王都でお仕事中4
武器は今ので十分なんだけど、剣はいるのかな?普通のは重くて持てないかも。短いのはナイフでいいかな?昨日の武器屋に行ってみよう。
幅広い品ぞろえで、ここにくればだいたいの武器が見つかるはず。中にはいると剣の並んでいる場所に立ってどれがいいか見ている。鉈のような、剣よりは短くて、ナイフよりは長い。肉も切れるといい。大きなナイフみたいな感じ?
「何かうなり声が聞こえたと思ったら昨日の坊主じゃねえか。この辺は大きくて使いづらいぞ。遠距離で狩猟をするんじゃないのか?」
「何でわかったの?」
「持ってる弓とナイフは定番中の定番だろう。いりそうなものはここにはない。こっちだ」
店の受付台の近くにナイフの各種がおいてあった。
「薪割りとかはこの辺だな。肉の解体に便利な刃物はこの辺にまとまってる。冒険者は現地調達することもあるから野宿用のをまとめてやってんだ。昨日のナイフにあわせるんだったら、刃の形状の違うこれらはどうだ?」
ドワーフなのかな?何本か選んで受付に置いてくれた。
「全部欲しいけど、まとめておけるものってある?」
「太っ腹だな。あるぞ、この皮巻きの収納だ。これに入れておけば、必要なときに広げて使える。巻き込むから小さくなりやすい。どうだ?」
「おお、便利だね。それにする。カードって使えるの?」
「冒険者カードなら使えるぞ。本当にこれらでいいのか?鉈は?火はどうするんだ?あるのか?」
「生活魔法があるから使わないかな。解体の刃物の組み合わせはちゃんとしてるし、手入れもされている。善し悪しはあまり分からないけど、持った感じも手に馴染んだからこれにする。切れそうなのはわかるから使うのに十分だよ」
気に入ってくれたんならと革巻きに収納してくれて、支払いを終わらせて出て行った。値段はそれなりにするけど、これから使うものだから揃えておいていいだろう。
他に買わないといけないものはないかな。鍋も持っているから、野外でも大丈夫。まだ時間あるのにな。ふらふらっと冒険者ギルドによって、F級の依頼を眺めている。側溝の掃除。草抜き。下水掃除。どれがいいだろうか?前に下水掃除をしたら、クロコダイルがいた。側溝の掃除かな?草を切るのは得意だけど、手で抜くとなると大変そう。
「これをする」
「側溝掃除か、F級らしいな。依頼は職人地区の方だ。ちょっと待てよ、地図を出す」
レスタが王都の地区別の地図を出してくる。職人地区の地図を広げる。
「まず、大通りを王城の方向へ進んで、途中で建物が変わる。貴族門には近づくな、用事がないと殺されても仕方ないからな」
「そのときは隊長か副隊長の人を呼ぶよ。顔に覚えがあると思うから」
「知り合いなら、いいか、用事もないのに近づくなよ」
「近づかないよ」
用事もないのに近づいたりしない。危ない。
「その反対になるが、壁があって少し奥に入ったところが職人地区になる。でだ、初めての時はとにかく迷う。大きな道があるわけでもなく、馬車が通るぐらいの道が大きいぐらいだ。とにかく依頼人に会うのが大変だから、地図でいうとココ。武器ギルドのギルド長のところ。ギルド長も職人だからいつも何か作っている。だから依頼の確認が大変なんだ。行ってみればわかる。ケンカとかはしないようにな」
地図をじっと見て覚える。道が狭いみたいだからよける場所が少ないのかな?
「目印のようなものもないからその辺で道を聞くしかない。俺も職人地区では迷う自信がある。だから頑張ってやるしかない」
「とにかく行ってみるね」
冒険者ギルドを出ると王城のほうに向かって歩いて行く。とにかく人が多い。昼間はたくさん歩いているので、なるべく避けて進んでいく。貴族街に近づくにつれて人は少なくなっていく。今度はメイドさんや執事さんが目につくようになった。おつかいかな?貴族街とは逆の方向には壁があって中が見えない。どこから入ればいいのか?見回しても入り口らしいものはない。壁沿いに歩くと途切れたところから入れるようだ。中に飛び込むと急にたくさんの音が飛び込んできた。金属を叩く音、何かが当たっているような音、こすれているような音。大音量がいきなり襲ってきた。めまいがしそうなのを堪えて、道に入っていった。
少し歩いたけど無理。迷路みたい。同じように見える風景をぐるぐる回ってる感じ。歩いている人を発見。
「そこの人、武器ギルドのギルド長の家って知ってる?」
「ギルド長?誰でも知ってるだろう。なんだ?小さくて見えないか、武器ギルドのギルド長の家には目印のでっかい剣が刺さってんだ。そこの石炭の箱に登ってあっちほうを見てみな」
箱の上に登ると屋根の上に剣が見えた。凄い剣が見える。
「でっかい!あれを目指していけばいいんだ。ありがとう」
「おう」
依頼書を持ってその辺の箱に登って、でっかい剣の刺さっている家を目指す。わかりやすい目印を教えてもらったので、なんとなくこっちかなって進んでいったら、ちゃんと剣の刺さった家の前についた。カンカン聞こえる。
「こんにちは!」
大きな声で叫んだけど、返事は帰ってこなかった。かわりに金属を叩く音が響いている。入り口から中を覗く、赤い火の前で鎚を振り下ろしている、ひげもじゃの本とかの特徴のドワーフがいた。ここまでひげもじゃはなかなかいない。その辺を普通に歩いているので気にしてはいなかったけど。
「こんにちは!」
聞こえていないのか、一心不乱に鎚を剣の形になっている赤い塊へたたき込んでいる。いつ終わるのかと待っているのもあれなので中に入って、火の粉が飛び散るところで叫んだ。
「こんにちは!」
こっちを見上げて、すぐに作業に戻っていった。少し待つことにした。ジュッとしてから次の作業にかかろうとしたので、もう1度叫んだ。
「こんにちは!」
「作業の邪魔だ。帰れ」
「依頼出来てるんだ。やる場所と受領だけもらったら帰る。教えて」
「知らねえよ」
何か作業をしようとしたので、炎を出す。
「これを釜に投げるよ」
「そんなんで壊れるか、バカが」
ひょいっと投げ込むと釜が溶けて、熱が漏れ出て消えていった。
「な、何しやがんだ。どうするんだこれ」
「やっていいって言った。話を聞かないのが悪い。全部溶かそうか?」
同じように炎を出して、剣に向けるとさすがに作業を止めた。
「おめえさん、どこのギルドのもんだ?」
「冒険者ギルドだよ。依頼出来てるのに。邪魔されたくなかったら依頼を出さないことだね。しかもF級の依頼。やらせる依頼に、あんたが対応しなかった。違う?」
炎を大きくしていく。
「ギルド長なら受付でも置いておけ。自分で対応したくなかったらね」
「はっはっはっは。その通りだ。自分でそういうのをやりたくねえならギルドの金でやっちまえばいい。いいこと教えてもらったぜ。それで、何の依頼だ?」
「側溝の掃除」
「ああ、あれか。力仕事になるかも知れねえが、おめえさんでやれるのか?」
依頼期限は数日とあったので、大丈夫じゃないかな。
「時間はあるから、出来るはずだよ。いいからやる場所を教えてよ」
「せっかちだな。ちょっと待て。最近のF級は過激でいけねえ」
依頼できてるだけなんだけど。終わったら帰ってゆっくりしよう。
「こっちだ」
外に連れて行かれると水がなんとか流れている側溝を指差していた。砂のような、黒いものが詰まっている。時間が経てば流れている感じ。
「雨になるとあふれ出て、作業場に入り込んじまう。これじゃ鍛冶が出来ん。きれいに流れるようにしてくれればいい。道具はその辺にあるから使ってくれ」
「中のこの土か砂かわからないのはどうしたらいいの?」
「横にでもあげといてくれれば、雨でながれる」
「側溝に戻っていくだけだよね?回収かひとまとめにして捨てないといつまでも変わらないと思うけど、横に上げて置くだけでいいんだよね?」
流れた先も詰まってると思うけど。どこまで続くのかな?長いのかな。
「そうか、それで変わらないのか。ちょっと待ってろ、入れる箱を探してくる。その辺のヤツなら空箱があるはずだ」
「ちょっと待って、依頼の場所を正確に教えて。細かいのが通っているよね」
「細っこいのは工房から出てるもんだ。そこの掃除はしなくていい。ここの大きな側溝をこっちだな、向こうに向かってやってくれればいい。突き当たりで終わりだ。この大きなのだけやってくれればいい」
板石のようなところが見えるから、それに沿ってやればいいのか。歩きながら側溝の上に渡しをしているところも普通にある。領主街の時みたいに、水の勢いでなんとかは出来ないかも。作業場に水が入るって言っていたしね。どこに流れているのか、探して歩く。生活魔法で流すとか出来ないと何日かかるかわからないね。割と長い。どこまで続いているんだろう、これF級じゃ無理じゃないかな?城壁のところまで来て、地下にいっているのかな。まずはここを水で叩く。染み込むけど、流れない。風で巻き上げてみる。黒い砂っぽいのが山になり、自分よりも大きくなって倍以上になったとき、底が見えた。水を大量に流し込んでみると染みこむのが凄く早い。これはもうちょっとと思って、引っかかりなく流れるまで、大量の水を流し込んできちんと流れるようになった。これだけ流れれば十分だろう。側溝から黒い砂を巻き上げて、横に山積みにしていった。箱が用意されているところは入れたよ。原料のような石が巻き上げるときに残ることがあって、側溝にあるのでゴミかなと思って、見つからないように調べてみるとミスリルやアダマンタイトだった。そっとバックに入れてしまい込む。そのうち使うつもり。
結構な時間をかけて終わらせた。F級の依頼としては難しいんじゃないのかな?掃除の得意な人達に頼むべき依頼だよ。でっかい剣の刺さった工房に戻って、中に入ると釜を直していた。
「終わったよ。次は冒険者ギルドじゃなくて、それが出来る人達に頼むようにして。普通のF級じゃ無理」
「お、出来たか、一応見せてもらうぞ」
直すのを途中でやめると外まで出て溝の底を見ていた。
「こんなに深かったのか。一体どうやって」
「それよりも箱が足りなかったから、横に山積みにしているから自分たちで回収してよ。雨が降って元に戻っても、知らないから」
「よくこんな短時間でやったな。これなら文句はねえ。名前を書くから依頼書を出せ」
「次は冒険者ギルドに依頼を出すんじゃなくて、掃除の出来る人に依頼を出してよね」
わかったわかったと話を聞いていない返事をして、受領のところに印をもらって、さっさと帰ることにした。帰りも迷うけど暗くなる前には冒険者ギルドについた。
「終わった」
「おう、お疲れ」
「この依頼、次からやめたほうがいい。F級じゃ1ヶ月以上かかっても終わらないし、武器ギルドのギルド長がすぐに依頼のことを話を聞いてくれるわけじゃないからダメだよ。あと側溝の深さが1mぐらいで最後の流す場所は、底が見えるまでに僕の横に山が出来るぐらい詰まってた。雨水を流す浅い側溝じゃない。F級じゃ半年はかかるね」
「はあ?そんなにヤバかったのか?」
レスタはギルドカードと依頼書の処理を進めていた。
「黒い砂っぽいのが側溝いっぱいに詰まっていたし、ゆっくり水は染みこんでいたから、雨が降らないとあふれなかったようだし。あの黒い砂、魔法で浮かしたから重さはわからないけど、置くときに重そうな音がしてた。依頼を失敗してもしかたないよ。力自慢の冒険者でも派遣したほうがいい。絶対にF級の依頼じゃない」
「そんなにすごかったのか」
「側溝の長さも1区画分あったんだけど、それに似合う依頼料なの?本当に無理だよ」
「次は気をつけておく」
ここでそんなに依頼を受けないからいいけど、報酬と合わない気がする。カードをもらうと宿屋に戻って、外を眺めながらのんびりする。明日も暇だな。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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