王都でお仕事中2

 薬師ギルドに来るともう1度ビーカーを作ってから、お昼を過ぎて食べに行く。ちょっといい感じのパンを買ってからタレのついた串を食べる。串は美味しい。お昼からは調合をしていいと言われているから、さっさと食べ終わると調合室に案内して貰う。倉庫の一角にあって、何室かある。広さは何人かで作るためひと部屋が大きい。弟子がいる人もいるだろうから、その人を受け入れるために大きく作ってるのかな。部屋番号が扉にあって、鍵にも番号が刻印されている。3番に入っていく。

 一通りの道具が揃っている。手入れがされているので、すぐに使えるようになっていた。領主街ではちょっとした部屋だったけど、ここはちゃんとした薬を作る施設が揃っている。

「材料を持ってきたよ。中に入れるかい?」

「うん。お願いします」

 それは特大の袋。それが4つ中に入れられる。恐ろしい量だ。

「とりあえずの空き瓶を置いておくから、足りなくなったら声をかけてくれれば持ってくるから」

 とりあえず5箱ある。扉を閉めて内側からも鍵がかけられるから閉めてしまう。袋の中身を1袋ずつ見ていくが、薬師ギルド品質なのできっちりと中でそろっている。3分の1だけ即席で作ったビーカーに取り出す。仕分けないのですぐに抽出にかかれる。薬師ギルド内なら邪魔は絶対に入らない。火加減を調節しながら薬草を煮出していく。煮出したら少し冷ます。急激に冷ますのもいいけど、ビーカーが割れるので出来ない。風と氷で涼しい風を作り出して、少しは早く冷やす。時間をたっぷりかけて、冷やすと調合して調整していく。仕分けがないと抽出と熱取りで時間がかかる。速く仕上がる分、楽だけどね。自分で採集するのも好きなので、その分ちゃんと自分で作った感じがするから材料からやりたいけど、これだけの量を集めるのは時間がいるから今は無理かな。

 抽出段階が終わって、抽出後のしなしなとした薬草たちはどうしたらいいのかな?部屋の中に置いておけるから、1度ポーションにしてみよう。抽出液を混ぜていって調合していく。自分の中の割合は決まっているので、次々と混ぜて調整を行っていく。出来たローポーションを用意された瓶に詰めて込んでいく。4箱ちょっとになった。瓶が足りないのか。部屋の外に出ると職員の人がいたので話しかける。

「抽出カスはどこに捨てるの?瓶が足りそうにないから追加が欲しいんだけど、どうしたらいい?」

「ランス君、あとは明日に来てからやりなさい。薬師ギルドもポーションの調合に時間がかかることは重々承知。ランクの高いポーションならなおさらだ。だけどね、一息つけるのなら1度きりのいいところでやめて、体のことを大切にするようにも指導している。体を治す薬師が、その薬のために体を壊すのは本末転倒だからだ。もう夜になっているよ、体を休めて元気に薬を人々に届けるのも薬師の仕事なんだ。元気なら次もその次も薬を作ってもらえる。だけど、体を壊してしまったら次はないかも知れない。その次がないかも知れない。そんなことにはならないようにするのも、ギルドとしての役目なんだ。今日は宿に帰って、明日また来るように」

「もっと作れるのに」

「明日作ればいい。明日頑張ればいい。今日は休みなさい。休む時間をきちんととる。ここでは昼夜問わずに働くのは君のためにならない。いいね?」

「う、うん」

 諭されるようにいわれたので、倉庫から出て行った。1人2人残っている職員の人はいるけど、ほとんどいない。外に出ると暗い中に街灯が道に沿ってついている。その下を通って宿に入ると、夕食をすぐに持ってくるかどうか聞かれたのでお願いした。


 翌朝になって薬師ギルドが空く時間に滑り込んで調合室に入っていった。カスは扉の前に篭か何かに入れて出すこと。瓶は10箱分用意されて中に入れてもらった。3分の1を2組で作り始める。ここに来て思い出したけど、王都の商業ギルドにも呼び出されていたはず。でも、あれって辺境伯領で行ったから行かなくてもいいと思うんだけど。ポーション作りが終わったら聞きに行ってみるか。


 抽出が終わって冷やしている最中に職員の人が入ってきた。

「作っている途中ですまない、辺境伯様から王都にはどのくらい滞在するつもりなのかと問い合わせがあって、あと3日で到着するので辺境伯邸に来て欲しいそうだ」

「わかった。薬草がどれくらいあるかわからないけど、他の用事もあるから王都にいるようにしておくね」

「王都にいると伝えておく」

 お礼を言ってポーション作りを再開する。冷ましているだけなので時間がたつのを待っているだけ。


 調合が終わると瓶詰めをして終わらせていく。ポーションは作り終わったら何本かマジックバックに入れておく。毎回何本か自分用に持って帰っている。作業を終わらせて、職員の人に終わったことを伝えた。

「薬草はまだあるの?」

「あるが休みを入れて、明日、明後日は休んでから用意する。休みの間に用事をするのもいいし、ベットでゴロゴロしているのもいいぞ」

「明後日?明日じゃダメなの?」

「ちょっと、ビーカーとポーションの鑑定で人が足りなくてな。ビーカーの値段が決まってない分、ポーションはすぐに支払い出来るようにしたいから休んでくれ」

 鑑定に時間がかかるのならしかたがないかな。本数の確認と引き渡しを終わらせてから、まだ日が高かったから街の中を探検しようとうろうろしてみる。何かいいものがあればいいけど。ひとまず武器屋っぽいところに入ってみる。普通の武器がいろいろと並んでいる。ナイフと弓で満足しているので、弓を見てみる。今のが合っているからそれ以上となると、力はそんなに強くないから今のままでもいいか。店の中には誰もいない。

「誰かいませんか!」

 ゴソゴソと中から炭まみれのおじさんが出てきた。

「なんだ?用事があるなら言ってみろ」

 ナイフの切れ味が落ちていたので差し出す。欠け気味のところもある。

「これを研いで欲しい。切れ味が落ちている」

「それはどうした?」

「師匠にもらった大切なナイフだよ」

「すげえお師匠さんだな。そのナイフに魔力を込めてみろ。出来ないなら身につけているだけでいいんだがな」

 言われたとおりに魔力を流してみる。刃が輝くと光ったかと思うと刃のちょっと欠けた部分が直った。

「すごい!おじさん、直ったよ。すごい」

「自動修復のナイフだ。大きく損傷してしまったら直らないが、このくらいなら魔力だけで直る。長く使えるナイフだ。大切にしろよ」

「うん、そうだ、弓も見てよ。悪いところはないと思うけど、これも師匠にもらったんだ」

 弓を念入りに見て返される。

「今のところ悪いところはねえな。それも見えにくいところが1級品で出来ている合成弓だな。それ以上のものはこの店にはねえ。悪くなっても直せねえけどな。まず材料がない。そっちも大事に使え。祝福を受けてから何か欲しいなら、使い易いようなのを見繕ってやるからよ」

「わかった。ありがとう」

 いいおじさんだった。店を出ると、商業ギルドに向かって行った。普通にビーカーを作るだけだろうけど。たくさん売れるといいな。商業ギルドの入り口から入って、受付の人に王都によることがあったら来るように言われたとカードを出した。

 受付の前で待っていると受付の人が戻ってきた。

「お待たせしました。すいません、担当の者が手が空き次第対応しますので、もうしばらくお待ちいただけますでしょうか?」

「うん。外にいるね」

 ギルド内から外に出て、いい天気だなと思いながら空を見上げて、倉庫のほうを出入りする馬車を眺めていた。出入りが激しい。

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読んでくれてありがとうございます。

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