ビルヴィス公爵領ギルドで

「特別室を開けろ」

「はい」

 大きいギルドなのか、建物が大きい中に入っていく。入っていったところに職員の人が来て、返事をしたら部屋に通される。僕は抱えられたままなんだけどね。

「辺境伯の依頼を持ってきてくれ」

 ソファにおろされると反対のいすにギルド長は座る。

「ギルドカードを出せ」

「イヤだよ」

「何でだ」

「必要ない。冒険者ギルドに用事がないんだから、見せる必要あるの?」

 冒険者ギルドで必要ないのにカードを出す必要があるのかな。

「ガキは大人しく言うことを聞いていればいいんだよ」

「用事は終わったよね、帰る」

「待て待て、今依頼を持ってくる」

「無理矢理つれてきたのはそっちだ。言うことを聞く必要なんてない」

 ソファから降りるとドアノブに手をかける。

 パンッ

 手がはじかれてドアノブにさわれなかった。

「うちの職員しか出入りが出来ない。諦めて戻れ」

 ドアを観察すると、ドアノブ付近にしか魔法がかかってないように見える。

「分厚い鉄板も仕込んであるから、逃げられないぞ」

「壊していいなら、いつでも逃げられるけど。開けるなら壊さない、開けないなら壊す。どうする?」

「やれるならやってみろ」

「許可はもらったよ」

 威力がわからないので、範囲を小さくしてドアに当たるようにして風を使う。鉄板で止まる。表面の木は切れる。

「ほら見たことか。諦めて座っていろ」

 わかったようにいうギルド長。少しづつ、威力を上げていく。部屋ごとやっていいなら、でも建物も壊れそうだから、なにも考えずには魔法を使えない。威力を高めつつ、範囲が狭いから注意を払っていないといけない。集中力がいるね。

「諦めればいいもんを。風でどうにかなるものか」

 鉄がむき出しになって、鈍い銀色が見えてくる。それの調整を行いながら、集中集中。線が入り出して、威力の上げ方を多めにする。ゴンゴンと音を立てながら風が切り始める。さらに威力と手数を増やす。楽しくなってきたぞ。ふん。

 ガタガタタタ

 足下に鉄の残骸が刻まれて積みあがっている。その上を歩いて出て行く。広いギルドの中は静まり返って、みんなが僕のことを見ている。その中を出て行こうと歩く。

「捕まえろ」

 振り返るとギルド長が出てきて叫んでいる。

「金貨10枚、緊急クエストだ。ギルド長権限で緊急発注する」

「かまわないけど、手加減はしないよ。おそってくるなら腕の1本ぐらいはじっちゃんがいいって聞いているしね」

「じっちゃん?」

「さっき話していた、えっとヘインニャンルっていう、冒険者ギルドのえらい人」

「エインヘニャル様のことか?」

「そうそう。次は殺していいって聞いたら、反撃なら腕1本ぐらいは罪にならなくて、殺すのはさすがにダメだって。だから殺さないようにしないとね」

 ざわつくギルド内。ウソだろうという声が聞こえてくる。

「エルミニド辺境伯は信用ならない。信用していない依頼者の依頼を指名されたとしても受けることはない。ギルド長。そう、依頼者に伝えておいて。じゃあね」

 誰も動こうとしない。さっきの軽い感じで話していた男は、剣を抜いてこっちをみていた。そのまま出入り口に向かう。

「いただきます」

 気配を消して、後ろの上から剣を振り下ろしてくる。反射的に剣を向かいうつ。風は剣を突き抜けて、体に当たる。

「うわああぁぁぁ」

 ケガをしながらも体制を立て直している。おれた剣が横の床に刺ささった。剣を持っていたままなので、そのまま風で吹き飛ばす。壁にたたきつけられて、動かなくなる。

「ギルド長、ここは敵ね」

 それだけいうと外に出て行く。中から大きな声が聞こえるが、気にせず通りを歩いていく。荷物は置いてきたままになっているので、途中で店によって買い物をしたいと思ったけど出来ない。普通に宿屋へ戻ると、受付で次にああいうことがあったら、冒険者ギルドを壊すって警告しておくように言付けた。この宿にも何かするかもねとも言っておいた。

 宿屋のベットに腰かける。面倒臭い人達だった。そして、力でなんとかするのだから、僕もそれで対抗する。ドアの魔法自体は過剰に魔力を流し込むことで破壊できそうな感じだった。あれほど暴れなくてもよかったけど、いつまでも冒険者ギルドが僕に対しての態度を変えないのでしかたない。力を示してくるのなら、それに対して僕も力で抗うだけだ。いい加減、そういうことをすれば、どうするのかわかって欲しい。もしかしたら、帰りの大きな声は天罰が下ったのかもしれない。あんな、閉じ込めて依頼を受けさせる強引な方法は特に気に入らない。あのくらいやっておいて、よかったのかもしれない。窓を見ても隣の家の壁しか見えない。伸びをしながら、夕ご飯はまだかなと考えながら、ボケッと何も考えないようにして過ごす。ふあぁ。ふあ。眠くなってきた。


 そろそろ夕ご飯が出来ていてもいいはず。下の食堂で泊まっている人に提供している決まった食事を食べる。味付けは濃いめかな。みんな歩いたりするから、濃いめがいいんだよね。周りの大人たちよりはゆっくり食べて、自分の部屋に戻っていく。


 朝になって空が白んだのを確認して、薄暗い中で出発だ。移動の人や荷物を運ぶ人たちが動いている。動く人は動いているはずだし、時間に余裕があるならゆっくり出来るよね。リュックと肩掛けバックをちゃんと持って、次の町へと出発だ。街の大通りは、王都みたいに整備はされていないけど、歩いたり馬車が通行する分には十分にきれいな道だった。その道を出る門に向かって歩いていく。朝だけど人は多い。明るいうちに移動したいから、早くなってしまう気持ちはわかる。

 夜は見えにくいし、夜だけ現れる魔物もいる。面倒なので会いたくないね。夜はなるべく安全な場所を見つけるのが大切。無防備にいるのは襲ってくださいって、いっているようなものだからね。夜だと夜目が利かないくらいの闇もあるから、光の量は気にしないと全く見えないことも出てくる。だから、なるべく明るいうちがいい。

 大通りを歩いて出口に向かう。王都ほど整備されていないと思ったけど、他の街に比べたら凄くキレイに整備されている。門では薬師ギルドのカードを出して、そのまま通り抜ける。冒険者ギルドと悶着があったから使わなかった。街道を歩いて行く。


 次の街に入るときにも薬師ギルドのカードで入った。街の中で食べ物の補充をする。といってもいつものパンと干し肉を少し。干し果実は干し肉よりも高いので、買うのをやめる。作った物とかが売れたら、ご褒美で何かおいしいものを食べよう。なに食べるかな?串焼きをいっぱい買って、お腹いっぱい食べてみたいな。タレがおいしいんだよね。たのしみだな。宿に泊まって明日に備える。

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読んでくれてありがとうございます。

☆や♡を恵んでください。お願います。

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