王都滞在1
「ランス様はどこに泊まられるのですか?出来るまでの間とはいえ、1ヶ月ほどはあるはずです。当家の屋敷に客人としていらしてはいかがでしょうか?」
「サンデイヴを見たら殺しそうだけどいい?」
「いいわけないです。サンデイヴお兄様を殺すなんて、酷いですよ、もう少し穏便になりませんか?」
「難しいな、不意打ちで殺す気だった。なら身に振られた火の粉は、自ら払うしかない。1番いいのは殺すことだけどね。それをしないだけ、ましだと思ってもらわないと。本気で謝るまで辺境伯を追い詰めてもいいけど、どうする?詰めてもいい?それともこのままがいい?」
このままでと不満そうに口にした。
「そういえばランス、冒険者ギルドのエインヘニャル様を呼び出したとかなんとか聞いたことがあるんだが、本当なのか?」
「呼び出したんじゃなくて、勝手に来たんだよ」
「勝手に来るものか、冒険者ギルドの総本部長のエインヘニャル様が一体何の用なんだ。お目にかかれるのも王族級だぞ?この平和なラント王国に来るはずもない。勇者にだって会いに来ない、あの総本部長だぞ。それで何をしたんだ、何が本当なのかわからない。あの輝く太陽を無力化したとか、ワイバーン単騎討伐とか、どっかの総本部が動いて冒険者ギルド総本部が動かざるおえなくなったとか。どれが本当なんだ?」
「ワイバーン単騎討伐で辺境伯と知り合って、シルヴリンにソードスラッシュされた。冒険者ギルドがF級保護の自らの規則を守っていないから、この国のを潰そうと思ってたら薬師ギルドが間に入って動いて、じっちゃんが来たかな。僕を倒せるヤツ出せっていったら太陽が来て、相手にならないからもっといいの連れてこいっていった。無理だってじっちゃんが言ってた。それで、ちゃんとF級の扱いをするように誓約させた」
じっちゃんってエインヘニャル様を呼ぶなと怒られた。本人は何も言ってないからいいのって言い返す。
「なんで薬師ギルドがそんなに動いてくれるんだ?」
「F級は薬師ギルドの中で1人だから?そのまま高位の薬師になるから同等の扱いをしてくれるっぽい。薬師ギルド総本部がうちの薬師に何するんだっていうのと、自分のところのF級保護はちゃんとしていないのかっていうので、動いてくれたんじゃないのかな」
「は?F級薬師?巷の領軍界隈で流行のローポーションを作っているのが、F級薬師と聞いたことがあったが、ランスのことだったのか?」
「たぶん。F級の薬師は僕しかいないはず。ボルギ子爵騎士団長のハーバートがいっぱい注文してくれて、追加もしてくれてるね。いっぱい注文が来すぎて、薬師ギルドが困ってた」
「最近の話題はだいたいランスのことだったのか」
ため息をはきながら見つめられる。
「よし、うちに泊まっていけ。武闘派なうちの家だが、祝福前なら問題ないだろう。スキルなしで私と張り合えるならお父様も文句もないだろう」
「少々お待ちください。ランス様はエルミニド辺境伯の縁者です。許されません」
「時間が1ヶ月はかかるのに、宿泊場所も提供出来ないのにか?婚約者なのに家にも泊まってもらえない、招待にも応じてもらえない。そんなかわいそうな、婚約者をうちで泊めようというのに何が問題だと?グレンフェル家では不満なのか?」
「グレンフェルは国軍副軍団長を務めている家柄では?そのようなところにランス様を置いておけません」
何やら泊まるところで揉めている様子。どうしようか?
「薬師ギルドで聞いてみるから大丈夫だよ」
「「ダメ」」
「揉めるぐらいなら、自分で探して泊まるから」
2人がいきなり、宿屋では危ないとか、そんな目の届かないところには置いておけないとか、せめて貴族街の中にいないといけないとかいってくる。
「それでどこにいればいいの?村に帰ってもいいんだけど」
「これはしかたないだろう、グレンフェル家で預からせてもらう」
泊まる場所は決まっているのだが、毎日会えるようにとかデートは週に5回とかシャローザがいっている。そんなに行くところってあるのかな?王都だから楽しいところもあるんだろうな。知らないところばかりだから。
「そんなことを言ってもランスも薬師ギルドや冒険者ギルドですることがあるんじゃないのか?」
「薬師ギルドでポーションを作るぐらい。あとは薬師ギルドと冒険者ギルドの本を見てみたいかな。冒険者ギルドの本は見たことないのが多いかも。楽しみだな」
「そんなに忙しくないなら私の稽古に付き合え」
「イヤだよ。魔法使いに剣の稽古へ誘うのは違うと思うよ」
しばらく稽古しろとうるさかったので、週に1度相手にすることで落ち着いた。グレンフェル家で降ろしてもらって、中に入るとき門番に不審な目で見られたが何も言わずに通された。家の中に通されると上から降りてくる人に声をかけられた。
「エロイーズ、その子どもはどうしたの?とうとう子どもが欲しくて、さらってきたのかしら?それならそうと、警備隊などやめてお見合いの準備をするわ。どんな方が好みかしら?」
「ただいま戻りました、お母様。さらわれた子を助けることはあっても、さらうようなマネはいたしません。紹介いたします、冒険者のランスです。エルミニド辺境伯家、4女のシャローザ様の婚約者になります。お見合いですが、ランスより強い男ならばお見合いに行ってもいいですよ。お母様」
「そう、なら、どうしましょうか、国軍の若手で伯爵家の次男の子なんてどうかしら?」
「お母様、ランスより強い男と申しました。どの程度の物か知りませんが、ランスに並ぶような男は、この国中を見渡してもいないでしょう」
沈黙が流れて、エロイーズは執事さんやメイドさんに指示を出して僕に泊まる部屋を用意させている。
「よし暇だから少し付き合え」
連れて行かれた先は庭とかではなく、地面むき出しの広い場所だった。家人と思われる人達が訓練しているが、エロイーズを見ると端の方へよっていった。何を思ったのか、木刀を渡してきて構えた。ええ?
「行くぞ、ランス」
一撃で決めようとする大振りの一撃を土にさした剣でそらした。自分の力だけじゃ、そらしきれないと思ったから土にさして力を少しでもそらす。エロイーズとバッチリと目が合う。
「楽しいな、楽しいぞランス」
嬉しそうな顔で距離をとって仕切り直す。力で来るのかな?フェイントを織り交ぜながら、本命の一撃をなんとか皮一枚でかわしていく。イタ、頬を剣先がかすってヒリヒリする。戦い方を変えてきてやりにくい。真正面でやるのはやめたようだ。対処をどうしようか考えていたら、木刀を弾き飛ばされてしまった。そのまま振りかぶるエロイーズ。意を決して懐に飛び込むと腕を掴んで飛び上がると、顔面に膝蹴りを食らわせてそのまま首を絞める。剣を捨てて外されると地面に投げ捨てられるのを転がって衝撃を弱めてすぐに立ち上がる。
鼻血をつけながらゴシゴシしているエロイーズ。
「負けた」
「拾え、楽しい時間だ」
「じゃあ、魔法の訓練にしようよ。魔法の方が得意だしね」
周囲がざわざわと騒がしくなる。
「木刀で魔法を切ってみてよ」
「何言ってるんだ、魔法が切れるわけないだろう?」
「じゃあ、何か簡単な魔法使ってよ」
「私は魔法使いじゃない」
「僕は祝福をもらってないんだけど?」
鼻血がまだ出ているのが気になる。メイドさんが持ってくれている荷物のところに行って、持っているローポーションを取り出してエロイーズに渡す。
「鼻血が気になるから使って」
遠慮なく飲み干すと鼻血は止まったようだ。
「自分の魔法を自分で切っても消しただけだと思われるから、誰か簡単なヤツを出して欲しいんだけど。誰かいないの?」
「そういわれてもな、うちは剣や槍なんかの武技使いばかりだぞ?」
「そこは使えるようになってよ。覚えたら絶対に便利だと思うんだ」
何を言ってるんだと困っている。剣術では力もないしスキルの恩恵も受けていないから、ギリギリのところで持ちこたえて反撃するほどの余裕がなかった。本気になられると、こっちが考える間もない。
「簡単なので僕に向かって使うだけでいいんだけど。エロイーズには僕が加減してやるから」
「お、奥様。このような場所へ、どうされましたか?」
「娘の様子を見るのに誰かに報告がいるの?」
「いえ、そのようなことはございません。来られることがあまりありませんでしたので」
「埃と汗のむさ苦しいところへ、好んで来ようとは思わないわ」
ドレスのままこちらへやってくる。ここにいる全員の目がこちらに集中する。
「見たところ、そんなに強いようには思えない。見合いは出来そうでよかったわ」
「魔法が使える人はいないの?」
「ここにいますわ。水魔法が使えるわよ」
「本当?攻撃魔法って使える?ええとね、レベルの低いのでウォーターアローやボールなんかでいいんだけど。僕に向かって打って欲しい」
見上げるように頼んでみるけど、やってくれるかな?ダメなら他に探せばいいかな?
「お母様、私からもお願いしてもよろしいでしょうか。ランスがいうには魔法が切れるそうです」
「へえ、そんなほら吹きをうちにあげるなんてね。出来なかったらお見合いの1つもこなしてもらいます。わかりましたね?」
エロイーズは凄く苦々しい顔でわかりましたと答えていた。
「ならいいわ、始めるわよ」
詠唱が始まったので剣を拾って、少し距離をとる。出た瞬間でもいいけど、それじゃわかりにくいから向かってきたときに切るほうがいいかな。正確には魔力まとわせた剣で切る、なんだけどね。魔法が僕に向かってくるってことを確認出来ればいいから。
飛んでくるウォーターボールに合わせて剣を振り下ろす。切られた水は形を失って、その場に落ちて土にシミを作った。
出来ていたので戻るとエロイーズにあれをやってという。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
今日で今年度の更新最後になります。お読みいただき感謝しておりますm(_ _)m
来年も読んでくれると嬉しいです。
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