王都冒険者ギルドの罪2

「なぜ私だけが借金奴隷なのですか?他に比べて処分が重すぎます」

「王都ギルドの管理は誰がやっておる?原因となったことの全ては王都本部ではなく王都ギルドが原因であろう。そして、原因を解決しようとするわけでもなく、闇に葬り去ろうとして薬師ギルドのギルド長に目撃され交渉材料のひとつにもなった。それにS級を招集して対抗せねばならぬような人材を納めてもらった。最初は何のことかと取り合わなかったが、ここに来てやっとわかった。逆撫でした貴様の処分が重いと?わかった。全財産の没収も含める。それでも全く足りぬがな。この国の冒険者ギルドで購うことになったのじゃぞ?理解も出来ぬのならさっさと連れて行け。時間の無駄じゃ」

 秘書さんが出て行ってから教官達が元ギルド長を拘束。部屋から出て行った。目の前に紙が並ぶ。今回のことについて冒険者ギルド総本部名での和解案が書いてある。白金貨10枚らしい。

「納得したらサインをしてくれ」

「出来ないからしない」

「なんでじゃ」

「僕の受けた依頼を受けた者を全員連れてくるか、敵になるかと条件をつけてから薬師ギルドに行ったはずだから、全員連れてきているんだよね?」

 じっちゃんは本部長を見て、本部長は首を振る。

「どうあっても交渉には乗らないと?」

「冒険者ギルドはやめる。こんな酷い目にしか遭っていないギルドにいる必要なんてない。やめるんだから交渉なんていらないよ」

 部屋を出て行くと、レスタの受付にギルドカードを置く。

「やめる。手続きをして」

「指名依頼があるから脱退は待ってくれないのか?」

「連れてこいって言ったよね?やめるので済ませるのに、いいよ、じゃあここにいる連中から殺していけばいい?冒険者は死んでもいいよ。魔物を相手にするんだから、殺されても文句はない。だけど、F級はそんな能力がないのはわかっているはずだ。受付の人でワイバーンでも取ってきて、僕に証明が出来るのか?失って戻らないなら、えらいヤツから2度と起こらぬように、命の誓いを立てて死ね!」

 あふれる感情に力のコントロールを失い、球状に床や壁がへこむ。

「ワシが死ねば解決かのう」

「何人戻っていない?」

「20人」

「えらいヤツから20人、やれ」

「それは厳しいのう。できぬ、冒険者ギルドとしてF級の保護規定を守っていない職員は厳罰に処すので許して欲しい」

「誓約しろ、冒険者ギルドとして神と女神と天使に誓い、天罰を受けると」

 しばし考え込むように本部用の通信機に話しかける。

「ラント国冒険者ギルドの引き起こした問題に対処するため、F級の保護規定の遵守が出来ないギルド職員には天罰が下る。これを最速でランスのS級取り扱いと共に各国本部ギルドに通達」

「はい」

 短く返事が聞こえた。

「ふー」

 怒りを抑えるように息を吐いて、力を抑える。へこんだ床に降りる。感情で力を暴走させてしまうなんて久しぶりだけどね。冷静になれ。取り返しはつかない。死んだ者は生き返らない。あれらに知らしめられたじゃないか。こんな世界に生きたくないのに。

「これでよいか?」

「何もしていないのに、もうしたつもりなの?」

「少し時間がかかるのでな、最大限要望を取り入れているんじゃ」

「代替案でごまかしているのに、上から目線なの?天罰は一族に呪いがかかるようにしてくれる?」

「それは。すまなかった。本人のみで許して欲しい。無理な要求は許して欲しい」

「じゃあ、金でいいよ。白金貨1万枚ぐらいで」

 肩を落とすじっちゃん。

「では、僕が神や女神、天使に願う。取り返しのつかないF級の死に対する冒険者ギルドへの天罰を。累積しているはずのものを受けてもらう」

 本部長が出てきて土下座をする。

「ランス君。それだけは容赦を。それだけは許してください」

 じっちゃんに目を向ける。

「な、何をしておるんじゃ」

「ギルド長室まで、あそこで話をいたしましょう。ランス君、上で話をしよう。お菓子とお茶を用意する」

「うん、わかった」

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