帰ったら1
野宿もしながら帰り着いた。いつものように雑貨屋によるとばあちゃんが店番をしていた。
「帰ったのかい」
「やっと帰れた。薬は効いているのかな?調子は良さそうだけど」
「おかげさまでね。こっちへおいで、代金を払っておこう。いくらだい?」
「大銅貨で3枚だよ。2種類あったけど、どっちが効いたかわかる?よく効くほうがいいでしょう?」
ばあちゃんは少し悩む。
「どっちがどっちと言われてもじいさんが適当に入れちまったから、わからないよ。しかし、大銅貨3枚とは安いんだね。これなら気軽に買えるよ。本当はもっとするんじゃないかと勘ぐっていたからね」
「薬師ギルドでも同じ値段だから高くも安くもないはずだけど」
「それならこっちは大助かりだよ。領主街までの往復が加算されないだけでも十分さ。定期的に作ってくれね。頼んだよ。それと領主街の薬師ギルドから伝言を預かっているよ。帰ったら顔出しに来てくれってさ」
「わかった。ばあちゃんの薬を作ったら、領主街に行くよ」
雑貨屋を出て自分の家に戻る。帰ってきた。一息つくと荷物を下ろして、クリーンをかける。疲れた。一気に気が抜けるというか、疲れが出て眠たくなる。布団を出すとすぐに横になった。
起きると外に出て、見上げると空がやや白くなっている。どのくらい寝たんだろうか?お腹が空いたので残っている保存食を食べて、ばあちゃんの薬を用意し始める。材料は足りない分を集めてなんとかしたので、無理矢理乾燥させたりして大丈夫かなと思いつつ引き渡してしまう。
領主街の薬師ギルドへ行くことになったので、荷物をまとめて村の中を通っているときにエイシェトとばったり会った。
「ランス!生きてたの?てっきりあの大きな鳥に食べられたのかと思ってて」
「うん。食べられるかと思ったけど、なんとかなった。エイシェトは大丈夫だった?」
「食べられるかと思ったらランスが助けてくれたから大丈夫よ。今度、お礼がしたいんだけど時間ある?」
「すぐにはわからない。これから領主街のギルドに顔を出さないといけなくて。帰ってきてもあんまり家にいないんだ。帰ったばかりで忙しいんだ。ごめんね」
「ううん、時間があったらお礼をさせてね」
返事をしたら出口に向かって歩き出す。僕が住んでいたときは村1番の美人と評判のエイシェトなんだけど、あんまりしゃべりかけられると村の男達がいじめてきたからなるべくしゃべりたくないんだ。相手をしている時間が面倒だしね。
順調に領主街へ入って、薬師ギルドに向かって行く。何の用かな?
「お帰り、辺境伯領から遠かったでしょう?」
「遠いよ。貴族は面倒くさい。村で伝言を聞いてきたんだけど、どうしたの?」
「それがね、本部がポーションの受注をしすぎていて、あまりにも人気過ぎて値上げを宣言したんだけど、それでも止まらなくて早く納品して欲しいって。子爵様のところが納品されるたびに注文してくれて嬉しいんだけど、それで他のところも注文があってね。国内の騎士団を持っているところはほぼ注文をもらっているの。あと王国騎士団からも注文が来ているわ」
「たくさんいるね。でも材料を持ってないよ?」
ちゃんと用意しているというので、それならと裏の調合室にまわる。中は変わりない。行ったときのままだ。大きいビーカーがないからいつも作ってはいるけど、収納に入れると邪魔になるから使うときに用意するのでいいか。何かがあって魔力がないまま、調合とかはしないだろう。
「戻ったのかランス。注文が多すぎて、この材料では足りないが、作れるだけ作ってくれ」
「そんなに量がいるの?」
「薬師の一生分かというくらいの注文量だな。個人として受ける量は超えている。一旦受注を止めて、再度注文の取り直しをしている。倍の値段にしてもいるなら売るってな」
「倍って凄いね」
「そうそう、こんなに注文が入るとは思ってなかったんだ。本部も大忙しだ。注文がたくさん来るのはいいことなんだが、多すぎると作れないから他のポーションではいけないのかと各支部でも交渉中だ」
ポーションの注文が多いのはいいことだけど、凄いことになっている。作れるだけ作っていこう。がんばろう。材料を運び込んでもらう。袋は売ってもらう量ではなく、特大っていう支部で買う単位の量らしい。もう1つ上もあって、特特大っていうのがあるらしい。特大は大の1回り大きいのだ。僕が入れる。
材料は用意されたから抽出からはじめていく。ビーカーと水は自分で用意してと。
調合をしつつ瓶詰めしていく。がんばった。前よりも長くかかって、寝ているのか起きているのか、自分でもよくわからない状態で調合していた。全部瓶詰めして渡したあと床に崩れ落ちて寝た。
起きると宿屋のベットの上だった。なんでだろう?調合室の床の上で寝たのまでは覚えているけど。お腹が鳴る。眠い。眠さが勝ってもう1度横になる。
宿屋のベットのままだった。目覚めるとお腹が空いていた。寝過ぎるぐらいに寝ているので、眠気はない。部屋から出ると誰もいなかったけど、鍵を受付の台の上に置いて出て行った。日がすっかり昇っていて、目をこすって伸びをする。それから薬師ギルドに戻っていった。
「起きたのランス君。1日半ぐらいは寝たんじゃない?」
「そんなに寝てたの?それでお腹空いたんだ。何か食べよう」
「宿で食べなかったの?」
「誰もいなかったから鍵だけ返してきた」
フワとあくびを出す。
「本部から宿代は出すからきちんと寝させろって言われたみたいなの。宿に連れて行って寝かせたのよ。これだけ注文があるんだから、このくらいのことはあってもいいわ」
ポーションを作るのは薬師として、普通のことだと思うんだけど。場所も借りられるからありがたいけど、宿に泊めるほどのことはしてないと思う。
「そういえば、ポーションっていくらで売れてるの?聞いたことがないからいくら入るとかよくわからないんだけど」
「説明していなかった?したようなしていないような」
ゴソゴソと受付から紙を取り出して渡される。薬師ギルド員になる方へと書かれている。
「買い取り金額表と手数料は2割であとは販売時に輸送費が上乗せされるの。手数料は瓶が割れちゃったりするから、その保証でだいたい消えるのよね。ギルド自体にはそんなに収入が入らないことが多いかな。そうね、あとは薬草はギルド員割り引きがきく。道具もギルド員特別価格。ランス君はさらに総本部からの補助金がついてるわ。重点育成支援者認定でね。買い取り金はその表が1本で、ローポーションの高品質は銀貨5枚。それを本数でかけるともらえるお金がわかるってこと。1ダースで大銀貨6枚になるから目安にしてね」
「そうだったんだ。なるほど。婚約者が出来るかも知れないから、いくらで売れているか気になったんだ。ありがとう」
「はい?婚約者?どういうこと?ちょっと詳しく聞かせてよ。誓約がいるわけじゃないんでしょう?」
「聞かせるのは大丈夫だけど」
ちょっと待ってとお茶とデールさんも呼ばれて来た。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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