王都滞在10
朝練の時間になってから屋敷の外に出る。そのまま城外に出ると魔法を撃ってもらった場所に来た。城壁から離れていって、少し体を浮かせる練習と氷の生成を早くする練習、強くする練習をしていく。
辺りが氷で山になっている。さすがに寒い。離れたところでメイドさんを発見した。ついてきてたの?近づいていくと寒そうにしている。
「すごいのですね、こんな塊になったのは見たことがありません」
「あ、忘れてた。生活魔法だから出来ることもあるんだ」
崩壊をつけ忘れていた。普通だったら消えてなくなる。崩れながら消えていく氷の塊。
「出すほうだけに集中しすぎて、消すのを忘れていた。戻ろう」
城壁のところに戻ってくると普通の門番とローブを着た人が話していた。普通にギルドカードを見せると止められた。
「子ども?祝福前か。メイド?なぜあんな大規模魔法を使った?なぜメイドの格好をしている?」
「メイドですので。グレンフェル家に勤めるメイドでございます。照会をしていただけますでしょうか?身分の方はこれでおわかりになれます。魔法を使用していらしたのはランス様です」
「舐めているのか?このような子どもにあのような魔法が使えると本気で言っているのなら、頭でもおかしくなったのか?」
「なんとおっしゃいましても事実は事実ですので」
おお、なんかかっこいい、メイドさん。
「それならそっちのガキ、身分は何だ?」
「商業ギルド員、薬師ギルド員、冒険者ギルド員だね。身分の照会先は」
「どこぞの田舎者にあるはずないだろう」
「では、サルエン男爵領の領民に商業ギルドのご紹介をしてくださった宰相様に。それか冒険者ギルド総本部長エインヘニャル様にF級冒険者ランスのことを照会してもらえればいいかな?」
「偉い人の名前を出していればいいと思うなよ。照会した結果ない場合は覚えていろよ」
「あったときは何かしてくれるの?じゃあ、この上しょうもないのを壊すね」
城壁の上の方をさす。結界が見えている。もろそうだとは思っている。
「各ギルドに偽りないか確認しろ!」
「じゃあ、行くね。グレンフェル家にいるから、用事があったらエロイーズにでも伝言して」
「行かせるわけがないだろう。そこのメイドは照会、そうか、取れたが。ランス、お前はまだダメだ」
「それなら、魔法で遊ぼうよ」
「はあ?」
ローブの中から杖が出てきた。高そうな魔石がついていて、高級っぽい。
「せめて、短詠唱使える?」
「せめてってなんだ。それがないといけないと言いたげじゃねえか」
「僕、生活魔法しか使えないから詠唱してたら終わるよ?」
「はあ?生活魔法しか使えないのに負けるはずがないだろう。バカも休み休み言え。そんなのに勝てなければ、笑いもんだ」
杖を前に出して構える。
「じゃあ、物理攻撃にする?」
「それならいい勝負かも知れないが、魔法勝負だ。行くぞ!」
構えた状態から詠唱が始まる。それを見て、短詠唱を持ってないのかと思ってしまう。詠唱って長いんだよね。
「我が魔力に応え、我が力となりて、顕現せよ、敵を打ち抜く炎となりうち放てファイアーアロー」
なんだろう、普通のファイアーアロー。威力、速度、数は5でいいかな。向かってくるのに合わせて水で打ち消す。
「短詠唱がないのか、残念。少しはいい魔法を期待したのに。こんなものだよね」
「殺さない程度に手加減をしてやっとというのに」
「火傷はいいんだ」
「許さんぞ。死んで詫びろ」
殺すつもりらしい。まずいかな?
「我が魔力に応え。我の欲する力を現し、魔力をくらい、炎となりて顕現し、敵を殲滅する力をその炎に込めて、力を示せ、我が力の大きさを敵に知らしめよ、その大きさに2度と目の前に姿を見せられぬ矢。駆け抜けろハイファイアーアロー」
さっきのよりは威力は上がっていて、速度はどうだろう?数も増えていていいね。速度は普通のよりも速いけど、特別速いってことはない。
「消えてなくなれ!」
「ランス様」
当たる寸前で相殺ではなく、魔法の構成を壊すように魔力を放つと火は霧散して消え去った。
「メイドさん、呼んだ?」
「どうやって、どうして消えたのですか?当たると思ったのですが」
「魔法を理解していれば、やって出来ないことはないよ。使うという意味だけど。どうやって魔力を火に変換するのか、変えることが出来るなら逆も出来ると思わない?作り出した物を元に戻しただけ。難しい魔法だと面倒だけど、簡単な魔法ならすぐに出来るよ。これが生活魔法だからね。じゃあ、次は僕の番だね。自分の持てる全力の防御を行え」
殺そうとしたのだから、殺気をしまうこともせずに睨む。
「貫かれたら死ぬと覚悟しろ」
目の前には氷の槍がすでに出来ていて、さっき受けたハイファイアーアローの倍の大きさになっている。馬に乗った人が勢いよくかけてくる。
「待て、待つんだランス!」
「何を待つの?そいつはハイファイアーアローを僕に使った。勝負中だよ。それに身を守るために反撃するのは当然だろう?なら、エロイーズが受けて止めればいい」
「殺す気か?」
「ハイファイアーアローが殺さない魔法というのなら、これぐらいでは死なないよね。そのおっさんと同じことを返しているだけだけど、受けて反撃するのはおかしいのかな?おかしいというのなら、この国がおかしいね。自分だけやって何もするなとか、国ごとやらないとね、手加減するのも面倒だと思っているんだ」
頭上には水の塊が徐々に大きくなって、空を覆い隠す。
「我々ごと殺すというのか?」
「洗い流すの間違いだよ?汚れを洗い流すの」
「何が望みだ?」
「反撃」
攻撃してきたおっさんは鼻水を垂らしながら座り込んで震えている。
「ランス、ここは納めてもらえんだろうか。後に詫びを入れさせるのでな」
「受けて詫びるの間違いじゃないの?おじいちゃんはぶっさされても許せっていうの?許さないよね」
「ふむ、それは確かに。しかし、そこを曲げて頼む。こいつの上司に賠償金と謝罪を確実にさせると約束する」
「そういうことじゃないよね?殺そうとしたから反撃した。十分に理由になる。じっちゃんもそれは容認している」
マクガヴァンはじっちゃんとは誰だとエロイーズに聞いていた。
「ランスのいうじっちゃんはエインヘニャル様のことです。本人にもじっちゃんと呼んでいるそうです。それを容認されているようなのです」
「それはそれは、ランスよ。国を滅ぼす力を持っているということだな。冒険者ギルドの本部長でも呼んでこんと、どうにもならんか」
馬車が急いでやってくるのが見える。冒険者ギルドの印が入っている。
「ランス君、まずその水をしまって。昨日の話の続きを持ってきた」
一瞬で解除して止まった馬車に近づいていく。
「許可は下りた。総本部に話をしたらS級なら許可すると。今日中にはファイアドラゴン国に、通達が行くからいつでもいけるようになる。きちんと依頼の受託はしていかないと、入山許可が出せないからちゃんと受けるんだよ」
「許可が下りたんだ。すぐにでも受諾して準備したら出発だ」
「どうやって行くのか、決めているのかい?」
「これから考えようかな」
ふむふむと頷く本部長。
「それなら、飛竜の手配をしておこう。国まではあればいいか」
「うん、お願いします。メイドさんシャローザを呼び出すことって出来るかな?行く前に1度会っておかないと」
「かしこまりました。来ていただけるように手配いたします」
「お願い。じゃあ、そいつを処分したらギルドに行こう」
目の前には赤く燃える炎、魔力を込めて青白く変化していく。
「さあ、僕の番だ。ミスリルが蒸発した炎。耐えて見せて」
ベチャとズボンからしみ出した水の上に倒れ込んだ。
「寝たままじゃ、ダメだよ。門番のひと、槍でつついて起こしてよ」
「そんなションベンまみれになったのをつつきたくない」
「帰ってきたら起きてるはずだね。帰ってきたら続きをしようって言っといて」
「任された」
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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