目をつけられる

 昼ぐらいに出発して、のんびりとすすんでいった。夜が来ていつものように土の家っぽいのを作って寝る。パンと空間倉庫にある食べ物は何だろうか?クマの残りがあったので大麦とスープにして、塩ぐらいしかないけど香草を突っ込んで生臭さを消す。お腹いっぱいになって眠りにつく。

 朝になって土を崩し街道沿いに歩いて行く。たまに馬車とすれ違ったり抜かれていったりする。ゆっくりだとこんな感じなんだ。夕方になって宿場町に到着。宿屋を探して、領主街の宿よりは高かったけど、ご飯も美味しいのでよかった。メニューはパンとスープとサラダと肉炒め。肉の味付けが領主街よりよくなっている。具体的に何とはわからないんだけどね。

 翌朝、王都に向けて出発をする。パンはまだあるから補給はしなくてもいい。そのまま出発だ。街道の邪魔にならないように端の方を通っていく。暇と言われれば暇なんだけど、早く行くにしても街道から離れると方向がわからなくなる。時々、馬車が通り過ぎていくが荷物でいっぱいだったり、人でいっぱいだったり。とりあえず、たくさんの物を運んでいる。ゆっくり進んでいて僕のゆっくりした歩きよりちょっと早いぐらいの馬車もある。早い馬車はすぐにパカパカと音を鳴らしながら過ぎ去っていく。そんな感じでゆっくりと王都に向けて進んでいく。


 何泊かして半分ぐらいまできた。特に何もない。臭いおっさん達に囲まれたけど、森の中に帰ってもらったぐらいしか。それもたいしたことじゃない。高い石壁、入り口に門番。大きめの街にやってきた。ここはなんていう街なんだろうか?入り口の処理が早い。もう順番だ。

「身分証を見せろ」

 冒険者ギルドカードを見せて、リュックの中だけを見せる。

「そっちのバックは何入っているんだ?」

「パンとね、ポーション用のビーカー」

「空けてみろ」

 空けると黒い空間が見える。久しぶりにちゃんと見た。手を突っ込んで見えないように取ったり出したりするようにグリじいから言われているからね。

「詰め所に来い」

「うん」

 門番の人と机のある広めの詰め所に通される。偉そうな人が座っている。

「机の上に並べろ」

 パンを山積みに、ビーカーを出していく。机の上がそこそこいっぱいになった。

「そのバックはどうしたんだ」

「ボルギ子爵様からご褒美でもらったよ」

「はあ?ウソをつくんならもっとましなウソにしろよ。どこで盗んできたんだ?」

「盗んだなら冒険者ギルドに入れないはずだけど。ちゃんと所有者登録もしてもらった僕の物だよ」

 いったん全部出したので、せっせとバックの中に戻している。

「信じられないな。部隊長、取り上げていいですか?」

「いいぞ」

「大人しく渡せば痛くしないぞ?」

 にやついて、剣を抜いた。開いている入り口からささっと出ていく。警備が甘くて助かる。追いかけてくる門番を尻目に全力で逃げていく。重たい甲冑のせいで遅い。

「止まれ!」

「やだよ」

 騎馬隊のような集団がいる。

「どうした?」

「そいつが取り調べの最中に逃げ出したんです」

 降りて道を塞がれる。倒してもいいんだけど、帰りもここを通過するからな。

「それで何を聞いていたんだ?」

「そのガキがマジックバックを持っていまして、どっから盗んだんだと問い詰めていた最中だったんです」

「所有者登録しているっていったよ」

「ならば、所属は商業ギルドか?」

「冒険者ギルドと薬師ギルド」

「ふむ、登録はどっちだ?」

「冒険者ギルド」

「では冒険者ギルドが近い。一緒に行こう。そこのお前も一緒に来い」

 門番は裏返った声でハイと返事をする。騎士団の人達についてこの街の冒険者ギルドへ。大きい。一緒に入っていくと冒険者達が道を空ける。

「受付の君、冒険者のマジックバックの登録照会は出来るか?」

「はい、出来ます」

「少年、ギルドカードを受付嬢に」

 受付嬢は僕のギルドカードを受け取ると確認のためにどこかに消える。

「少し時間がかかるようだ。自己紹介がまだだったな、ホレス伯爵騎士団副隊長のモーガストだ。少年の名前は?」

「サルエン男爵領のランス」

「ん?サルエン男爵領のランス?ランス。ハーバードというボルギ子爵領の騎士団長を知っているか?」

「知ってる。マジックバックはボルギ子爵様からのご褒美でもらったんだから」

「ほう、ならばエルミニド辺境伯領のエイブラム副騎士団長は?」

「名前を聞いたような気がする。辺境伯様はいかついおっちゃんでしょう」

「まあ、間違ってはいない」

 苦笑いをしながら受付に寄りかかっている。

「ハーバードから聞いたんだが、鋼鉄の剣を切って元A級の冒険者に勝ったんだって?」

「その勝負のご褒美がバックなんだ」

「そうか、そうか。エイブラムがワイバーンを単騎討伐したF級の冒険者がランスという同一人物だと聞いたんだが本当か?」

「ワイバーンの肉は美味しかったよ。そういえば女の子と一緒に食べた」

「そうかそうか、門番にはちゃんと言い聞かせておくから、ワイバーンに使ったような魔法はこの街では使うなよ」

「普通は使わないよ」

 受付の人が戻ってきて、マジックバックの所有が確認されたので、行っていいと言われたから宿屋を探して泊まる。翌朝門から出るのはそのまま通された。荷馬車は止められるけど、バックを背負っただけの旅人はそのまま通されているので、旅人と同じ。よし、王都まで頑張ろう。

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