ポーション作り
懐かしい、たくさんの薬草があるニオイの中で眠りに落ちる感覚。いろんなニオイがして、自然と落ち着いて寝られた。目を覚ますと寝床を片付けて、クリーンをかける。キレイになったのを確認したあとに、買い出しに出かける。薬草の仕分けが終わったあとは抽出に調整。一気にしてしまうことも出来るんだけど、そうすると他のことには手が回らなくなるね。すぐに食べられそうな、パンや干し肉を買っておいて、食事は大丈夫かな?
まずは薬草の仕分けから開始。薬草は5種類あるからそれを品質別に並べていく。1種類ずつやっていこう。低、中、高品質の3つの山が出来ていく。分ける理由は、抽出で調整していくか、調整で混ぜる量を変えるのか、薬師によって変わるけど、ポーションの成分を合わせるために行う。グリじいに教えてもらったのは、抽出段階で成分の量を合わせる方法。そのためにも最初に仕分けをきちんと行っておかないと、調整で大変なことになる。スキルがあると調整の工程で成分の割合を変更?液の量を変えて濃くして混ぜ込めるから楽なんだけど、成分だけを直接取り出すことも出来るから、ある程度最後に調整してもいけるけどね。スキルなしでは抽出段階でのきちんとした調整を行っておかないと、あとで直すってことが難しい。きちんとして作ると高品質になりやすいから、教えてもらった手順通りに作っている。
なかなかの量を仕分けている。座っている僕の目線ぐらいにはなっている。量を作るのは大変だよ。次はギルドにある薬草だけで作ろう。薬師ギルドにあったものは品質が中以上だったから、品質がよく似ていて助かる。
3つの山が出来ていた。ちゃんと仕分けできた。1つだけ。まだ1種類だけ。外はすでに暗かった。分けて収納しておきたかったけど、これを入れるような袋がない。そのままにして、床の上で眠りにつく。
2種目の仕分けに入る。途中、薬草袋をもらえることになったので、分けたのに印をつけてバックの中へ。これで調合室を広く使える。
「仕分けが終わった」
伸びをしてから外に出る。5日間もかかってしまった。でも、片づけをして布団で寝られたから疲れは少ない。これから身動きがとれないから、しっかりと準備をしておかないと食事がとれない。パンをちぎったり、串焼きを食べたり、干し肉をかじったりしてお腹を満たさないと。
昼過ぎの街の中を回って、すぐに食べられそうなものを買いに行く。パンと干し肉、串焼きの定番を確保して今日は眠りにつく。
抽出をはじめるか。この量だと部屋の中が狭い。窓は開けっ放しにして、大きいビーカーをいくつか作り出して、台座すらも作り出す。火は自分で操作することになるね。寝ることも出来ないか、やばい。1人でやるしかないんだから、がんばるぞ。
水をビーカーに満たして、薬草を入れていく。そのあとは火をかけて、じっくりと薬草の成分を水に溶かし込んでいく。この作業が自分の中で大変。品質ごとに抽出時間と量を変えて、なるべく同じようになるようにする。
ビーカーを熱しているので、部屋の中は熱い。小さな窓はあるけど、外がゆらゆら見える。水を飲みながら、たまに氷を作って意識を失わないように抽出を行う。低品質のはもう中の薬草を変えよう。すくい網をクリスタルで用意して、入れ替え作業を行う。使ったのは入り口近くに山積みしておく。茹でるとしなしなになって、ベチョッと小さくぐったりしている。元気をビーカーに置いてしまったのかも知れない。それでも量は多くなるから、山盛りにはなるんだけど。
入れ替えをしつつ、火加減を調整して忙しい。
「ちょっと、開かないじゃない」
聞いたことのあるような声がした。まさか、来るはずない。
「お嬢、作業中のようなので待つようにギルド長に注意されたじゃないですか」
「別にジャマをするつもりなんかない。何をしているか見るだけよ。休憩中だったら話しかけてもいいでしょう?」
「それなら外に出てきそうなもんですけど、小さな窓から熱気が出てきてますよ。中が相当熱いのに、戸も開けないんですから出てくるまで待った方がいいです。冒険者ギルド長にも敵だと思われてるから辞めた方がいいって。せめて、作業が終わるまでは待ってください」
声が大きいから中まで声が筒抜けだ。入り口は使い終わった薬草が山盛りになっている。
「何で開かないのよ。私がきたから怯えて開けられないように、鍵でもかけたのよ」
「鍵はしていないって、職員の人が様子を見に来たとき、確認しているといわれていたでしょう。いないので鍵がかかっているのでは?」
「それもあるかも知れないわね」
戸が動く音がする。
「動いているから中にいるわ。鍵もかかってない」
「何かがひっかかっているのかもしれませんね。ですが、手伝いませんから。ポーション作りのジャマをするなんて、絶対にしません。薬師ギルド内なら余計です」
「うーん、えい。とう」
かけ声をかけるたびにギシギシと音が鳴る。カギも何もかけていない。ただ山積みの薬草が開きづらくしているだけ。出るときはマジックバックに収納してどこに捨てるか、聞こうと思っていたからだ。まとめてやったほうがいいと思ったから。途切れ途切れ声と音が聞こえてくる。どういうつもりなんだろうか?邪魔はしないで欲しい。
抽出に集中しよう。これがうまくいかないと大変なんだから。水を飲んで火の加減をきちんと出来ているか確認。難しいところだけど、温めすぎもよくないからね。すくい網で終わったのを取り出して、抽出の終わったのは入れ替える。戸のところにべちょりと積み上げていく。ビーカーの中よりは温度が低いはずだから、徐々に温度は下がっていくはず。乗せたては熱いだろうけどね。
「ふぐぐぐ」
汚い声が外から響いてくる。開けなくても時間が来たら開けるのに。シルヴリンは自分の都合でしか動かないね。どういわれて来たのか知らないけど。
「開い、キャー熱い、あつ」
開いた扉から外に薬草の出がらしが雪崩になって出て行く。ちょっと立て付けが悪いけど、普通には使えていたんだけどな。もしかしたら薬草の山でどこかひっかかって、開かなくなっていたのかもね。熱いのを積み上げていたので、冷える暇もなく熱かったか。そういう作業中に入ろうとしたのが悪い。
「大丈夫ですか?」
「あ、熱かった」
「宿に連れて行って、手当てをしてくれ」
誰かにそう告げて、シルブリンの声は遠くなった。
「邪魔をして申し訳ない。日をあらためて、また来るのでよろしく」
それだけ告げると扉を閉めて、立ち去っていった。邪魔にならなかったから、うるさいのは気になったけど製作の支障になるほどではない。
気を取り直して抽出を行う。入れ替えや火加減の調節。新しいビーカーを作成して抽出が終わったのと入れ替え。1人で全部行っているので忙しい。15種類の抽出液で最適な時間管理を行うのに、鑑定を使っている。常時ではないけど、開けていると見つかるとも限らないので閉めているのもある。ビーカーを作っているのを見られるのもまずいからね。どっちにしろ、開けられない事情っていうのがあるんだ。
その日は完全に夜になっていて、入り口の出涸らしをマジックバックに詰め込んで外に出る。町は静まり返って、冒険者の酒に酔った声も聞こえない。空を見上げると満天の星がところ狭しと輝き合っていた。周りに明かりがないから、真っ暗で何も見えない。部屋の中に入るとライトで明るくして、布団を敷いて横になった。心地よい疲れの中でまどろみの中に溶けていく。
少し眠たいけど音がするので起きた。たぶん、ギルドを開ける準備をしているんだろう。外に出ると朝日を浴びて、目をこする。あくびをかみしめながら、裏口の前に立つ。ドアを叩く。
「誰かいる?」
「どうしたの?」
フッセさんが顔を覗かせる。
「朝早くから何?薬草はまだ来てないわよ」
「知ってるよ。それより、薬草の出涸らしをどうしたらいいかなって」
「どこにあるの?見えないけど」
「カバンに入ってる。子爵様にもらったのに」
中から出てくると、どうしようかと逆に聞かれた。
「外に捨てられるなら、捨ててくるけど」
「ほら、うちって専属の薬師がいないじゃない。そんなに出涸らしが出るのって初めてなのよね。あ、ちょうどギルド長がやってきたわね。ギルド長、薬草の出涸らしの処分はどうしたらいい?」
眠そうなデールさんはこっちを向いた。
「おお、そうだな、どうしようか。ギルド内は捨てるところがない。外に捨てるしかないな。フッセ、ちょっと憲兵に話して捨てていい場所を聞いてくる。ランス一緒に行こうか」
デールさんについて行って、入り口の兵士の人達と話し合う。訓練場や街道沿いでなければいいことになった。外に出て草むらの中で出涸らしを山盛りにして、帰って行く。
調合室に戻るとすぐにビーカーを取り出していく。新しいビーカーを生成して、まずは1ビーカー分の調合をする。混ぜ合わせる比率は抽出によって変わるので、随時鑑定で調整を確認していく。目算と味でだいたいわかるんだけど、鑑定の正確性には負ける。人前でやるならだいたいでやるしかないけど、誰もいない状態なので使っていく。
大きいビーカーで作ったので何箱か瓶を持ってきてもらう。それに漏斗とおたまを組み合わせて入れていく。もったいないからこぼさないようにしないと。慎重に。大きいビーカーを持ってやるのが1番早いけど、落としそうだし、こぼしそうだからしない。1本づつ丁寧に瓶詰め作業をしていく。
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読んでくれてありがとうございます。
☆や♡を恵んでください。お願います。
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