家での生活2

 起きたらすっかり明るくなり、伸びをして片付けをする。周りを伺いながら、山の方に歩いて行く。動物たちが戻っていれば十分なんだけど、様子見というか、目で見ておきたくて向かっている。おかしいのが来ていなければいいし、普段通りぐらいだったら、狩りをしながら戻ればいい。前みたいにハイウルフが徘徊しているようなのはまずい。普通のウルフぐらいならたまにいるし、人里にいればわざわざ襲ってくることもない。群れないから追い返すぐらいはどうにかなるかな。小さな山を登り、木の上で見渡す。木々の中を目をこらして観察する。動物、鹿とウサギと狸、イタチっぽいのも見かけた。肉食の動物はいないので一安心。平和な森が戻っている。よかった。木を降りて村に戻ろうと足を向ける。


 村に戻りながら狩りが出来そうなら狙っていく。取り逃がした鹿じゃないけど、別の鹿もとれたので大満足で家に帰っていく。バックの中に置いとこう。家をよく空けるから様子を見ながら置くかどうかを決めよう。村にいる時間が長いのなら吊しておけばいいか。

 肉はバックの中に入っている。時間があるのなら熟成してやるとよりおいしく食べられるけど、食べるだけなら固さがとれれば十分かな。保存用に干し肉へしてしまうっていうのもありだけどね。

 家に着くと荷物を下ろして一息つく。帰ってきたら夕方になっていて、泊まったりもして遠くまで行っていたな。魔法を併用すると簡単に距離を縮められるから感覚が変わってくる。森の把握もかねて、魔法での移動はしないようにしよう。

 代わり映えはしないけど、パンとスープを作って食べて暖炉の前でうとうとしてしまう。ちょっとガクッとなって、ハッとする。薪を追加してから布団に潜り込む。1日移動だったからねむ、つかれたな。



 今日はパンを作ってみよう。小麦粉と必要なものはクリスタルで作り出す。小麦と水を混ぜ合わせる作業から魔法を使って混ぜ合わせてこねていく。こねるのはうまくいってると思う。ダマとかない。大量に作るわけじゃないから、ダマがあればわかるはずだよ。パンの種を入れて待つ。生地が乾かないように鍋に水を沸かしておく。濡れた布のかわりにはならないかな?布を買うのを忘れた。次は忘れないようにしよう。生地が膨らむのを観察しながら、薬草で痛み止めが出来ないかなと薬草を探る。ばあちゃんに効くといいんだけど。カモミールジャーマン、マジョラム。効きそうなのはこれくらいかな。薬草ばかりだったから、食べられる実とかがないな。今はこれでいいとして、そういえば渡すための袋とかない。あとで雑貨屋に行ってみるか。

 コネコネをして発酵させる。家は寒くないぐらいには温かい。膨らむ様子を見るけど、途中でやめて薬草の分類を始める。もともと束になっているので、どのくらいあるのかを確認するだけの作業だ。癒し草が少ないんだよね。ローポーションで使う物は量がない。自分で採った方が品質の確認が出来るからいいんだけど、追加したとしてもそんなには採れないだろうな。採りすぎると、生えなくなることもあるから採れる量は少し減る。少し残せば、また採れるならいいかなと思う。


 さてと焼くかな。焦げないようにしないとね。パン生地をオーブンに突っ込んでいく。いつも焦げるから焦げないようにしっかり見張ろう。


 表面がいい感じになったので火を落とす。


 冷めたので取りだしてみる。表面はいい感じに焼けていて見た目は十分に美味しそう。熱いが食べてみる。お、おおうまく焼けてる。成功だ。食べすすめていく。・・・・・・冷たい。焼けてない。食べようと思えば食べられなくはない。パンをオーブンに戻して火を入れる。中心が生焼けで湿った生地っぽい。焦げてもいいからちゃんと焼こう。

 いつものように黒くなってしまった。火加減が悪いのかな?もう少し弱火にして、温度が高すぎるのかも。窯の火加減調整がうまくできていないと思う。パンの焼きにいい温度を探さないとね。

 苦い表面と一緒に食べて、スープを一緒に飲む。練習すれば何とかなるか。うまく作れる人に教えてもらっていないんだから、作るための練習をすればいい。最初は生地を膨らませることもできなかったんだ。ちょっとはうまくなっている。材料もきちんと揃えることも出来るだけ稼いでいる。あれ?まだ冒険者ギルドの方は残金残っていたはず。街に行ったら確認して鍋も買わないと。

 火加減をずっと見ていないといけないのかな?うまくできるようにならない。難しいな。どのくらい焼いたらいいっていうのが、さっぱりわかってない。それなのに作り出そうとするのは無謀かな。すぐ黒こげにしそう。

 パン以外の食べ物って、村では何が売ってあるんだろう?ここに住むのなら、村で買えるものは知っておいた方がいいよね。村に向かいながら、周りの畑を見回す。小麦か大麦ぐらいしか見えない。他には何か作っているのかな?それぐらい?わからないから雑貨屋に入っていく。

「布ってある?」

「服でもやぶったのか?」

「パンづくりに乾かないようにするのが欲しい」

「ああ、それなら薄いヤツでいいのう。ちょっとまっとれ」

 店の奥に入っていくとごそごそ音がして出てくる。薄い布を持ってきた。透けるってほどじゃないけど、薄いヤツだね。

「袋ってある?ばあちゃんに効くかわからないけど、痛み止めに効きそうな薬草を持ってきたよ。ハーブティーにして飲んでみて。もう1つ追加したかったけど、手持ちにはなかったから街に行ったときに買ってくるよ」

「毒草じゃないのか?薬草の見分けなんか出来ん。薬師ギルドで買ってきてくれ」

「ちゃんとギルド員なんだよ。自分の知っている薬草から選んでいるんだから試してみてよ」

「そういうんなら試しに飲んでみるか」

 奥に引っ込むとすぐに出てくる。お湯の沸かす準備でもしたのかも。

「ここって何の食べ物を作っているの?あるなら街まで買いに行かなくてもいいから教えてよ」

「そうじゃな、小麦、大麦、野菜もあるのう。だいたい余り物を売りに来るんで、野菜は季節や量によるか。あったら買えるぐらいか。鶏と乳牛もおるが村の中で消費されとるのう。わざに売ったりはせん。基本は交換しておるので、うちに並ぶことはないのう。肉にしたら物々交換しているのう。そんなところじゃな。うちは村でいりそうな道具を主に扱っとる。年中置いてある食べ物は小麦や大麦ぐらいか。腹の足しには十分なる」

「小麦と大麦ぐらいか。他のは自分で用意できるなら、した方がいいんだね。生活するのは街を中心にしたほうがいいかな。物とかギルドもあるし」

「こんな小さな田舎にギルドが支部を作るなんてのはない。誰かが兼業でやるんなら別だがのう。好きにすればええ。皆は肉を期待しているようだが、昔みたいにお前さんがこき使われる必要はない。ワイバーンの時に逃げ切れるなら、村の若い衆にやられることもないか。それでも気をつけんとな」

 そうだねといいながら村の食べ物はきちんと聞けた。薬については効けばいいのかもと思う。布のお金を払って、店の中を見て回る。農耕具にナイフと斧と包丁。あとは篭とか箱とかそういうのが中心に置いてあるね。自分が使いそうな物は置いていない。大麦と小麦を常備しているから必要なときは買えるね。最低限の物はあると思っていいのかな?

「この薬草はお茶でいいんか?」

「うん、お茶にして飲んでくれればいいよ。手持ちだと2種類しかなくてあとひとつは薬師ギルドで探すつもり。効かないようだったら教えて。それで効くならいいんだ」

「そうか、ギルド証は持っているんか?」

 3枚のギルドカードをとりだして見せる。

「これが商業ギルド、冒険者ギルド、薬師ギルドのカードだよ」

「確かに、もう3つもギルドに入るとはのう。周りが放っておかんじゃろう」

「無理に言うこと聞かせようとするのはイヤだけどね」

「理不尽から守ってもらうためのギルド、自由にやればええ」

 お茶を飲ませるまで待ってから帰った。家の周りにはある程度の土地があるけど、畑を作った方がいいのかな?野菜は物々交換しているようだから、売っていることはあまりないんだろうな。野菜作りはグリじいの手伝いぐらいで、全然していないよ。採集は薬のために最優先で覚えて、加工も薬や冒険で必要そうなものばかりだ。魔法か何かでささっと育たないかな?

「ランスよ、そんな都合のよい魔法はないぞ。ただ、作るときは妖精がいるとよく育つと聞いたことがある」

「そうなの?」

「呼んだ?」

 ウィットとズワルトに妖精女王が姿を現していた。

「ランスが魔法で育たんかと考えていたのでな」

「あ~でも、妖精がいるとよく育つのは間違いないわね。あの場所を動かせないし、自分たちの森を管理するための種族固有魔法。特別に使える植物魔法があるけど、ランスなら使えるかもね?」

「使えるのか?」

「妖精王だから可能性はあるの。だって王だもの。今は封印で何も出来ないかも知れないけど。それでも王は王たる任命に選ばれて、称号が消えずに王であり続けているから、王であると認められているのよ。そのうち、スキルも出てくるんじゃないのかな?今は封印するための養分にされている称号達だからね」

「祝福の時期が来たら目覚めることがあるのかもしれんのう」

 何か新しいことが出来るもしれない。女王を見る。

「そんなキラキラした目で見ないでよ。スキルが出たら教えてあげるわ。ただし、スキルが出たらよ。スキルが種族固有なんだから、人で出るとは思わないように。期待せずに待ってなさい」

「そうなんだ」

 新しいことが出来ると思って、ワクワクしていたのに残念。畑のことを考えながら、何かを育てるってことは、ここから離れられないってことなのかな?

「畑をするなら数日は大丈夫だと思うけど、週や月で離れるなら難しいかもね。ランスはどう考えてるの?」

「今はここにいる時間があんまりない。村で生活するのか、領主街で生活するのかも決めていない。行ったり来たりはすると思うけどね。お世話できないから今はやめておこうかな。この家で暮らせるって決めたら、畑とかも考えていく」

「そのくらいでいいと思うわよ。収納は出来るんだから、こっそり入れて家で出せばいいのよ。その収納袋もあるんだから入ってたでいいのよ」

 そうなのかな?マジックバックもあるから何が入っていてもおかしくはないんだけど。人にわからないように出来ればいいか。

「花とかあると嬉しいけどね」

「まずは食べ物だと思う」

「作ってくれないの?」

「余裕があったらね」

 目の前の草むらを見ながら、畑に出来るのかな?わかんないな、やってみないことには。

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読んでくれてありがとうございます。

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