総本部長と

 ヘルセさんは固まってしまう。

「総本部長が力を見せろといったな。きちんとA級の冒険者パーティーを蹴散らした。冒険者ギルドとして手加減を教えるといった。いない場合はすぐ用意するとも。忘れたの?それがここに来る条件。そして、そちらの総本部長が言った力を僕は見せてもらっていない。2つも条件を満たしていないのにどうして僕が話し合いに行かなければならないのか?行くなら攻撃するよ」

「すぐには用意できないの」

「そうやってすぐに都合が悪くなると、なかったことにする。腐ってるね。交渉には応じられない。交渉につかせたければ、そちらの提示した条件を守ってからだね。お金は薬師ギルドで稼げることがわかったから、冒険者ギルドはやめてもいいんだ。やめる手続きをさせてくれるなら、行ってもいい」

 もう1人薬師ギルドに入ってくる。じっちゃんか。

「すいません、私では」

「それで、どうすれば交渉に応じてくれる?」

「冒険者ギルド、解散」

「そこまでか?力を見せてもらったのでS級扱いにはするが、それでは不満かのう?」

「最低でも王都ギルドは職員ごと消滅させる。出来るなら、総本部とやらも消滅させる。対応を間違えたこと、痛手と共に後悔するといい。冒険者ギルドの好きな力ずくだ、文句はないよね」

 目線を固定して動かさない。

「申し訳ない。冒険者ギルドとして対応を間違えていたことを謝罪する。どうにか納めて交渉の話をして貰えないだろうか」

 じっちゃんは頭を下げて謝罪の言葉を並べた。最初からそうすればいいのに。

「力には力でいく。次はないよ」

「感謝する。では王都まで話し合いに行こう」

「うん」

 じっちゃんの後ろについて、薬師ギルドを出て外に出て行く。

「王都まで行けそうか?」

「休みは十分です」

「ワシとこの子を頼む。あと輝く太陽に移動の手配を。それはワシらを届けてからでもええ」

「お乗りください。王都から手配をするようにいたします」

 背中に座るところがついている。大人しいのかな?言われるままにイスに座って固定用のベルトをされる。

「ベルトはいいですね。よし、では行きますよ」

 羽ばたかせると宙に浮く。?!不思議な感覚だ。徐々に高度を上げて、街道上を飛んでいく。下が小さく見えて馬車や馬なんかが見える。すごい。身を乗り出すように見ていた。スピードは速くなっていって、街をすぐに通り過ぎ、次の街になる。歩いているときには考えられないような速さだ。風の強さも凄くて大人しくイスに座っていた。自分で飛んだときは風を完全に制御しているのでこんなにブワンとならない。ブゴゴゴと風の音しかしない。


 城門の近くに降ろしてもらって、貴族用の通路のほうに歩いて行く。平民がいいの?

「これからはこっち側を使えるから覚えておくとええ。どこの国に行っても使えるからのう。通してもらえんときはギルドにいうたら、どうにかしてくれるじゃろう。して貰えんかったら別の支部で報告をあげるんじゃぞ」

 何を言ってるんだろうか、このじっちゃん。ギルドカードを取り出して兵士に見せる。

「この子も一緒に通すのでな、よろしく頼む」

 ギルドカードを見せる。

「この子はもしかして、辺境伯様のところでワイバーン討伐の?」

「よく知っておる。S級扱いのマークを入れてないのでな。これから入れるところじゃ。こっちの方を使うときはよろしく頼む」

「はい、お通りください」

 S級って貴族のほうを使えるの?どういうこと?よくわからないまま、王都に入って冒険者ギルドに直行する。

「ジェロイはおるか?エインヘルニャが戻ったと伝えてくれ」

 受付嬢に普通に聞いている。名前を聞いた瞬間に立ち上がって、事務の偉い人っぽい人に話に行く。慌てたように連絡をして受付から出てくる。

「機密事項も含まれるので上でお話を伺いたいとのことです」

「仕方ないのう。ゆくかランス」

「行ってらっしゃい~」

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