魔法を見せてもらう
だんだんと馬車とすれ違う回数が多くなって、端を歩く人達も増えてきた。この辺りだとそれが当たり前のように思えてくる。こんなに普通の人がたくさんいるのは初めてだ。前たくさんの人と会ったのは盗賊だったしね。
次の街までなんとかついて、明日には王都に着くぞ。頑張ろう。早すぎず、9日ほどの時間がかかることになった。
目が覚めて朝ご飯を食べて王都へと出発だ。やっと修行の足がかりがつかめるかと思うとうれしい。最初に大地の魔力の制御を覚えないといけない。次に氷。魔力による持続をさせる炎と嵐は消えてくれるから見られればいいかぐらい。人も多くて多いのにさらに集まってくる。うわ。行列は長く伸びている。城壁が高くそびえていて、城門も大きい。王都っておっきい。人もいっぱいだ。行列に並んでいるけど、ちょっとずつ進んでいるんだよね。検問が早いのか検査が雑なのかわからないけど、進んでいる分にはいいんだよね。
「次、身分証。よし、危険物は持っていないな?」
「持ってない」
「これに触れ、よし、行っていい」
はや!ギルドカードの提示と危険物を持っていないかの水晶での判別で終了。これでいいのかと思うけど、早いことに文句はない。中に入ってまずは薬師ギルドか冒険者ギルドか、どちらにしよう。先にあった方にしよう。人通りの多い広い道を進んでいく。馬車がすれ違う馬車専用の道路と人が歩いている馬車ぐらいの幅の道が左右にある。木造やレンガ造りの建物が高く建っている。最低2階建て。3階とか5階もある。1階部分は商店になっている。通りだから?裏通りに入るつもりはないので店の前を通り過ぎていく。一番初めのギルドは何かな?ビーカーの薬師ギルド。反対の通りにあるのか。馬車の間をくぐるのは危ない、先にこっちの道のギルドを訪ねてみてよう。
お店は後にしないと珍しそうな物がたくさん並んでいる。表通りを歩いていると人の出入りが多い場所があった。看板を見ると冒険者ギルドだ。中途半端な時間に来たので人はまばらだ。まずなにより広い。冒険者ギルドって広い。王都の冒険者ギルドはさらに広かった。受付もたくさんあって、級ごとのクエストボード。売店も大きくて広い。商品がたくさんある。解体場の入り口も広くて。でも酒場がないのはどうしてだ?うちの町のギルドだと朝から飲んでいる人を見かけるのにな。F級のクエストボードにもちゃんと依頼がある。1番端っこの人がいない受付に行ってみる。その人は隻腕で顔に傷があったりして、冒険者上がりの職員だろう。男の人だ、他の受付は女の人なのにね。ギルドカードを受付に置く。この受付、ちょっとだけ低い。
「本部長に用事があってきたんだけど。ここで言えばいいの?」
「本部長に?なんでF級が。うーん。ちょっと待ってろ、聞いてきてやる」
疑問はあるようだが聞いてくれるそうだ。奥の偉いっぽい人にギルドカードと共に聞きにいっている。大きい机に座っているから偉いのだろうと思っている。ちょっと怒鳴られているがその後、なぜか紙を渡されて戻ってきたと思ったら途中ギルドカードが違う人に渡されて、それから戻ってくる。
「お待たせ、ランス君。まずはギルドカードを返すよ。カードのこのマークは高位魔獣討伐の証しでギルド認定ってこと。ワイバーンっぽいだろう?」
「羽と頭がそれっぽく見える」
カードの上部にワイバーンのマークが入った。Fと名前ぐらいしか書かれていなかったのに。
「それと君に指名依頼が辺境伯様から入っている。文字は読めるかい?」
「読めるよ。行くのが面倒だから拒否で」
依頼の紙も見ないで拒否する。王都から自分の領に戻ってさらに行かないといけないんだ。そんなに面倒なことはない。シルヴリンにわざわざ会いに行く必要などない。それなら布団を買ったりポーションを作っていた方がいい。
「そうか、本部長にそのまま言っておくか」
そう言うと依頼の紙をもったまま奥の偉いっぽいところにまた行った。何やら話していてわからないけど、待っている。
「なんでF級のおもりのクエストを受けたんだよ」
「結構いい値段だったんだ。たまには単独で動くぐらいいいだろう?」
「休みだからいいが、冒険に出られないとかになるなよ」
「そのぐらいはわかっているさ」
近くで冒険者が話しているのが聞こえる。それよりも受付の人が帰ってこないんだけど。何やら話し込んでいる。戻ってくると受付が閉められる。別の受付に並ばないといけないのかな?受付の中からさっきの片腕の人が出てくる。依頼の紙を持っている。
「ホルス、待たせた」
黒っぽいローブを着た金髪の長髪で杖を持っている。男の人だ。隣の人は剣士かな?斧を持っているので戦士系だと思う。
「この子がランス君だ。上級魔法を見せる依頼、報酬は依頼書通り。何か依頼をするに当たってあるか?」
「F級に上級魔法を見せる必要が?祝福後の魔法系統の職なら発憤とか見本とかわかりますが」
「理由は知らない。ランス君、どうして必要なんだ?」
ローブの男の人を見上げる。不信といった目を向けられる。
「詠唱による魔力制御の解析。クリスタルが残るから、詠唱を見たらその制御がわかるでしょう?どういう魔力制御で消えているのか、何回か簡単なのでいいんだ。生活魔法は全ての魔力制御が自分で出来ないといけない。だから詠唱の上級魔法を見ないといけない。出来れば氷も見せてくれるとありがたい。クリスタルと氷は消える制御が入っているはずだ」
「は?詠唱は詠唱だろう?」
「わからない人にわかってもらうつもりはないよ。依頼を受けて、僕がふっかけられたケンカとかを腕の切断程度でいなす約束だからね。本部長たっての頼みだからこれで手を打っているんだ」
何を言っているんだと顔に出ているんだけど。
「F級なのに本部長に止められるほどの実力が?」
「エルミニド辺境伯様保証のワイバーン単騎討伐だ。生活魔法のことは知らないが、クビを一撃で落としたんだと」
「うそでしょう?F級がワイバーン単騎討伐とか、冗談にしては酷い。からかうのもいい加減にして欲しいですね」
説明するのが面倒だな。
「これでいい?」
空中に浮かぶ青い炎と氷の塊。小さいながら僕の周りを飛ばす。
「どうやったらそんなことが」
「生活魔法だけど?魔法が使えることはわかったんだから見せてよ」
「あ、ああ」
見せた方が早かった。言ってもわからない人が多いな。F級、祝福前ってスキルが使えないから疑うのは当たり前なのか。自分もいい加減に認めてしまおう。祝福前はたいしたことない。
「ホルス、西の草原で見せてやってくれ。あそこなら大丈夫だろう」
「わかった」
「俺もついて行っていいか?」
「2人がいいなら問題はないぞ」
邪魔をしないのならいいってことになる。僕はホルスって人の後ろについて、王都の中を移動する。どこに行っているのかは全然わからないんだけどね。ついて行くと門があって、ギルドカードを見せると素通りできる。道と広い草原が広がっていて、動物も魔物もいるようには見えない。道に人が通っているぐらいで危険な様子はない。少し歩いて行く。もう1人はホルスさんのちょっと後ろに立っている。
「ここでいいか、大地魔法でいいのか?」
「うん、クリスタル系なら何でも」
「ならやるぞ。恵みたる大地の力を借りて、その力を顕現し敵を打ち倒さん、クリスタルバレット」
形成形成、魔力変換、増幅、射出速度方向、ラストが魔力放出と時限解体用の魔力。ふむふむ。時限解体用の流れが放出と一緒だからわかりづらい。仕方ない、自分の魔力を出してホルスって人にまとわせる。
「何かしているのか?」
「最後の部分がわかりづらいから、僕の魔力で感知しやすくするために放出している」
「それで?」
「もう1度撃って」
わかったともう1度詠唱を始める。流れは一緒だ。最後の部分が崩壊?放出した瞬間には、崩壊をさせている?自分でもクリスタルを作るのにさっき見た崩壊を組み合わせてみる。わかりやすいように大岩ぐらいのをどんと落とす。
「うお、びっくりした。いきなり出てきた。詠唱しないのは初めて見た」
「生活魔法らしいからな。生活魔法は詠唱しないだろう?」
「まあ確かに、しかし上級魔法が使えるなんてな」
「俺のほうがびっくりしている。どれほど凄いことか」
会話に入らずに自分の検証を優先。少し待ってみる。ヒビが入ってそれから砕けていった。
「なるほど、じゃあ後付けも出来るのかな?」
さっきと同じぐらいのクリスタルを5つ作り出して、1つ目は最初に作った崩壊を入れて作った物、後付けでつくのかと2つ目以降には崩壊を送り込む。すんなりと入っていった。しばらく待って、ヒビが入って、割れていき小さく砕けて消えていく。氷も一緒か?崩壊を入れて大岩ぐらいのを作ってみるとクリスタルと同じように割れて消えた。
「出来た~ホルスさん、ありがとう」
「祝福前でも上級魔法が使えるなんてな」
「上級魔法じゃないよ。生活魔法だよ。上級の属性が扱えるようになっただけ。炎や風は持続時間が魔力切れと同じだから射程は短いから持続の制御が入っているはずなんだけどね」
「生活魔法も極めればここまでやれるのか、凄いな」
消えた後を見ながらそうつぶやいている。
「あとは炎が使えるがどうする?」
「見せて見せて」
出来たので気分が上がっている。もっと知りたい。使えるように練習したい。
「数多の物を燃やす力、その力を借りて敵を打ち倒さん、フレイムボール」
青白い炎の玉が進んでいって消える。持続時間がやっぱり長い。放出されてから魔力の供給はなくなっているのに消えずに進んでいた。生活魔法の場合は魔力が届く範囲、魔力量によるけど、遠くに飛ばせるなら使い勝手は凄くよくなる。魔力の制御に関しては追加の魔力をつける感じ?
「もう1回」
さっきと同じで最後の部分が放出と違うことが同時に起こっていた。解析を難しくする。うんと?何ていえばいいのか。もう1つ魔力を付け足すだけ?炎に変換していない魔力をくっつけて飛ばす。つけていないのも飛ばす。つけていないのは飛ぶというより魔力の接続が切れた瞬間に消えた。変換していない魔力をつけたものは追加した魔力を消費しながら飛んでいく。
「飛んだ。飛んだよ。おお」
風も一緒なのかもと、魔力をくっつけて飛ばすと結構遠くまで飛んでいった。これで複数のワイバーンに遠距離攻撃が出来るようになった。ふふふ。今度は先制攻撃してやる。
「上級魔法はもう使えないんだが、もういいのか?」
「うん、ありがとう。これで上位属性も使える。あとは自分で練習するだけ。四属性と使い方が違うんだと思って。最初はやり方が一緒だと思ってやっていたけど全然出来なかったからね。やっぱりやってるのを見るのが1番だった」
「詠唱だから、魔力の消費量が大きいぐらいの違いしかわからないが違うのか?」
「普通の四属性は風と火は同じ物を重ねる。水と土は魔力を抜くっていうか、消すというかそういう感じ。上位は魔力を追加と崩壊をつけるって感じだった。なかなか制御が難しいね。使い方はわかったけど、練習して、どんな状況でも使えるようにしないと。発動に意識を持っていかれる」
「クエストは完了でいいか?1度ギルドに戻って報告をしよう」
わかったと返事をして後ろをついて行く。
「待て待て、普通に4上位属性を使っていたぞ」
置いていかれると迷子になってしまうので歩いて後ろをついて行く。
「生活魔法、どのくらいになればあんなことが出来るのか、想像もつかない。だけど、ランス君が自分で上げたスキルだ。生活魔法は祝福前に取れる広く知られたスキルの1つ。よくぞここまで上げたと賞賛するしかない。レット、我々は生活魔法にそこまでの努力をしようとしない。高スキルレベルだろう、ならばそれまでの研鑽を褒めるべきだ」
「俺の斧術はレベル4だぞ。それ以上ってことはあるのか?」
「あるだろう。レベルは聞くべきではない。それほど親しくないからな」
高い城壁と大きな城門、門番さん達はテキパキとさばいている。ギルドカードを見せて水晶に触って中に入る。高い建物の並んだ、人もたくさん行き交い馬車も行き交う。どこから集まっているのかわからないけど人がたくさんいる。村や領主街では見たことがない、ドワーフかな?筋肉もりもりで背があまり高くない。尻尾や耳が動物の獣人。エルフって人は見ないな。耳の長いのが特徴らしいんだけど。いろんな人がいるんだな。人間以外の人は本でしか見たことがないから目移りしてしまう。建物からいろんな物を置いてあるのが見える。あとでレスタに聞いて、布団とか調理道具をそろえよう。生活に必要な物をそろえる必要がある。そのために頑張ってきたんだ。街の中を歩きながらキョロキョロと見回す。
「王都は珍しいか?」
「見たことない物も多い。それにこんなに人が多いところは初めて。武装していない、たくさんの人をこんなに見られるなんて王都は凄い」
「武装って。そんな軍隊みたいなのを見るのか?よくわからないな」
「討伐の時に辺境伯様の討伐隊をみたのが1番多い人達なんだ。結界とか貧弱だったけど、あれで大丈夫なのかなと、今考えるとそう思う」
ははって、乾いたような笑いを浮かべている。
「エルミニド辺境伯様の軍隊は国家最強の近衛兵団の次に強いと言われているんだけどな。それでも貧弱だと思うなら、ランスはS級にでもなったほうがいい」
「そうなのかな?薬草とかの採集やポーションを作っている方が好きなんだけどね。あとは本を読んだりするのも好き」
「文字が読めるのか。貴族の坊ちゃんだったりするのか?」
「貴族だったら自分で本部長と上級魔法を見せてって交渉するより、使える人を呼んで貰えるんじゃないのかと思うよ。食い扶持にも困るような状態だったし、まだ欲しいものが揃ってない。布団とか、鍋とか、服もこれしかない」
「そうなのか。F級、いやだけどワイバーン討伐の報奨があるんじゃないのか?それで買えるだろう。足りないのなら依頼でもこなすしかないな」
そうだねと連れだって歩いて行く。ギルドに入って、レスタの受付に行く。
「終わりました」
「完了と報酬はどうする?」
「カードに入れておいてください」
「わかった」
依頼書にハンコを押して完了。ホレス達は依頼が終わったのでどこかに行ってしまう。終わったのを確認し背を向ける。クエストをするのもいいかな。F級のクエストボードを眺める。
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