王都滞在4
「今日は肌がいつもより調子が良さそうね。何か新しいのを使っているの?」
「いつものを使っていますよ。気のせいではないですか?」
「いいえ、くすみというか、あと荒れていたのがキレイになっているわよ。気にしていたでしょう?」
「鏡はある?」
メイドさんがすぐに鏡を持って戻ってくるとエロイーズは真剣に自分の顔を見つめていた。時折触って確かめていた。
食べ終わったのでイスを降りて自分の部屋に行こう。案内してくれたメイドさんにお願いする。
「今日はランスのけりを受けて鼻血を出していたぐらいですよ。どうして?逆に酷くなるはずではないでしょうか。待ってください、あのときランスが鼻血が気になるからといってポーションをもらって、鼻血が止まったのはランスのポーションのせいでしょうか?他はいつも通りで、王城のダニエラへ寄ったぐらいです。いつもと違うのはランスのポーションです」
「待ちなさいランス。こっちにいらっしゃい」
「エロイーズとの稽古で疲れましたので、失礼します」
「エロイーズ、貴方の部屋で話しましょうか?」
殺気を感じてそっと廊下に出たところをエロイーズに捕まって連行される。力じゃ敵わないから引っ張られるままに、廊下を引きずりながら連れて行かれる。今日は休みたいのに。
部屋につくと丸机に3人が座って、鏡と化粧品が並んでいる。見てもわからないんだけど。席に着かされてお茶をもらって飲んでいる。
「ランスのポーションに変な効力があって、それが肌荒れを治したと思っているのですが、お母様は他に何か思い浮かびますか?」
「これって新作の。どうやって手に入れたの?」
「普通に買いに行きました。巡回のついでです。ふふふ」
「あら、私の分も買ってくれればいいのに。使ってる化粧品はあんまり変わらないから、ランスのポーションの可能性が高いわね。そのポーションは確かな物なの?どこから注文が入っているとか」
2人の圧に殺気が混じっていて怖い。
「ちゃんと薬師ギルドで確かめているものだし、ダメな品質と聞いたことはないよ。そのうちの何本かを自分用に持っているだけだよ。注文は国内の騎士団から普通の薬師の年間量を超える量受注していて、価格の再設定をするってギルドから聞いた。最初にいっぱい注文してくれたのはボルギ子爵のところかな」
「ボルギ子爵の騎士団か。噂は聞いたことがあるが、取り立てて良いところも聞かないところです。なんでそこが買ってくれるんだ?」
「男爵領へ子爵様が遊びに来ていたときに知り合いになって、それで気に入られてポーションをたくさん買ってくれることになったんだ。評判はよくて、作っても作っても注文してくれる」
「何も聞いていないですね、警備隊なので国軍に準じた支給品を渡されますので、各領軍の独自の仕入れはわからないです」
誰か聞いたことがあるかと話し合っていた。子爵の団長が長男と同じ年だったので、メイドさんが呼びにいかされる。せめて、男子のいない雰囲気が変わってくれるといい。新作の化粧品で盛り上がっているので、そっとお茶を飲んで待っていよう。
「どうしたんです、母上。こんな女の園に来いとか、これから色街に繰り出そうって時に」
「話が終わったら行くといいわ。ボルギ子爵の騎士団長と同じ年よね?最近気に入ってるポーションとか聞いていない?」
「気に入ってる、ああ、そういえば、ハーバードのやつ。サルエン男爵領にいったときに面白いヤツに出会ったって。祝福前の冒険者がギルド長を手加減して倒したと。そいつがポーションを作っているから買ってやってくれってね。面白い効果がついているからよ。効果は鑑定してのお楽しみだと楽しそうに話していたな。それじゃないか?ローポーションだから、他のより安いし効果はよかったみたいで、手の早いところは相当量注文していたな。国軍はそういうわけにはいかないから、関係ないって流していたのを思い出した。それぐらいだ。もういいか母上」
「そう、ありがとう。もういいわ」
それじゃと言ってすぐに退散していった。取り残された。逃げられないだろうか?どうしたらいいんだ。ここから逃げ出したい。
「普通は単一効果のけがを治す、毒消しのポーションなら解毒。効果は鑑定してからお楽しみということは、他にも何か効果があったと言うこと?聞いたことがないわね。特別製ということかしらね。ランス、制作者の貴方ならどんな効果があるのか知っているわよね?聞いたことがないとか、いわないわよね?」
2人が獲物を狙う目でこちらを見ている。答えないといけない気になる。
「確か、解毒小って聞いたけど」
「解毒?ではこの中に毒の含まれた物があるということ?そういうことになるわね。鑑定師に鑑定させるべきかしら?」
「可能性だけど、鑑定師では毒と出なくて、毎日使うことで少しずつ効果の蓄積で出る、そういうのじゃないのかな?薬にも使い続けることで、副作用の出るようのがあるから、そういうのを覚えておかないといけないんだ」
「そうなるとどうやって調べるの?私たちではわからないわ」
何かいい方法があるのかわからない。何か方法があるのかな?もう夜だから薬師ギルドは閉まっているだろうな。
「鑑定をしてみるのはありだと思う。使える量を越えているのかも知れないし、その辺はそれを売っているところが注意しておくべきだと思うけどね。何事も安全と決めつけるのもよくないし、危険だと決めつけるのもよくない」
「化粧品が悪いかも知れないと?」
「この家で調子が悪いのは2人だけ?もう1本、エロイーズのお母さんが使えば結果は出るよね?お父さんやお兄さんは調子悪くなさそうだったから、違うのは女の人が使うもので、男の人は使わないもの。ポーションを飲めばわかるよ」
マジックバックを取ってこようと立ち上がると座らされて、メイドさんが取ってきた。ゴソゴソとポーションを取り出して、渡すとすぐに飲んだ。荒れていた肌が治って、黒ずみみたいなのが少し消えた。解毒小では治らないということかな。
「解毒のポーションを飲まないといけないね。肌の黒ずみが少し消えた、完全には消えてないから。だいぶ、何かに侵されて肌に出ているけど、他にも症状が出ているかも知れないね。何でそうなっているかは鑑定待ちだね」
「本当?エロイーズ、少し消えたって」
エロイーズは黙って頷いた。自分もそれを使っていたのだ。こうなってもおかしくはない。一時的にはポーションでなんとかなるかな。対処までは考えたから、そろそろ帰りたいんだけど。
「ランス、スキルのことは普通聞いてはいけないのだけど、生活魔法にレベルはあるの?」
「普通にあるよ。レベル持ちも冒険者にいるし、薬師にもいるみたいだよ。最高でも2、3レベルぐらいって聞いたけど。それがどうしたの?」
「どの程度の魔法が使えるのか興味があって、水魔法使いとして氷の魔法は憧れがあるのよ」
「水を頑張れば氷を覚えるんじゃないの?」
「そういわれているけど、水のレベルもそんなに高くない。生活魔法だけでどれだけ努力すれば、使えるのかと思って」
水が上がらないから誰でも使えるだろう生活魔法でどうにかしようってこと?
「無理だよ。詠唱でろくに魔法が使えない人は生活魔法は使えない。それだけは絶対に言える。生活魔法って詠唱がやってることを自分で魔力を操ってやるんだ。水なら詠唱は川を作ってそこに水を流すみたいな。生活魔法は湧き水で川を作る感じかな。生活魔法って馬鹿にするけど、無詠唱は有利だと思っているよ。それに慣れると相手が詠唱をしている間に、たくさんの魔法が放てるしね」
「ミスリルが蒸発したとか聞くけど、どのくらいのレベルに相当するのか教えて欲しいわね」
「今の生活魔法のレベルは8だから、詠唱の魔法を参考にいうならそのままレベル8だね。どのくらいかはそのレベルの魔法を見せてもらってね。この辺じゃ使うことは出来そうにないかな。威力だけに振ればレベル9ぐらいはいけるはず」
「国の軍に入る気はない?今からでも入れる」
どこかの国に味方するってのはない。
「色々見てまわりたいし、軍って自由に出来ないから嫌だ。それに弱いのしかいないでしょ?つまらないよ。せめて強い人がいないとね」
「剣なら強い方がいるわ。レベル8よ。その人から剣の指導を受けるとしたら?魅力的じゃない?」
「弱い。人に教えられる程度ならちょうどいいかも。僕じゃなければね」
「何を言ってるの?頭、大丈夫?エロイーズと剣をかわして、それよりももっと強いのよ」
「その前に、僕は祝福前だからスキルは持てないんだけど。教えてもらう意味はあるの?せめて、スキル持った他の人がいいんじゃない?」
あっと言う顔になって、レベル8が弱いとかおかしいとブツブツ言っていた。
「そろそろ寝たいから部屋に戻ってもいい?」
「そうだな、子どもは寝る時間だ。ゆっくりと寝るといい」
「お世話になるから忠告を。害意を持って近づけば、敵意と見なして排除する。敵は盗賊と同じだから、死んでも文句言わないでね。おやすみなさい」
メイドさんの後についていって、泊まる部屋に入ってしばらく寝付けずにいて、布団にくるまっていたらいつの間にか寝ていた。
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読んでくれてありがとうございます。
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