帰ったら2
「どうしたんだ、お茶まで用意して。おもしろい話でもあるのか」
「ランス君に婚約者が出来るも知れないって」
「こ、婚約者?!どういうことだ?辺境伯領で女の子でも引っかけてきたのか?」
「相手の子は誰なの?どうやって知り合ったの?」
2人とも前のめりなんだけど。受付から出てきそう。そんなに知りたいのかな?
「相手はシャローザ・エルミニド。辺境伯の4女で可愛い子だよ。寝不足で体調悪いけど。薬を調合して、ちょっとは寝られるようになったかな?なんでそうなったかはわからないけど、辺境伯が結婚を勧めてきたから受けた。正式な婚約者になったら家に来る」
「ちょっと待て、聞いたことがあるぞ。その子って有名な呪い持ちの子じゃないのか?」
「そうだね。痛みで寝られなくて、寝られるようにしてあげたかったから調合してみた。結果は良好だったから寝るときだけ飲んでいいといったよ。魔草を少量混ぜ込んだから。そしたら痛いのがイヤだって。それはそうだけど、呪いはどうにも出来ないしね」
「なんだと。呪いを打ち消す薬を作ったのか?うそだろう?エルミニド支部だけじゃなくて、本部や総本部も調べたがそういった配合はなかった。寝られるほどの効能は魔草を使っても得られなかったんだぞ?一体どうやったんだ」
デールさんは受付を出て迫ってくる。鬼気迫っているので後ずさりしてしまう。
「ギルド長、落ち着いて。その配合は薬師独自の物になるんじゃないの?公開を迫るのは規約違反よ」
「でもな、どうやったかだけでも」
「それはランス君が決めることよ」
ぴしゃりと言われて思い直したのか、お茶を飲んで落ち着いている。
「そう、だな」
「隠しているわけじゃないんだけど、下手すると薬の効果を下げるし、人によっては体調を余計に崩してしまうかも知れないから使わないほうがいいって思う方法なんだけど。伝えておかしなことになるのは困るよ。そこはわかった上で聞いて欲しいけど、普通は使わない」
「それでどうやるんだ?」
「魔草に属性の魔力をつけて配合する。配合途中でもいいかな」
固まった。2人とも動かない。少しするとデールさんは動き出した。
「魔草に属性をつけると聞こえたが、間違いないか?」
「そう。すぐに対応出来るならいけると思ったからね。うまく効いてくれたからよかった」
「公開してもいいのか?」
「いいけど、薬効が落ちるし、人の状態によっては悪化することも考えないといけないからね。あくまで原因がハッキリしていて、属性が有効なら効果が高いと思うってこと。何かの属性魔力中毒とか、呪いは闇属性の魔力だから光の魔力が効くってわかっていれば、付与することで効果が上がるからね。呪いによってどうなるかわからないよ?その人の魔力状態を把握出来る上で属性を選べるなら付与してもいいと思うけど」
「それって魔法に精通していないと出来ないってことか?」
そうなるのかな?みんなにどのくらいの魔法の知識があるのか知らない。
「魔法だけど。生活魔法の応用だから、みんながどれだけ出来て、出来ないのかは知らないけど、魔力を手とかに出しておくと魔草が吸収して属性を持つようになる。生えてるときは無属性なことが多いけど、時間が経つと吸収するようになるんだ。吸収したらわずかに色が変わってるかなぐらいだけど」
「それを応用するとより効く薬になる可能性があるんだな?」
「そうだよ。正しく診断出来ればだけどね。シャローザの場合は呪いが単純だった。闇の魔力を発生させるだけだから魔草に光の属性を与えた。呪いは複雑なときがあるから、光の属性を与えるだけで軽減されないときもあるからね。下手するとそれを取り込んで酷くさせる呪いもあるから気をつけて」
「呪いに薬を効かせようなんて、考えもしない。普通の薬のことを言っているんだ。薬がよく効けばいいだろう?」
それも注意が必要なんだよね。
「熱があってお腹を壊している人がいるとして何の属性がいいの?熱を冷ますための水?お腹を壊しているから止めるための土?どれ?1つの属性しか与えられないよ。複数の要因があるのなら薬の効果は重ねられるけど、魔力は重ねられない。1つしか選べない。熱だけとからなら効果は高いだろうけどね」
「1つだけしかつけられないんだったら、難しいな。症状が重なることは多い。そうなると隠れていた症状も出てくる可能性があるのか?」
「うん、酷くすることもあるし、使いにくいから使わない。今回は確実に光の属性で相殺することがわかっていたから、使ってみたんだよ」
「そうか。本部には、呪い姫に効いた薬を報告しておく。呪いが大丈夫かどうかなんてわかるものなのか?そういう専門の人って教会が独占しているはずなんだが。使いこなすには魔法の知識と生活魔法の扱いを熟知している必要もあるといっておこう。呪いに効くとか、万人向けでないから取り扱いも出来ないな。それはそうと婚約者が来たら紹介しろよ?」
「一緒に来るよ」
フッセさんも絶対よと興奮した様子だった。未だに本当になるのか疑っている。来るなら用意しないといけないものも出てくるね。
「ポーションの材料ってどのくらいで届くの?」
「だいたい1週間だな。注文ついでにどのくらいの量を本部がよこせるのか聞いてくるから待っててくれ」
頷いてから薬待ちのイスに座って返事を待つことに。お腹空いた。デールさんを待ったら串焼きでも買いに行くか、冒険者ギルドで何か食べるか?酒場は開いてないよね。確か夜だけだったと思った。昼は店があるから食べ物には困らないから開いてなくてもいいのか。
-------------------
読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます