王都滞在2
「無理無理、どうやった?剣に触れても形が崩れるとか、魔法剣では聞いたことがあるが、うちのただの木刀で出来るとか、私が出来るとは思えない」
「魔法探知があるなら出来そうだけど。無理なのかな?魔力を扱えれば出来る。僕の師匠は気合いだっていってた。感覚で出来る人だったから、エロイーズも気合いでいってみる?土でいい?汚れが気になるなら水でもいいけど、形が見えにくくてわかりにくいけど」
「まずどうやるか教えてくれ。見ただけで出来るか」
「師匠は見て覚えろって」
1回だけでわかるかと怒った。ちらっとドレスの人を見るけど、扇子で顔が見えない。もう1回とか無理だよね。
「いいから説明してくれ。理解不能だ。なんで切れたとか、普通は切られたまま剣を通過して魔法を受けるだろう?土とか石は逸らしやすいが」
「そうだね、魔法だから魔力でしょ?魔力を剣に流して切るの。ミスリルは魔力通しやすいからやりやすいかも。通さないならアダマンタイトの方が固くていいよね。じゃあ説明してみるから見てて」
刃は横向きで木刀を持って刃の前に土の塊を出す。
「魔法だとこの土の塊が切っても、そのままやって来る」
木刀にそのままぶつけるとムニュっと2つに割れて、剣を通過して通り抜ける。
「魔法の詳しい説明はしないけど、魔法の中にこの魔法っていう、手紙?本?みたいなのがある。で、もう1回同じのやるね」
次は木刀に魔力を通しておいて、土が当たって通過しようとした瞬間に形が崩れて落ちた。
「剣に魔力をまとわせてやることで、魔法っていう手紙が破られちゃうからただの魔力に戻る。簡単な魔法はこれで行けるかな。大きさの大きいのだと切れるだけの魔力と分散になるだけで、勢いが落ちないこともあるから後ろに人がいるときは気をつけてね。普通に相殺する魔法をぶつけてもいいよ?」
「瞬時に相殺する魔法なんか熟練の魔法使いでも出来るわけがない」
「ちょっと、ちょっと待ちなさい。そんな問題じゃないわ。ランスと言ったかしら?今、説明するときにどうやって魔法を使ったの?詠唱が一切聞こえなかったんだけど、小声でやってたの?」
エロイーズに説明をしていたら、後ろから慌てたような声でエロイーズのお母さんが話しかけてきた。
「お母様、ランスは生活魔法でワイバーン単騎討伐をする冒険者ですよ。無詠唱は当然でしょう。生活魔法は詠唱しないのですから。そのくらいは私でも知っていますよ」
「貴方と剣でいい勝負をしていたのはどうしてなの?生活魔法ということは、魔法使いということでしょう?」
「私とスキルなしでいい勝負の出来る、生活魔法の使い手です。本来は無詠唱のワイバーンを討ち取れる子どもです。祝福を受けていないのにこの技量は素晴らしいの一言です。将来は素晴らしい冒険者になることでしょう」
「子どもがワイバーンを討伐したという与太話は本当だったと?ミスリルが蒸発したという、おかしな話も?」
エロイーズは力強く肯定した。何か言いたげだったが、ふらついて倒れそうになるのを立て直す。
「エロイーズ、わかっていてお見合いの話にランスを引き合いに出したわね?どこを探したら、これだけ剣の出来る魔法使いがいるのよ!魔法使いとしてもワイバーンだなんて、普通は軍隊が対応するのに。ああ、頭が痛くなってきたわ。誰か、部屋まで連れて行って頂戴」
メイドさんに連れられて、訓練場のような場所から去って行った。
「行かなくて大丈夫なの?」
「心配ない。いつものことだ。それより魔力というのはどうやって剣に纏わせるのだ?」
「いいならいいけど、この木刀に魔力を纏わせるのは、でもエロイーズは魔力感知を持ってるからわかるんじゃないかな?魔力の感覚っていうのが。それがわからないと教えようがないかな。魔力を出してみるから自分でわかるかわからないで教えてもらっていい?」
手に魔力を魔法が使えるぐらい出してみる。わかるというので小さくしていって、わかるというので少しずつ小さくして、わかるかどうかを確認していった。
このくらいか、強めの魔力持ちの人がわからないぐらい。人の魔力は判別出来ないか。
「自分で魔力を出している感覚はあるの?」
「あるかな。たまに魔力を出しているのがわかるときがある。ハッキリとはしないけど感じる。そういうときは心を落ち着けるとおさまるからそうしている。ああ、これはお母様に教えてもらったんだ」
「魔法探知だから魔力までの繊細なのは見えないのかも。魔法になった瞬間にわかるスキルなのかな。そうなると魔法になるようには難しいから。魔力をどうにかして、感じられればいいか。それか、体で覚える。それぐらいか思いつかないよ」
魔力をどう感じられるかわからないけど、やってみるしかない。でも捌くのは出来ていたんだから、無意識に魔力を纏わせているのかもしれない。
「最初の魔法を捌いていたのはどうやっていたの?軌道をそらしていたように見えたけど」
「わずかだか、気合いを込めて叩くとそらせるようで、意識はしていないんだ。本当に勝手にどうして、切れるなどと大それたことは思ったこともない」
「思っていないだけでもっと追い込めば出来るんじゃないのかな?」
「私が追い込まれるなんて考えたこともないけど、スキルを取り立ての頃ぐらいしか追い込まれた思い出がない。ランスが本気になれば、追い詰められることもあるかも知れない」
「それじゃあ、僕も本気でやってみるね」
少し離れて木刀の握りを確かめる。構えると息が静かになるまでゆっくりと行う。
「いつでも来い」
同時に行うのはただの土の塊。当たったとしても少し痛いぐらい、無視出来るぐらい。構えた切先の先にいるエロイーズを見る。近づいていって刃の届く範囲に入る。踏み込みと同時に振り下ろされる剣に下から上に切り上げて刃を当てて、体に当たらないようにそらす。それと同時に土の塊を左右から飛ばす。素早く反応したエロイーズは途中から軌道を変えて、土をそらしている。そらしてがら空きの正面に向かって、突いていく。後ろから土が飛んでくる。素早く僕の剣を下に弾いて、後ろの土を柄の部分で当たらない位置にずらしていた。弾かれた勢いを回転に変えて、上から振り下ろし土はその後ろから来るようにする。今度はしっかりと受け止めると少し押し込まれたようだけど、そのまま土を弾くようにいなし、力ではじき返された。あんまり僕の重さがないから、どうしても軽くなるのはしかたない。間合いを少しとって3方向からの土の塊、前2つはそらして後ろからのはかわした。かわしたところを狙って、素早く薙いでいく。真上から土を落として、打ち合いになって土が当たる。関係ないとばかりに打ち合いになるが、左右、後ろなどの様々な場所から土を飛ばしていく。最初は当たるのをいやがったが何度も当たると、関係ないと打ち合いを楽しんでいた。しかたないので、頑張って相手をしていく。
ダメだ、握力が持たない。手がしびれて木刀が手を離れる。地面を転がる木刀、振り下ろされる木刀を半身で避け刃に掌底をたたき込んで、踏み込むと持ち手の指に蹴りを入れて木刀をはたく。
「疲れたー」
「いいぞ、いい。ランス、もう1度やろう。はき落としてからの一連の動きが素晴らしすぎる。何もなしでもだいぶ強い。楽しい。よいよい、よいよい。楽しすぎる。もう1度やろう」
「暗くなってきたからやめよう」
「このくらいの明るさなら出来るだろう。何を言っている。ここからが楽しいんじゃないか」
夜目が発動しないようにしているので、暗さがわかる。意識的に使わないようにして普通の暗さがわかるように。薄暗くなっている。もうやめてもいいはず。
「やらないよ」
「なんだつまらん。楽しくなってきたところなのに」
「暗くなったんだからやめどきだよ。メイドさんも汚れを落とす準備をしてくれているよ?ほら、洗われてきたら?」
「ランスはどうするんだ?」
水の塊を出してその中をくぐる。何度かくぐると熱風で乾かしながらクリーンで仕上げる。
「こう、汚れを取って乾かす」
「便利だな、それ」
「生活魔法だからね。こういう使い方が本来だと思うよ。ほら、待ってるんだから行って」
「一緒に入ろう。祝福前なんだ、別にいいだろう」
メイドさんが偉いっぽいメイドさんを連れてきて、メイド長さんだった。
「お嬢様、嫁入り前の生娘が他家の男性と一緒に入浴など言語道断。こんなに汚れて、さあ参りますよ。おてんばが過ぎます。少し、花嫁修業でもされてはどうですか?」
顔を引きつらせて、メイド長さんに連れて行かれた。なすすべなしのようだった。ほとんどのメイドさんはエロイーズについて行った。残った1人のメイドさんがこちらへやってくる。僕の荷物を持っていた。
「お部屋にご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
ついて行くと割と広い部屋に通されてた。
「こちらへお泊まりいただくことになります。何かご用の際はお気兼ねなくお声がけください」
「もっと狭い部屋ってないの?」
「そうでございますね、お客様用のお部屋で、これ以上小さい部屋はございません。申し訳ございません」
深々と頭を下げられて、じゃあしかたないと納得する。どうにもならないならしかたないよね。
「お食事のお時間になりましたら、お呼びいたします」
返事をしてから荷物をベットの近くにおいてイスに座っておく。暇なのです。魔法の練習でもしていよう。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
今年も読んでくれるんですか?ありがとうございます。お年玉はないんで、1時間後にもう1話更新しますね。
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