氷は人気
その間をすり抜けて調合室に入っていく。ライトで明かりをつけて、カギの確認。よし、マジックバックから薬草を全部出して、使えるかどうかを鑑定していく。この作業は見られると困るのでカギをして誰もいないことを確認する。窓も閉まっているな。
「よし、頑張るぞ」
火だと集中しているとき燃え移ったりすると困るから使わない。ライト自体は使える人と使えない人がいるっぽいことを聞いたことがある。選別するわけじゃなかったら暖炉の火で十分だし、夜目があるので普段は使わない。本があって夜に読むなら使うかも。
「お腹いっぱいだ。まだ頑張れるぞ」
種類と品質ごとに分けていく。この後は抽出のでの濃度調整。まずはこの山盛りに取ってきた薬草を分けて行こう。品質で高中低の3分割にしておく。薬草の山が出来ていく。仕分けを一所懸命行っていく。鑑定を使いながらささっと分けて行く作業を繰り返す。繰り返す。繰り返す。
むにゃ、う?調合室にいる。分けかけの薬草が目の前にある。続きを進める。寝ていたのか。ちょっと眠いが手を動かす。分けてしまわないと。
終わったので、調合室から出る。日が高くてびっくり。時間のかかりすぎだ。パンと焼き鳥を帰りながら食べて、抽出にかかる。煮出しか水出しか。急ぐので煮出しになる。薬研は今回使わない。鍋はどうしようか?大きめのビーカーを作って石の上に載せ、それで煮込んでいく。お湯からどばどばっと入れて、あ、濾すための布がない。火にかけてままを魔法で維持しながら、表にいく。
「濾すための布とか売ってる?」
「あるわよ」
「5枚ちょうだい」
冒険者ギルドカードで精算して戻る。いい具合にぐつぐつしている。鑑定しながら最適時間で濾し始める。暑いんだよね。解体用革手袋で若干の熱さはしのげる。王都に行ったらちゃんとしたのを買おう。解体用とは別にしておかないとね。まだ解体で使ってないから使って、濾したのを煮て濃縮する。スキルがあるとすぐに出来るんだけど、ないから地道に水分飛ばして濃縮。ちょっと品質が下がってしまうのは仕方ない。スキルじゃないから、たぶん、いる成分が水と一緒に飛んでいってしまうのかなと思う。いつもの濃度にあわせて、配合する前に冷やす。自然に冷やしていいだろう。外に出ると夜だった。ああ、また冒険者ギルドか。
見つからないようにそっとカウンター席について、昨日の人がいたので注文をする。
「パンとスープと焼いた肉でいいんだな?」
「うん」
「ジョッキはいるのか?」
「貸してくれるのなら欲しい」
精算が終わるとすぐにパンとスープとジョッキが出てくる。パンとスープで交互に食べて飲んで、焼いた肉を待つ。後ろが騒がしいが気にしない。僕は食事に来ているだけだ。この後ポーションの原料のチェックをしないといけない。やることがあるんだ。
「ランス君、今日ははやいのね」
自然にヘルセさんが隣に座る。
「作業の途中だからね。さっさと食べて、抽出の調整が出来ているかチェックしないといけないの」
「いつからやってるの?」
「昨日の夜帰ってから、薬草を分けてる最中に寝ていたけど、その後は抽出、濃度の調整、今は自然に冷やしているところで食べたら一眠りして、ローポーションを作って瓶詰めして納品したら王都へ出発する予定。本当なら王都から帰ってゆっくり作りたかったけどね」
「忙しいのね」
注文を受けたごつい兄ちゃんが焼いた肉を目の前に出す。おいしそう。湯気が立ってて作りたて。
「うん、忙しい。食べたらすぐに冷やし待ちついでにその間に寝る。今日はうたた寝で明日の出発までに作り上げる」
「そうなんだ、がんばってね」
うんといいながら肉に手をつける。塩とうっすら胡椒の味がする。こしょうって高いんじゃなかったかな?肉汁あふれてワイバーンには負けるけど、美味しいよ。動物もこのくらいのうま味を出せるといいんだけど、そういえば何日かおくといいって、ティワズがいってたな。グリじいはその辺興味がなかったようで、熟成されるって教えてもらった。こんど熟成とやらに挑戦してみよう。
「ギルド長、お願いしますよ」
「冷たいエールが忘れられません」
「ギルド長」
何やら冒険者達がヘルセさんに小声で言っている。隣だから聞こえるんだけど。いかつい兄ちゃんも厨房に入ったり出たりしている。忙しそう。ただ、手ぶらなんだけどね。エッジさんがトレイを持ってくる。
「ランス、また悪いんだが氷を出してくれないか?」
「どこに出す?」
「いいのか?」
「別にたいした手間じゃない。水を出すのとそんなに変わらない」
それならと昨日よりも大きなトレイをカウンターに置いて、このくらいでという高さに氷を作り出す。
「水と氷がそんなに変わらないなんて、魔法使いの自信がなくなるわ」
「うーん、やっぱり大地と一緒で消すための魔力制御がいるのか。それがわかっただけ氷を出した意味はあるな」
「何言ってるの?ランス君」
「生活魔法って、詠唱がないよね」
「そうね」
「だから、詠唱だと勝手に消えるよね。でも生活魔法では消えない。つまり、詠唱に組み込まれている、魔法の魔力制御を自分で作り出さないといけないの。基本の4属性では出来るから消すのも作り出すのも自由なんだけど、それをやっても上位の属性は消えないから制御が違うのかなって。だから、魔法を見せてもらうことをお願いしたんだ」
「自分で魔力制御をするの?」
「そう、詠唱でしていることを自分でするのが生活魔法。魔法使いなら出来ることだよ。詠唱は簡単で生活魔法の難しさに比べられない。誰でも使えるから、制御できるか出来ないかの違いだと思うよ」
「氷を出したりとかは詠唱では出来ないってこと?」
「氷魔法があるからだせるでしょう?そのままにしておくって出来ないと思うよ。攻撃スキルでしょう?ある程度の時間で消えるように詠唱で制御されてるはずだからね」
「そうだったの?」
「詠唱しながらそういう魔力を感じればわかるよ」
唖然としてエールのジョッキを持つとグビグビと飲み始めた。
「いってることが理解できない」
「それはあの人に教えてもらったんだから」
「宮廷魔術師ぐらいしか理解できないんじゃ」
「宮廷魔術師って、貴族が道楽にお金出してる能なしの職業ってあの人はいってたけど、違うの?」
「やめて、宮廷魔術師に絶対それをいったらダメよ。絶対よ」
「あ、え、うん」
なんかよくわからないけど、いわない方がいいんなら黙っていよう。
分厚い肉を切りながら食べていく。作った氷はごっつい兄ちゃんがエールに削り出して入れていた。飲んだくれの冒険者達が大人しく並んでいる。ちょっかい出してこないならいいんだ。
食べるのを頑張って、それから調合室に戻って冷やしているのを確認する。問題ない。まだ熱いからこのまま、冷やそう。お腹いっぱいで眠たい。寝る場所がないから座って寝る。
ふっと目を覚ますと鑑定をしながら配合をしていく。癒し草液に他の薬草の抽出液を加えていく。向こうに行ったら大きな鍋も欲しい。王都の薬師ギルドには置いてあるかも。買ったのと作ったビーカーに均等に癒し草液を配分してと。自分で作った方が見やすいな。まあいいか。それより作ってしまう。調合を終わらせて外に出ると日が高い。まだ昼にはなっていないな。表に回って瓶を用意してといって、デールさんが調合室の前に瓶を2箱分置いてくる。あるのを出してとお願いして3箱追加で出てきた。調合室に運んで瓶に詰めていく作業をしていく。
全部で4箱と半分。これだけ作れば帰ってくるまでの分はあるだろう。
「デールさん、出来たから確認をお願いします」
返事を聞いてから片付けを始める。薬研とか古いビーカーとかは置いておく。ビーカーは取られてもいい。作ったビーカーはマジックバックに入れて、調子に乗って作ったので、半分ぐらいを占領された。食料を入れないといけないのに。消し方がわかれば、いるときに作れるのに。
「確認した。代金はちょっと待ってくれ、鑑定結果がちょっとな。本部と話して決めるから少しかかる。これからどうするんだ?」
「王都の冒険者ギルドに用事があるから今日出発する。食糧を確保したら行くよ」
「ゆっくりしてからでもいいんじゃないか?この量を3日で作るって、大変だったろう?」
「こっちからお願いして用意してもらってるから、早く行くんだ。用意が出来たからおいでって」
「それじゃあ、価格が決まったらギルドカードに入れておくのでいいか?」
「うん」
「王都に行くんなら、薬師ギルドの本部にも寄ってくれ。自分で作ったローポーションもちょっと持っていくことと、ランスのビーカーが欲しい人がいるだろうからな。薬師ギルドで顔を覚えてもらえ。重点育成支援なんだ。困ったことがあったら相談するんだぞ。対応出来ないなら、無理なら無理ってちゃんと答えてくれる。助言ぐらいはもらえるさ」
わかったといってからポーション瓶をもらって、パン屋でリュックに入るぐらいとマジックバックに入るだけ入れて、串焼きはそんなに買えないから歩いて食べるぐらい買った。薬師ギルドと冒険者ギルドの受付のお姉さんに王都に行ってくるといってから串焼きを食べながら外に出て行く。街道沿いに行けば王都に着くらしい。途中に宿場町があるからちょこちょこ泊まりながら行こう。泊まれないなら野宿で。
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