第2章

エルミニド辺境伯家からの呼び出し1

 リュックを降ろし布団を詰めて、塩と胡椒かな?白い粉はなんだろう?乾燥した魚や果実、肉とチーズもあった。高くて買わなかった物まである。

「なくなったら買いに来るんだよ」

「わかった」

「ランスには驚かされてばかりだよ」

 ノックと共に人が入ってくる。

「エルミニド辺境伯邸より使者がお越しになっております。ランス様にご用事だそうです」

「辺境伯様の使いならお通しして」

 辺境伯からの依頼を受けていなかったね。

「失礼します。王都エルミニド辺境伯邸執事ダレルと申します。そちらのランス様を辺境伯邸にお招きしたくお捜ししておりました。お食事などをご子息様としていただけませんでしょうか?」

「イヤだよ。理由は言わなくてもわかるよね?」

「教えていただきたく存じます」

「わからないなら、行かない。祝福前にあれをやられて、普通なら死んでいたよ?本来なら全力で攻撃しているはずなんだけどね?僕はかまわないよ、辺境伯軍とやり合っても」

「確認をさせていただいて、明日もう一度、あらためてお迎えに上がります。よろしくお願いします」

 執事はあっさりと引き下がった。

「辺境伯邸には行かないのかい?大物じゃないか。付き合いがあれば、ポーションもたくさん売れるだろうに」

「ポーションはいっぱい作ったよ。ボルギ子爵から注文をたくさんもらってる。追加があると、薬草から取ってこないといけないね」

「評判はいいのかい?」

「わかんない。ライトポーション並の回復と解毒小がついてる。ハーバードはたくさん注文してやるって。そうだ、ボルギ子爵にギザギザクリスタルとティーセットをあげて、冒険者ギルドをつついてもらうようにお願いしたんだ。終わったから、お礼とかいるのかな?」

 四角のギザギザクリスタルをあげればいいかな?フタ付きで。

「さっきのティーセットをあげたのかい?」

「うん。マロウは色が変わって、おもしろいからね」

「手紙だけは送っておくといい。これ以上は向こうももらいすぎだよ。冒険者ギルドの件とポーションの買い取りのお礼を送りな。封筒と便箋を用意してあげるよ。それよりもティーセットを売らないといけない。また作ってくれるときでいいけど、早めに頼むよ」

 手紙書きの一式を持ってきてくれる。どう書いていいのか分からなかったので、ギルド長に教えてもらいながら書いていった。最後に封蝋をして手紙を商業ギルドにお願いした。どうせ便はあるからついでで何とかしてくれるって。

「それより、辺境伯邸にはいかないのかい?」

「イヤだよ。剣術対決でスキルを使ってくるような人のいる家に行きたいと思う?それに大金貨3枚分、その場でもらったからもういいんだけど」

「ランス、何があってそうなったんだい?その辺は知らないんだけどね」

 冒険者ギルドカードを取り出す。ワイバーンを倒した時の話をして、依頼が来ていることを話した。

「ワイバーンにも驚くけど、ソードスラッシュを相殺したってなんだい?聞いたこともない。まあ、でも、スキルを放たれたのなら断る理由にもなるか。他の人は違うかもしれないよ?だめなら見切りをつけてもいいとは思うけどね。次に何かあったときは、辺境伯にランスと和解をどうにかするように通告するから、ギルドとしても行ってほしいんだがね?」

「関わりたくないよ。別に僕は敵として思っていいんだけど、今のところは貴族だから見逃しているだけだよ?祝福前だからって本気を出さずに、見てる魔法で押し込まれるなんてあり得ないんだから。おかしいよ」

「あんたのほうがよっぽどおかしいよ。そんな事できる祝福前の子がいるもんか。硝子細工を見てなかったら、絶対に信じることはなかったね。普通はもっと出来ない。普通の冒険者にすら勝てない。ランス、相当に出来る人間がいる状態で育ったのかもしれないけどね、ワイバーンを1人で倒すことが出来る人間は、世界でも両手もいない。片手で足りるよ?その意味が分かるかい?」

 ワイバーンを倒せる人間?僕も倒せるかは分からなかったんだけど。

「倒せるかどうかは分からなかったよ。村に来なければ、囮になることもしなかった。辺境伯に任せようと思っていたんだ」

「辺境伯に任せるのはいいとしても、実際は自分で倒してしまったんだからね。少しは自分の力は強大なことを認識した方がいいよ。薬師は何もいってないかもしれない、冒険者ギルドは強大な力を持った者の加入を喜んだろう。だけどね、その力は畏れを覚えさせる。むやみやたらと振り回していないことは、話を聞いていたらわかったけどね。老婆心としていっておくよ、今のその力はこの国を滅ぼせる。使い方に気をつけるんだよ。辺境伯領を滅ぼしでもしたら、この国にいられなくなる。他の国でも危険な人間として扱われることになる。貴族を滅ぼすようなマネは絶対にしないでおくれ」

「そんな事はしないよ。殺すなら辺境伯一族ぐらい。関係ない人は殺さないから」

「それは貴族を滅ぼすことだよ。そういうときは関わり合いにならないことだね。もう1回だけ最後の挽回の機会を作ってもいいんじゃないのか?」

「うーん。もうお金ももらったから、いいんじゃないの?」

「正式に招いて、褒美を渡すっていうのがいるんだよ。貴族としてねえ。面倒でも受けて終わらせないと、いつまでも来てくれといわれ続けるんだ?」

 何でダメなのかな。

「信賞必罰といって、よいことをすれば褒美を、悪いことをすれば罰を与えることだ。ランスのしたことは危険な魔物を討伐したのだから、褒美を与えることになる。それをしないと貴族の矜持がないとか、褒賞も出せぬほど落ちぶれたのかと叩かれるのでね。祝福前の子が倒したなどと、今はみんなが半信半疑で叩くまではいかないが、冒険者ギルドの件が王都に広まるのに時間はかからん。そうなると辺境伯も手段を問わなくなってくるぞ?今回も何かされたなら、こちらも会わないように協力しよう」

「あっちまで行くの?ワイバーンは終わったから行かなくていいでしょ?」

「貴族は気にするんだよ。行かないっていうなら、辺境伯にはどうやってでも迎えに行ってもらうよう言っておくよ。軍でも何でも使わないとランスは行かないよってね」

「軍が来たら大変なことになるんじゃないの?」

「そうだね、サルエン男爵領地内ならどこでも大騒ぎだね」

 大騒ぎにされるのは困る。村には来ないで欲しい。軍隊が来たら大変なことになるよ。軍隊とか見たこともないはずなのに。

「行けば、いいの?」

「行ってくれると、うちとしてもありがたいんだがね。行って何か問題があったときは、辺境伯にないがしろにされたことになる。そのときは今後、辺境伯に協力することはない。信用問題というヤツだね。取引量も多いから、商売相手としていいからねえ」

「軍隊は絶対に来ない?」

「そうだね。行くことはないよ。迎えの者に私から手紙を書いておくから、そうならないようにするよ」

 それならと商業ギルド長の言葉に頷いた。明日の迎えをどこにやるとか、いつ行くとか、泊まる手配などを全部してくれるそうだ。いやいやでも行ってくれるなら、このくらいいいんだよと頭をなでられた。


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