
「1週間。それは難しい、婚約者と一緒にでも」
「婚約者の名前はシャローザ・エルミニドだけど、呪い持ちでも大丈夫?」
本部長は頭を抱えた。
「飛竜でも3日。滞在は1日もない。最低でも1週間はかかるとみて、呪い姫となると黒い魔力の漏れが有名で絶対に無理だ」
「本部長殿、僭越ながらシャローザ様は今黒い魔力の漏れはなかったのだが。呪いは本当なのだろうか?」
「ふとした瞬間に漏れることはあるね。今のところはうまくいってるけど。だから1週間以上の魔力補充がないと元に戻るよ」
希望に満ちた表情でこちらを向く。
「それならポーションでなんとかなるはずだ」
「無理だよ。シャローザ自身が抑えるための魔力を作り出せない。他の人からの魔力補給で押さえ込むしかない」
「魔力を与える?魔法使いのスキルであるはずだ。魔力共有なら出来るはず、これで問題は解決。受けてくれるね?」
「光の魔力のみになるけど、他の魔力は取り込まれると酷くなるよ?切れた瞬間から、触ると激痛が走る。単一魔力を使える人はいるの?」
右手と左手に光と闇の魔力を纏わせて見せる。
「このくらい出来る人かな。それ以下は任せられない」
「呪い持ちの婚約者が一緒でないと行けない旨を伝えておく。引き下がってくれるとありがたいんだが」
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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