シャローザと婚約?4
「商業ギルドと細工ギルドは取り引き関係にあると思うのですが、どうしてランス様が細工ギルドに何か言われる必要があるのでしょうか?」
「細工ギルドに似たようなものがあるのかも知れないね。実際にどんなものを作っているのは知らないんだけど」
「それで大丈夫なんですか?凄く心配です」
「祝福前はスキルが使えないから、細工ギルドに所属しないといけないスキルをもてるはずないんだけどね」
薬師ギルドのように抜け道のようなものがあるのかな?
「他にどのギルドに所属されているのですか?」
「冒険者ギルドと薬師ギルドと商業ギルドだけだよ」
「多いです。普通は所属ではなくて取り引きがあるぐらいです。冒険者と薬師という珍しい組み合わせの上に商業ギルド。普通は1つ所属するぐらいです。所属していない人だっているんですから。私も勉強をしておかないといけません。婚約者が凄いです」
「冒険者ではS級扱いで祝福をもらったらS級になるのって、シャローザに教えていたっけ?それで貴族の当主扱いを受けるらしいよ」
会話が止まって何か言うつもりなんだろうけど、口は何か動いているのに声が出ていない。
「ランス様?隠してらっしゃることが多すぎませんか?」
「隠してないよ。僕の身を守る必要もあって、公開されていないこともあるってだけで。商業ギルドの件は公開しないことになってる。S級の件は冒険者ギルド長ぐらいなら知っているはずだよ。あまり広まっていないのかな?」
「他に隠し事はありませんか?」
「隠しているわけじゃなくて、話していないだけ。それにここで話せることは話しているよ」
まだ隠していることがと言葉を詰まらせた。じっとこちらを見られてもこんなところでしゃべれない。
「帰ったらね。出来れば、正式な婚約者になってからがいいんだけど。でないと怒っちゃう人がでちゃうから」
「怒られるのですか?」
「会ってるよね?お祝いもらってるはずだけど」
目を開いて口を手で隠す。可愛いってこういう感じなのかな?変な笑いがでる。
「どうされたんですか?急に笑われて」
「可愛いなって思って。気を悪くしたらごめん」
「気を悪くなんて、しません」
耳の先まで真っ赤にしてうつむいた。
扉を叩く音がしてギルド長が入ってくる。後ろからもう1人入ってくる。この人が細工ギルドの人かな?片眼鏡で怖そうな感じがする。2人は同じソファに座る。
「このどちらがランスなんだね」
「男の子のほうです。普通の服の子です」
目がギロッとこちらを見据える。
「スキルなしで作るそうじゃないか。その腕前を見せてくれるんだろう?」
「製法やランス殿のことは誓約で秘密にすると。その上で、細工系のスキルではないのを確認してください。見せるのはいいですが、ちゃんと販売させてくれるんでしょうね?」
「それはもちろんだ。細工ギルドとして保証する」
「では誓約を」
ここで見ることは確認のためであり、製法や制作者については漏らすことはないと誓約するとしゃべると光って誓約がされたことがわかった。
「祝福前の子どもがどういう風に作るのか見せてもらおう」
「ランス殿、お願いする」
えっと、前と同じでいいんだよね。ギザギザクリスタルを作り上げる。大量に作ったおかげで、作る速度が上がっている。ちゃんと出来ている。蓋を触ってくっついているか確認、ちゃんと離れるから問題なし。
「どうやって作った?何もない場所から作られた?スキル云々ではなくて、どうやって作られたかすらわからん。製法を言っても信じてもらえん。スキルではないことは間違いない。このようなスキルは存在しない。あるものを加工するしかないはずなのにだ」
「つくったよ、もういい?」
「それでどのようなスキルで作られた?」
「誰でももてるスキル。祝福前でも持っているよ。生活魔法。これは魔法で作ったものだよ。だから、こうすることも出来る」
作り出したものを消してしまう。
「魔法というのはこんなに奇っ怪なことも出来るのか」
「魔法がものを作り出しているよね?なら、そのものをとどめておくことも出来る。最初は消し方がわからずに困ったけどね」
「自由自在に作り出せると?」
「魔法が使えるならね。普通ならこういう、攻撃に特化したものか、壁で味方を守るものしか使えないけど」
尖ったクリスタル、クリスタルの壁を作り出して消す。しゃべりながらに出来るようになってきたから、上達してはいるんだろうな。
「生活魔法ならば所属させると後々困ったことになりかねん。誰でももてるスキルなら無理だろう」
「作り方は教えたから帰るよ」
唸りながら眉間にしわを寄せて余計に怖い。
「ちゃんとしたんだから、ちゃんと売ってよ」
「それは、もちろん。これで心置きなく売れるというものだ」
商業ギルド長がそういうのを聞いてから立ち上がって部屋を出る。シャローザが立ち上がらない。
「シャローザ、帰るよ。シャローザ?」
口を開けたままでいるのをどうするか考えて、頬をつつく。数回すると反応があった。
「帰るよ。聞きたいことがあるんじゃないの?ほら」
手を出すと乗せてくるので、引っ張り上げて歩き出す。大通りに出るまで手を引かれて後ろをついてくるだけだった。どうしたのかもわからないので、帰ってから調べることにしよう。今は連れて帰らないとゆっくりと治すことも癒やすことも出来ない。大通りは並んで歩く。病気じゃないよね?
「待ってくれ、隣の子は誰なんだ?」
門番のひとが止めてくる。
「シャローザだけど。ハンナさんもいるよ」
「馬車や車椅子の移動しか出来ないと聞いている。それに呪いはどうしたんだ?」
「僕が抑えているよ」
「出来るのか?」
「やめてみようか?」
光の魔力を吸い出していくと、闇の魔力があふれ出してくる。体の外へ黒いもやがあふれ出てくる。
「すまなかった。シャローザ様だ。通ってくれ、おい、誰かシャローザ様をお通しするから伝令してくれ。他でもやられるのはまずいぞ」
門を抜けて城のほうへ進んでいく。素通りで通してくれる。城の中に入ると塔に直接向かう。
「ハンナさん、お茶とクッキーを用意してもらってもいい?」
「はい、かしこまりました。ランス様は塔へ直接お入りください。お嬢様をお願いします」
わかったと返事をして、まだ意識が遠くにいるシャローザを引っ張って塔に入っていく。歩くのは歩いているけど、いいのかな?塔に入るとそのまま上がっていく。部屋に入っていくとベットにシャローザを座らせて、イスを持ってきて目の前に座る。
「いい加減に目を覚ましてくれない?」
「あれはどうやったんですか、あれを売るとして消えたりしないんですか?あんな風に作り出せるのを知らなかったのですが、普通のことなんでしょうか?私がここにいる間に出来たことなんでしょうか?そういえば、S級冒険者になるとお伺いしたのですが、どのような経緯でなったのですか?どうやって、なにがどうなってランス様になったのですか?さっぱりわかりません。私が婚約者でよろしいのですか?これだけ出来るなら普通の呪われていない、美人で、は、だのキレイな、きだ、てのいい人が。人がきて、幸せに、グズッ、なれる、のでは、な、ないの、ですか」
急にしゃべり出したと思ったら、途中から泣いていた。そんなに気持ちを高ぶらせたら、呪いが強くでてしまう。黒い魔力がわずかだけど、浮かんでいる。手を重ねて、光の魔力を補充していく。
「どうしたの?婚約ってことは結婚するんだから、家族になるんだろう?呪いは祝福をもらったらなんとかするから、信じてくれてもいいよ」
「そう、いうことで、はなぐで、もっど、いいひどが、いるのでは、ないのですぅかど」
「他の人を知らないから、いいとか悪いとかはわからないけど、シャローザと一緒に過ごして、仲良くやっていければいいなとは思っているよ。なんとなく、いけると思ってる。それと君は僕を必要としてくれたんじゃないの?守りたいと思ったし、可愛いのをもっと見てみたいと思った。そばにいて欲しいと思ったんだ。シャローザにいて欲しいと思ったんだ。そばにいてくれるんでしょう?」
真っ直ぐに彼女の目を見ていう。大きな瞳からは涙があふれ出ていて、鼻水とかでてるしぐちゃぐちゃになってるのに、僕の中からあふれ出てくる気持ちはなんだろう。頬を伝う涙が落ちるときに光って、美しいと感じる。
「りゃんずざま゛」
飛び込んでくるのを一瞬かわそうかと悩んだけど、しっかりと受け止めて抱きしめる。光の魔力を流し込んで、うっすらとでているもやを消してしまう。それからシャローザが泣き止むまで、優しく背中を叩く。母さんにしてもらったように、落ち着くように気持ちを出させるように、優しくゆっくりと。
部屋の中には泣き声だけが響いている。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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