ギルド長対話

「サルエン男爵領冒険者ギルド長ヘルセ殿、この前は情報ありがとうございます。エルミニド辺境伯領冒険者ギルド長デルバートです」

「目撃情報を報告したまでです。ええと、このような小さい支部にどのようなご用件でしょうか?」

「こちらの辺境伯様よりサルエン男爵領所属のF級、ランスについての問い合わせです。単刀直入に伺います。彼はワイバーンを倒せますか?辺境伯様と討伐隊の方々が確認をされているので間違いはないのですが、そちらでその戦力を確認されているのかと。もしくは語っただけで全くの別人なのかも考慮しております」

「ワイバーン?この前の?」

「はい」

「ランス君はワイバーンの目撃情報をギルドまで報告に来た冒険者で、戦力は測りかねます。こちらの元ギルド長ソルを倒したりはしましたが、ワイバーンとなると答えかねます。生活魔法で上級魔法を操れます。どの程度かは見たことがありませんので答えようがありません」

 デルバートは事務員出身のギルド長で身なりをきちんと整えている。貴族の対応に十分な能力と支部運営能力を持っている。

「辺境伯様は報酬の授与と本人との対談を望まれている。あとシルヴリン嬢との一騎打ちの非礼を詫びたいと。討伐褒賞として最低でも大金貨50枚、本部に確認を取らなければならないが、F級にして単独亜竜討伐のカード記載。従軍は本人の意思と。ただし、単独での亜竜討伐は最低でもS級クラスの偉業ですので、成人前なのが困るところであるのだが、所属支部としてはどうお考えですか?辺境伯様直接の指名依頼として当ギルドとしては拒否する理由がなく、本人は受諾してくれるだろうか?その場で手持ちの大金貨3枚を持って討伐のワイバーンを引き渡されてしまったので、価値がわかっていない子どもにちゃんと教えなければとおっしゃっておられて、冒険者ギルドに依頼を出された次第なのです」

「一般常識が不足しているのは感じております。貴族の方々への対応につきては普通は待つとか我慢する場所であっさりと立ち去ったりします。契約外のことはしない主義のようです。ですので、契約内容を数日滞在で用事が終了次第完了とするとよいとかと。契約はきちんと守りますので。追加の場合は都度、再依頼を行うようにお願いします。あと、魔法や武術はS級の冒険者を相手にするつもりでいた方がいいかと。ワイバーンの討伐が出来るのなら絡んだ冒険者ごと街を飛ばすなどは十分可能でしょう。本部長が絡んだ冒険者は、軽くあしらうように取り計らってくれていますので大丈夫だとは思いますが、注意はしておいてください。ここの元ギルド長も冒険者が絡んだことの謝罪をしないことで解任にまでなり、本部長がこられました。本部長とは知り合いでしたが、私と本部長はそれについて誓約をしておりますので、これ以上は聞かれても答えられません」

 少し会話の時間が空く。

「助言に感謝いたします。指名依頼はそちらに発行すればよいですか?」

「王都に向かう予定ですので、王都のギルドにて受諾してもらう方が最短かと思います。この街から用事が済み次第、すぐに行くはずです。その場合、指名依頼を後回しにするでしょう」

「指名依頼を後回しに?」

「ええ、ランス君は受けないと思えば受けません。ソルとの仲違いも含め領主様の指名依頼を断り続けて、騎士達に強制連行されました。前科はあります」

「ならば本部長に話を通して、指名依頼を受けるようにお願いします。助言に感謝します。これで失礼します。辺境伯様に依頼受諾が遅れる旨を伝えなければ」

 水晶は何も映さずに向こう側をゆがんで見せていた。なんてことをとヘルセは頭を抱える。

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