王都冒険者ギルドの罪1

 手を振って入り口に出ようとするとリュックを掴まれた。進めない。

「ランダと本部通信用の水晶を持って来させるんじゃ。事務所の会議室でするしかない。ランスがどこかに行かんうちにの」

「僕いるの?」

「今回の和解金やら必要な手続きに、S級扱いのギルドカードマークも入れんといかん。だいたいがギルド全体でポーションの仕入れ値を2割も上乗せされたらえらいことなんじゃ。絶対に終わるまで帰さんからの。付き合ってもらわねばならん。ラント国冒険者ギルドには相応の報いは受けてもらわんとのう。ここまで大問題にしてくれたんじゃから」

 殺気が漏れているんだけど。怒ってるんだろう。リュックを持ったまま受付の中に引きずり込まれる。

「ギルド長と事務長も同席せよ。真偽の水晶も持ってくるんじゃ。書類はランダが持っておるはずじゃからよいとして。さっさとせい」

「エインヘニャル様、F級ごときにそのような、他の者に示しがつきません」

「示しがついておらんのはこの国のギルドじゃ。輝く太陽どもは手も足も出せずに一方的に負けたぞ?この国にはあやつらを何もさせずに負かすことの出来る者が普通なのじゃな?事務長ならこの事態にどのような申請がいるのか、本部長に進言する程度のことをせんでなんとする。職員の教育、冒険者達への徹底。ワイバーン単騎討伐の時点で、上位討伐者扱い変更申請を同時に出さなんだ?ワイバーンをすぐに狩れるような人材が揃っておるのか?」

「お、おりません」

「口答えせずにさっさと用意せよ」

 怒声を響かせながら受付の中を通って、部屋の中に入れられて机に座る。ギルド長が入ってきて、続いて本部長が書類と水晶を持ってくる。事務長も水晶を持ってくる。

「揃ったようじゃな、まず、ランスのランク扱いをS級と同等とする。本部長水晶を」

 じっちゃんは水晶に向かって話を始める。正式な申請書は後から提出として、総本部長の権限でS級と同等とすることを告げる。

「それではランスを薬師ギルドから出てきたあとに、冒険者が襲ったことについては調査はどうなった?」

「はい、城門を壊したことによって牢におりますが、お気に入りの受付嬢が危なかったということが理由のようです」

「それで襲ったと?」

「わからせるつもりで少し痛い目を見せようとしたようです」

「そやつらはクロコダイルを討伐可能なランクなのか?」

「いえ、違います」

「自分が狩れぬ魔獣を狩る者をわからせる、痛い目を見せる?薬師ギルドから出てきた人間を襲う。冒険者が規約もわからず、もしや受付嬢のそそのかしもあったやもしれんのう」

 事務長の顔が土の色になる。本部長は淡々と報告する。

「最低限の教育は冒険者であってもせねばな。次にクロコダイルの件について、調査した職員はどうした?」

「退職しておりましてわかりませんでした」

「そのあとに再調査をしなかった理由は?」

 ギルド長が口を開く。

「F級の依頼の再調査は無駄だと判断しました」

「その結果がこれだということじゃな、ギルド長。それでクロコダイルの討伐後にランスに暗殺者を向けたか?」

 部屋の温度が下がったのかと思ったら、じっちゃんが本気の殺気を出していた。

「真偽の水晶に触れよ」

 総本部長が触ると青くなり、本部長も青くなる。ギルド長は赤く、事務長は紫になる。半分だけウソってこと?

「ふむ、2人か。雇ったのは子飼いの冒険者か暗殺者か?まあよい、生死は関係ないからのう。処分は本部長減俸1年。ギルド長、借金奴隷。事務長、降格の上、罰金とする。本部長、ラント国冒険者ギルドに対し向こう5年間、総本部へ会費を2割り増しとする。また、ランスのS級扱いについてと薬師ギルド員に対する冒険者及び職員の教育徹底を厳命する。特にラント国内冒険者ギルドには至急で通知、周知せよ。ランスに暴行しようとした冒険者は出所しだいギルドカードの剥奪、全財産の没収とする。以上を処分とする。申し開きがあるなら聞こう」

 元ギルド長が立ち上がってじっちゃんを睨む。

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