ファイアドラゴンと戦う4

「お前が聞いてこい」

「そんな、隊長。まだ死にたくないです」

「今は弱っているようだ。いいから行くんだよ」

 押し出されるように門兵の1人がこちらに近づいてくる。今は誰の相手もしたくない。魔力酔い中はほったらかしにして欲しいんだけどな。

「君、そこの君。ドラゴンに連れてこられていたが、なんでドラゴンが城下に降りてきたんだ?」

「城下ってどこ?」

「この街のことだ。城壁が見えないか?」

 指さす方を見ると確かにそびえ立った城壁があり、城門には待っている人の列が出来ていた。

「ううんあ、そうなんだ。冒険者ギルドから誰か来てもらって。動くのがつらいの」

「冒険者ギルド?それで、名前は?ギルドも名前ぐらいは聞いてくるぞ」

「ランス」

「わかった。冒険者ギルドにいってくるから、大人しく待っているんだぞ」

 頷くと近づいてきた兵士の人は中に入っていった。周りの人がじろじろと見てくるけど、しんどいので無視して、魔力が回復してくれないかなと大人しくしている。


 筋肉ムキムキの冒険者達と冒険者ギルドの職員が目の前にやって来た。

「ランス君、これってファイアドラゴンの爪よね?倒したの?」

「うん?爪は力比べに勝ったからもらって、倒してはないよ。戦えれば何でもよかったからね。この街に被害とかないんでしょう?」

「ないけど、ドラゴンが降りてきたって町中大騒ぎになって大変。ドラゴンは何しに降りてきたのか知ってる?」

「全力出して魔力が切れたから、街まで降ろしてもらったの。爪は勝ったからやるってことでもらうことにする。ドラゴンの爪って大きいね」

 僕よりも大きい爪があるんだから。

「爪は買い取りでいいのかな?」

「持って帰れないし、買い取りして。族長っていうドラゴンの爪だから高く売れるかな?」

「は?」

 一同の動きが止まって全員がこっちを向いた。

「ランス君、族長っていった?」

「いったけど。大きいドラゴンの名前だよね?」

「それはそうなんだけど、族長はそのドラゴン一族の1番力が強いドラゴンが使う名称なの。つまり、そのドラゴンに勝ったってことなの?」

「ブレスと魔法で対決したけど、魔法を当てて墜落までしたかな。それで勝ったよ。ファイアドラゴンが友だっていってたね」

 少し魔力が戻ってきたようで、けだるさは少なくなった。気持ち悪いのもなくなって普通に動けそう。

「友。初めて聞く名称です。ファイアドラゴンがそういったのかな?」

「そうだよ。そういってた。また遊びに来いって。でも、当分は魔力変換の練習をするからいけないけどね。もっと強くなってまた挑戦する」

 変な顔をしてるけど、みんなどうしたんだろう?大きな爪を持って帰れないから、ギルドから荷馬車を取ってくるそうだ。

「ついでに鑑定士にも同行してもらいましょう」

「ランス君はここで少し待ってて。ついてきた冒険者は護衛をお願いします。国に持って行かれないようにしてください。うちの商品です」

 目を細めて冒険者ににらみをきかせる。

「うっす、姐さん」

 冒険者達が頭を下げて見送る。すぐに戻ってくるはずなんだけど。

「それにしてもこんな爪見たことねえよ」

「どうやって倒したんだ?」

「生活魔法でクリスタルと氷作って、ブレスと比べる感じ」

「生活魔法で?クリスタルと氷?」

 いつもよりも小さく作る。魔力が少ない。

「本当に作れるのか。しかし、ファイアドラゴンと戦って勝つって、どんだけの魔力量なんだよ。さすがS級冒険者だ」

「気持ち悪」

 少ない魔力を使ったから、魔力枯渇でグワングワンが復活。爪にもたれて目をつぶる。


「本物だ。あのバックからはみ出ているのも鱗だぞ。買い取らないのか?」

「待ってください。鱗まで買えません。爪だってオークション行きですし、すぐに換金も出来ませんから。それにラント王国の冒険者なんですから、うちは仲介です」

 鑑定士に鑑定され、荷馬車に乗せられて、みんなで門の中に押し込んでいった。ギルドに連れて行かれて、鑑定書を作るのに時間がかかるのと売るのにも時間がかかるので、売れたらギルドカードに入れておくとの説明を受けた。依頼自体は失敗らしいが、素材を持って帰ったので失敗と帳消しでクエストの評価には入らないといわれた。クエストの評価って何だろう?帰ったら誰かに聞いてみよう。

 ギルド御用達の宿に泊まると次の日の開門で外に出る。帰りのことを聞いてないけど、飛竜の人に聞いてみたら帰りも手配してくれていたようで、すぐに出発してくれた。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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