王都滞在5

 日の光で起きてから部屋を出て昨日の広場に出ると、数人が練習をしていた。邪魔にならないように、火と水、風と土を出して数を増やす練習をする。数を増やしているのですぐに自分の周りは、囲まれた状態になる。1度消してから、増やすのを繰り返して、また消す。

 遊んでいたらエロイーズも練習にやってきた。体をほぐすと普通の剣を振っている。危ないので近づかない。当主も来た。同じように体を動かして、剣を振り出す。より危なそうなのでなるべく隅っこに行く。そんなに広くないので、当然すぐに見える位置にはいる。火で水と相殺したり、うまく混ざらないかなと合わせてみるけど、やっぱり相殺される。何か面白そうな組み合わせがあるといいけどな。

 アブな!

 少し避けてソードスラッシュが目の前を通り過ぎる。おっさん何するんだ。とりあえず気にしないで、風と水だと速くなるけど、威力は速さによる?水の量かな?

 うわっ

 また目の前をソードスラッシュが走り抜ける。危ないおっさんだ。どう考えてもわざとにしか見えない。

「父上、当たったら大けがをしてしまいます。その辺でおやめになっては」

「2度続けるとは、偶然とはいえたいしたものよ」

 エロイーズとおっさんを見やる。次やったら、反撃する。構えて振り下ろした瞬間に剣刃が僕に向かってくる。相殺するために風刃を隙間なく2撃。一撃は相殺され、僕のもう1撃はそのままおっさんに向かって行く。迎え撃つように相殺。わざと相殺出来るようにゆっくりと放ちながら近づいていく。歩いて行くのにじりじりと下がって距離を取っていく。僕の方が歩くのが速いので、徐々に捌ききれなくなっていく。腕に傷負うおっさん。

「その程度?」

 ため息交じりに近づいていく。

「謝るなら許すけど、謝らないならもっと練習をしようか。鍛錬が足りないと思うんだ。この程度はあくびをしながら相殺してもらわないと困るよ。こんな準備運動程度でやられるなんて、朝だと調子出ない人なんだよね?」

「なんだと!」

「じゃあ、行くよ。練習練習」

 威力を弱めて、撃ちだし速度重視でといってもさっきのに、毛が生えた程度だけど。防ぐことも出来ずに受けている。

「ほらほら、練習なんだからさっさと剣を振る。練習練習」

「ランス、すまない。父上がやり過ぎた。許し欲しい」

「いや、これ剣の練習だから。本当はもっと威力を強くしないと練習にならないんだけどね。剣筋が見えないから、対応出来ないのかな?ちょっと待ってて」

「こんな剣の練習は見たことも聞いたこともない。どこでこんなことを教えてもらったんだ?」

「僕の師匠は普通に剣を振るだけで、おっさんのソードスラッシュが出るの。だから、師匠との練習を思い出して、まずは剣を合わせるための練習だよ」

 外に置いてあった薪の端くれをもって、擬似剣に合わせて繰り出していく。威力は弱く設定している。服とズボンはボロボロで血が出ているけど、やめる気は全くない。切り飛ばされているわけじゃないからね。本来の威力なら死んでいると思うけど。

 膝をついてしまったのでやめる。

「うーん、これが出来ないのか。僕からはこれ以上何も言えないな」

 昨日の兄があくびをしながらやってきて、ハッとなる。

「じゃあ、エロイーズと兄、僕が木刀を持ったらソードスラッシュをできる限り早く撃ってみて。2人でだよ?」

「死んじまうぞ?」

「見たほうがわかるでしょう?そこのおっさんが」

 木刀に持ち替えて構えるといいよーと叫ぶ。おもむろに近づいていく。放たれる剣刃の中をかわして相殺し近づく。体が覚えているものだね。相殺して、エロイーズの剣と合わせた。木刀なので切られる。

「こういう練習だったけど、理解してもらえたかな?剣を極めた人と修行するときはこれが出来ないと、剣を合わせることも出来ずに死ぬよ」

「今までは本気ではなかったと?」

「僕は祝福前で、スキルはないんだよ?普通にやれば力で負けるよ。相殺はするけど、ソードスラッシュが使えるわけじゃない。頑張ってもスキルで負けちゃうよ。武技で勝てるとは思ってないよ」

「なら、何の制限もなしで全力で戦えるとしたら?」

 そんなことをすれば。

「出来るはずがない。やったことはないけど、レベル8の魔法は地形を変える。多少の魔法の知識があるのならわかるはずだよ。それに詠唱より速く、魔法は完成させられる。それに対して、おっさんはどう対処するの?ワイバーン討伐の時は滑空してくる時間に、一撃で殺せる魔法を放っているよ?どうするのか、教えて欲しいな」

「さっきからたわいごとばかり。少し魔法が使えるぐらいで」

「父上!ランスはあのエインヘニャル様に認められたS級冒険者です。祝福前ということでF級なのです。S級に出来ないためにS級扱いなのです。S級になれるのに実力不足でS級扱いの勇者と混同してはいけません。便宜上S級扱いの者と年齢を理由にS級になれない者を勘違いしてはいけません。都市などなくなってしまうぐらいのことは、知っているはずです。勘違いを起こしてはいけません。S級扱いは祝福前後で全く意味が違うのです」

「ならば、ランスは本当に。ワイバーン討伐をしたのか?」

「公爵家で目撃された巨大な炎はランスが公爵様に魔法を見せたものです。これだけいって、納得出来ませんか?それならば、公爵様に直接確認をなされてください。ランスの実力はいかなるものか、わかりますかと」

 エロイーズが語気を強めて説明しているので、切れた木刀を拾っておく。メイドさんが切られた木刀を持っていって、おっさんはエロイーズに怒られているのでいいか。朝の練習が終わって、全員が朝食に着席する。おっさんは服を着替えるので、遅れるそうだ。

 ご飯を食べ終わるとエロイーズのお母さんに呼ばれて、馬車に乗せられてどこかに連れて行かれる。どこに行くのかな?

「鑑定師といえば、鑑定師ギルド。ここに持ち込めばわからないものはないわ。さあ、行くわよ」

 メイドに扉を開けさせると中に入っていく。すぐに蝶ネクタイとシャツ、ズボンの男がやってきた。少しくせ毛。

「いらっしゃいませ、貴婦人様。何かわからないもので送られて困られておられるのですか?そうでしょう、そうでしょう。ここでは下賤の者の目に入れてしまいますので、こちらのお部屋にどうぞ」

 扉を開くとゴテゴテとした高そうな感じの置物と絵が並んでいた。高いのかな?座らなくてもいいかなとメイドさんの横に立っておく。

「何をしているの?こちらに座って話を聞きなさい」

 離れていて話を聞いていなかったということに出来ればよかったのに。

「ほう、それではどのようなものを鑑定すればよろしいでしょうか?」

「これよ。中に入っているものを全部教えなさい」

「複製をされるのですか?それでしたら、製造元にお問い合わせください」

「中身が何か、入っているものを全部教えなさい。複製などする気もない。それなら買った方が早いでしょう」

 入っているものを紙に書かせて、僕に渡す。油に豆のエキス、卵。鉱石。

「鉱石って何?種類がわからないなら鑑定の意味がないと思うんだ」

「きちんと種類も入れなさい。私を騙そうというの?」

「いえ、製造元に問い合わせませんと複製品を」

 机を強く叩いて睨みつける。

「次は不敬罪に問うわ。複製はしない」

「か、かしこまりました」

 鉛白と書かれたその物質の知識がなかった。何だろうか?鉛白って。

「これ以上はご容赦ください」

「もういいわ、あとはこっちで調べる」

 用がないと鑑定ギルドをあとにする。鉛白とは何かわからない。何なのかを調べるためにエロイーズのお母さんと別れて、薬師ギルドの資料室に入っていく。最初は鉱石とあったから、石で何か薬で使えるのか、毒なのかわからないね。本をあさってはめくって、内容を確認していく。本部の資料だけあって、たくさんある。探すのが大変そうだよ、とりあえず石の関係の本をあさってみる。薬として使用される物ではないみたいだ。ひたすら本をとっかえひっかえ読みあさっているのに、名前が出てこない。薬にも毒にもならないなら、それでいいけど。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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